見出し画像

ペロシ・ショック、台湾訪問、本当の目的は?:日本人が知るべき赤いアメリカ番外編❸

あのタイミングでの訪問、”本当の理由”を探ってみた

前回のコラムで、”ナンシー・ペロシ下院議長は、対中強硬路線ではなく、むしろ共産主義者寄り”という話を紹介しました。ウソを付くには、理由があり、今回の台湾訪問の本当の目的が気になります。このコラムでは、アメリカの保守派で語られているナンシー・ペロシの台湾訪問の本当の理由をシェアさせていただき、その後、そこから個人的に気になることを深掘りしていきます。

ちなみに、前提として・・・

  • バイデン政権としては、「軍部がいかない方が良いとしている」「ペロシは台湾訪問する権利がある」等々、ゴニョゴニョと消極的な態度

  • トランプ大統領は「彼女が関わると必ずおかしなことになる」的な発言で、(熱心に情報収集している)保守派も騙されてはいない

イメージ回復に必死の、ナンシー・ペロシ

飲酒運転で衝突事故の82歳夫と、夫婦共犯インサイダー疑惑からのイメージ回復

この章でシェアさせていただきたいことは、タイトルが全て・・・なのですが、少しずつ見ていきます。

ペロシの夫は今年5月に飲酒運転による事故を起こしています。御年82歳。日本では免許返還が推奨されるのが70歳くらいからでしたでしょうか。加齢により、認知力や運動能力が低下するのは周知の事実です。そういった年齢層にいる人が、さらに”飲酒”というリスクを上げる運転するというのは・・・。

[23日 ロイター] - ペロシ米下院議長の夫、ポール被告(82)がカリフォルニア州ナパ郡で飲酒運転で逮捕された問題で、郡裁判所は23日、禁錮5日の実刑判決を言い渡し、罰金および賠償金として6800ドルの支払いを命じた。被告は罪を認めていた。
判決によると、逮捕後の勾留期間4日分を踏まえ、さらなる収監は免除され、残る1日の代わりに8時間の社会奉仕活動を課された。
ベンチャーキャピタル幹部のポール被告は5月にナパ郡で車を運転中、高速道路を横断しようとして別の車と衝突。その後、飲酒運転の疑いで逮捕された。

https://jp.reuters.com/article/usa-congress-pelosi-husband-idJPKBN2PU01H

事故が今年5月で、判決がでたのが8月でした。
この記事はロイターのものですので、罪が軽く見えるように書かれている感じがしますが、実際には、飲酒運転を止めるためのプログラムや、飲酒していないことが確認できないとエンジンがつかない装置の設置も命じられていたと思います。

ポールは政治家ではありませんが、この事故に関する報道は、ペロシにとっても、現政権にとっても、かなりマイナスのダメージがあるようでした。というのも・・・。史上最多の投票数で当選したていのバイデン政権ですが、支持率の低さも歴史に残る勢いのようです。選挙中はメディアの力を使ってなんとか隠してきたジョー・バイデンの”年齢的な健康問題”については、リーダーシップどころか正常な判断さえも・・・なところが隠しきれなくなっています。

つい最近も、ホワイトハウス主催の会議で、今年8月に亡くなったジャッキー・ワロルスキー下院議員に対して、「ジャッキー、来ているか、どこだ?出席すると思っていたのだが」と壇上から呼びかけたことが話題になりました。議員死去の一報を受けたバイデンは声明を発表していたとのことで・・・。ゾンビが投票する国ですので(亡くなっている人が投票したことになっていたケースがたくさんあった)、亡くなった後にも重要な会議には、出席される議員がいるのかもしれませんが・・・。

ホワイトハウスは老人ホームなのか?という批判の声も。そのような中ですので、この事故は確実に現政権の”老害”的な印象を強めたといえます。

さらに、夫・ポールと、妻・ナンシーには、インサイダー疑惑がかかっています。これはどちらかといえば、今まで問題視されなかった方が不思議な話。議長であるナンシー・ペロシには、米国議会でどのような予算を決定するのか?という、より新鮮でより適切な情報が大量に入ってきます。そして、その夫は凄腕の投資家。

あれ?これは・・・?

2022年7月15日付け、デイリーセラーによると、これからまさに補助金がおり、税制面でも優遇を受けようとする半導体企業株の1つを、その法案を可決しようとする議会の議長(ナンシー)の夫・ポールが投票直前に大量購入していたことが明らかになったようです。

ナンシー・ペロシ下院議長の夫・ポール・ペロシは、半導体製造を促進するために数10億ドルの補助金を渡すという法案の来週行われる投票に先立ち、半導体企業株を最高で500万ドル購入していたことが、財務公開報告書で明らかになった。
木曜日に発表されたナンシー・ペロシの情報公開報告書によると、ポール・ペロシは6月17日に世界最大の半導体企業の一つであるNvidiaの株を2万株購入したとのことだ。さて、ロイターが木曜日の報道によると、上院議員は早ければ火曜日に招集され、国内の半導体製造を後押しするために520億ドルを割り当て、生産にかかる税控除を与える超党派の競争法案を採決する予定である。

https://dailycaller.com/2022/07/15/pelosis-husband-massive-amount-in-chips-stock-before-expected-senate-vote-subsidies/
の抄訳

2005年から2015年の間にダラス連邦準備銀行の議長を務めたリチャード・フィッシャーも「ポール・ペロシとナンシー・ペロシらが内部情報を利用したように見えるのは残念だ。何か手を打つ必要がある」とコメントしています。

中間選挙での民主党劣勢予測が報じられている中、ペロシにとって、このインサイダー疑惑は、夫の飲酒運転事故よりもさらにイメージ・ダウンに繋がります。彼女の台湾訪問はそのような中で行われたのです。

台湾支持は、保守派が好む政策。それに、中国の人権問題への対抗策については、党を超えた支持を得られやすいもので、新疆ウイグル自治区産の物品輸入を全面禁止する「ウイグル強制労働防止法案」が、米議会の上下両院を超党派の支持で通過したことは記憶に新しい出来事です。

選挙のためのイメージ回復・・・というのは、彼女の台湾訪問の理由の1つではないかと考えられています。他の理由もあるかもしれませんが、イメージ回復というのは必ず目的の1つでしょう。

台湾メーカーとの対談で、さらなる私服肥やし!?

今回の台湾訪訪問では、台湾の半導体大手TSMC(台湾積体電路製造)の劉德音会長とも面談し、ペロシのインサイダー疑惑の発端となった半導体企業支援策の”CHIPSおよび科学法案”についても話し合ったとされています。そのため、ペロシの台湾訪問は、ファミリーが保有する半導体株をさらに上昇させ、私服を肥やす目的だったという声も聞こえます。

TSMCは現在、アリゾナ州で120億ドルを投資した工場建設を進めており(2024年操業予定)、今回の法案による資金援助に期待していると言われています。台湾企業であるTSMCは、米国での資金が得られるかどうかによって、米国競合のみが有利になるか、自社もその波に乗れるか、今後の勢力図が変わってくる可能性もある大きな問題です。

半導体業界のことはよくわからないため、ちょっと調べてみたところ、Nvidiaは、TSMCの主要顧客3社のうちの1社であるようです(他の2社はAppleとAMD)。

ただ、この情報のみですと、ペロシ夫が投資したというNvidia株との関連がいまいち明確ではありません。そのためこの説は「さすがにそこまではしないだろう」という話があります。この件については、次の章でもう少し深掘りしたいと思います。

ペロシと半導体企業周りの話を深堀り

夫ペロシ・株式購入したNvidiaと、妻ペロシ・会談したTSMCと

なぜ国内半導体企業への投資が必要なのか?

先日、可決された半導体企業への事業拡大に関する法案、CHIPS and Science Actは、米国の半導体インフラに500億ドル以上の資金を投入し、そのうち400億ドルは特に製造できるキャパシティを高めるためのものとされています。これにより、米国企業のシェアは、現在の2%未満から、今後10年間で10%にまで引き上げることができるということです。

そもそもこの法案が必要となった背景には、世界的な半導体不足があります。アメリカの商務省が昨年9月から米国半導体業界への聞き取り調査を行った結果(2022年1月25日)によると、米国がより多くの半導体を生産する必要があることを明確に示しているということでした。

・バイヤーが強調するチップの需要中央値は、2019年より2021年の方が17%も高く、バイヤーはそれに見合った供給量の増加を見ていない。これは大きな需給のミスマッチと言える。
・バイヤーが取り上げた半導体製品の在庫の中央値は、2019年の40日から2021年には5日未満に減少。これらの在庫は、主要産業ではさらに少なくなっている。
・RFIにより、需給のミスマッチが最も深刻な特定のノードをピンポイントで特定することができた。今後はこれらのノードにおけるボトルネックを解決するために産業界との協力に力を注ぐ。
・全体的なボトルネックは、ウエハーの生産能力であり、長期的な解決策が必要。
・今後数週間のうちに、ノードごとの問題解決に向け、産業界と協力していく。また、これらのノードで価格が異常に高いという主張についても調査する予定。

RFIの結果は、米国がより多くの半導体を生産する必要があることを明確に示している。議会は、長期的な供給課題を解決するために、米国イノベーション・アンド・コンペティション法案 のような国内半導体生産のための資金調達を通過させなければならない。

https://www.commerce.gov/news/blog/2022/01/results-semiconductor-supply-chain-request-information

特に、アメリカでは、中国が支配する半導体市場が将来の軍事作戦に与える国家安全保障上の脅威が懸念されてきました。そのため、チャック・シューマー上院議員らは、米国内にファウンダリを増設し、中国や台湾に全面的に依存しないよう支援するCHIPS法の成立を目指したのでした。

Nvidiaは紅組なのか?と思わせるような言動

ポール・ペロシがCHIPS法成立しそうなタイミングで株投資を行ったNvidiaもこの法案による恩恵を受ける企業の1つでした。しかし、Nvidiaの企業としての想いは少し違うようです。
というのも、Nvidiaのプレスリリースにも気になるものがありました。今年5月に発表されたもので、台湾での市場拡大を着々と進めていると思われるものです。同社黄CEOが台湾出身なので、仕方のないことかもしれませんが・・・。ただ、台湾企業も、共産党の影響を受けていないか?といえば、かなり微妙なところで・・・。

SANTA CLARA, Calif., May 23, 2022 (GLOBE NEWSWIRE) -- COMPUTEX Nvidiaは本日、台湾の大手コンピューターメーカーが、デジタルツイン、AI、高性能コンピューター、クラウドグラフィックス、ゲームにわたる幅広いワークロード向けにNVIDIA Grace™ CPUスーパーチップとGrace Hopperスーパーチップを搭載したシステムの第1波をリリースする予定であることを発表した。
ASUS、Foxconn Industrial Internet、GIGABYTE、QCT、Supermicro、Wiwynnから数10のサーバーモデルが2023年前半から登場することになる。

https://www.tweaktown.com/news/86400/nvidia-grace-cpu-powered-servers-are-coming-from-taiwan-tech-giants/index.html

もちろん、民間企業に対して、アメリカ国内を優先的に販売してほしいという縛りをどれくらいできるのか?という問題はあると思いますが・・・。
しかし、最近の、NvidiaのCEOジェンスン・ファン(黄仁勲)の発言を見ると、本当にこの投資は意味があるものか?と思えてしまいます。というのも、今月1日、米国政府により一部同社製品の中国への輸出制限が出されましたが、黄CEOは「我が社のデータセンター用チップの大きな市場が中国にあると引き続き見ている」と発言しているからです(9月26日付けTechWire Asis)。

はっきり言ってしまえば、Nvidiaは、アメリカ人の税金による投資で、自社のビジネスを有利に展開していくわけですが、その恩恵は、米国のメーカーのライバルでもあり、安全保障上の問題で対立している”てい”の中国にあるメーカーにも分配していくことに熱心なわけです。

ソフトバンク撃沈!?NavidiaによるArm買収の失敗

実はこのNvidia、以前にも、紅組との接点がありました。ソフトバンクが売り出した子会社のArmの売却先として名前が上がり、アメリカや英国、EU各国からの猛反発を受け、結局、売却は中止となったのは、今年2月のことでした。

 2020年9月14日、ソフトバンクグループ(SBG)が、傘下の英Arm(アーム)の全株式を米NVIDIA(エヌビディア)に最大400億米ドルで売却すると発表した。(中略)ただし、裾野が広いArmは、SBGのような半導体ビジネスに直接携わらない、ある種中立な企業グループが持っていたからこそ、据わりが良かった面があるようにも思える

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00065/00391/

 SBGは2020年9月に、負債削減などの目的のためArmの売却を決定。米NVIDIAと売買契約を結んだ。本契約を巡り、米連邦取引委員会(FTC)は21年12月に半導体市場の競争を阻害するとして買収差し止めを求めてNVIDIAを提訴。英国やEU各国の政府なども反対姿勢を見せた。
 孫会長がArm売却を決定した際、「単純に手放すのは嫌なので、ArmをNVIDIAに合併させて、NVIDIAの筆頭株主になりたい」と考えていたという。ArmのNVIDIA子会社化で半導体業界最強の会社を作り、そこの筆頭株主になるのが狙いだった。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/08/news163.html

ソフトバンクといえば、あえて言及する必要のないほどの赤い一族。
NvidaのArmの買収への批判に関して、赤いソフトバンクが関係あるのかどうか、わかりませんが、2020年9月といえば、まだトランプ政権の時です。
今年2月に出されたFTCの声明は下記の通りです。

「FTCとの訴訟から2カ月以上が経過し、Nvidiaは今週、Armの買収を断念すると発表した。 最大の半導体チップの合併になるはずだったものが中止されたことで、重要な技術の競争が維持され、将来のイノベーションが守られることになる。 この結果は、訴訟された垂直統合の放棄としては、ここ数年で初めてのことであり、特に重要である。

https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2022/02/statement-regarding-termination-nvidia-corps-attempted-acquisition-arm-ltd

競争相手について、VS中国や台湾の半導体企業と考え、かつ、Nvidiaがアメリカ、英国、EUサイドの企業だと考えるのであれば、同社のArm買収はむしろ歓迎するべきものではないでしょうか。しかし、アメリカ国内の自由競争の方が、安全保障よりも懸念されたのか、Nvidia自体に懸念があったのかについてはわかりませんが、買収は反対を受けたわけです。

ペロシと米国共産党の動きは、半導体利権?

赤い・バイデン政権、なんちゃって対中制裁を発動?

今年9月1日、現政権はNvidiaに対し、同社A100とH100チップの中国への輸出停止を命じました。中国への輸出制限(制裁)はトランプ大統領の時に、かなり戦略的に行われました。実際、ファーウェイ等の中国企業は大ダメージを受けたようです。

一方、現政権になってから、制裁は形だけになっていると言われています。実際、今回の制裁についても、Nvidiaの黄CEOの発言をみると、それが本当に意味がある制裁なのかどうか?ということは、疑問しか残りません。何しろ、

「我々の(中国の)顧客の大部分は、この仕様の影響を受けていない」

というのですから。「A100とH100に輸出制限をかけた」と言われても、素人には何のことかわかりません。黄CEOの発言通りであれば、制裁の意味は?となります。それどころか、中国に対して厳しい対応をとっているパフォーマンスだけが成立しますので、悪質です。

今年9月1日、米ゲーム・CG大手Nvidiaは、米政府から同社のA100とH100チップの中国への輸出を停止するよう指示された。この2つの製品はNvidiaの最速チップで、データセンターで自然言語処理などの人工知能タスクを高速化するために使用されている。創業者兼CEOのジェンスン・フアン(黄仁勲)によると、中国の関連分野での進出を引き止めることを意味するこの禁止令だが、Nvidiaにとって、中国は引き続き大きな成長機会を提供するため、障害にはならないという
先週行われた記者会見で、黄CEOは、今月初めに指示された制限には、チップの性能とプロセッサが他のチップを接続する能力の両方について特定の閾値が設定されていると指摘。そのため「中国市場には、(制限を受けない)大きなスペースを残している。我々の顧客の大部分は、この仕様の影響を受けていない」と言及した。

https://techwireasia.com/2022/09/nvidia-china-remains-a-significant-opportunity-despite-us-ban/

これに対し、中国サイドのメディアはどのように報じているか?といえば、次の引用は、香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストのものです。ちなみに同紙は2015年にアリババ傘下になっています。その同紙によると、「今回の禁止措置は、中国のハイテク産業にすでに衝撃を与えている」と言います。ただ、黄CEOとサウスチャイナ・モーニング・ポストのどちらの評価が適切なのかは、私自身、半導体に関する知識がないため、がわからないため、何ともいえません。

ファーウェイの時には、「全く影響なし」と言いながら、大打撃でしたので、今回は、何も困らないので、「打撃を受けている」と言って、効力のある制裁を避けているのかもしれません。

今回のアメリカの動きは、中国が先進的なチップやその他の技術にアクセスするのを制限しようとする、広範な取り組みの一環をなすものだ。今回の禁止措置は、中国のハイテク産業にすでに衝撃を与えている。というのも、国内企業が製造する製品は現在、Nvidiaの最高のグラフィック処理ユニット(GPU)に取って代わることができないからである。
Nvidiaの中国のライバルであるIluvatar CorexのCTOで、以前はNvidiaとSamsung Electronicsに勤務していたルー・ジャンピン(呂堅平)によると、Nvidia GPUはAIトレーニングシステムの汎用GPUの95%を占めているという。
アナリストらは、米国の禁止措置は、米国の半導体企業インテルとアドバンスト・マイクロ・デバイセズの中央処理装置、およびエヌビディアのGPUを搭載したクラウドサーバーで訓練される、中国の高度なAIモデルの開発能力に影響を及ぼすと指摘した。
黄CEOは「世界の製造拠点である中国は、世界のサプライチェーンの重要なノードとなり、その活気あるハイテク産業は、多くの洗練された賢いアプリケーションやサービスを生み出してきた」と言及。
(中略)
黄CEOは、Nvidiaは中国のクライアントと協力して代替品を探しているという。米国による追加の輸出規制を心配しているかとの問に対しては、「両国の指導者の知恵によって、両国の違いを埋めるための良い解決策が見つかることを望んでいる」と述べた。

https://www.scmp.com/tech/tech-war/article/3193316/tech-war-nvidia-ceo-jensen-huang-confident-china-market-despite-us-ai

やはり気になる!対中制裁に関する、Nvidiaの態度

先ほどの記事には、Nvidiaの態度として気になるものがいくつかあります。今回の制裁に対して、「Nvidiaは中国のクライアントと協力して代替品を探している」というのです。顧客を大切にしたいというのは、わかりますが、これでは意味がないというか、そもそもなぜ制裁を欠けているのか、理解しているの?と尋ねたくなります。

さらに、記事上に登場するNvidiaのライバルである中国企業のCTOは、Nvidiaでも勤務経験のある人物です。そうすると、このライバル社は代替品を提供できる可能性の高い企業なのでは?なんていう妄想もできてしまいます。その妄想からもう一度、先ほどの「クライアントと協力して代替品を探す」という行為に戻って考えると、やはりこのNvidiaの行為は企業がとる態度として奇妙です。代替品が見つかってしまえば、制裁が終了した後にクライアントが戻ってくるか、微妙だからです。ちなみに、中国では、”義理人情”的なことはは期待できません。そもそも中国進出した企業は、類似品を作られ、顧客も持っていかれ、撤退したくても撤退できないリスクを理解した上で進出しなければいけない・・・ほどの社会なのですから。

「両国の指導者の知恵によって、両国の違いを埋めるための良い解決策が見つかることを望んでいる」というのも、優等生的で正しい発言ですし、相手が中国メディアということを考えると、このように述べるしかないのかもしれませんが・・・。黄CEOが本当にこのように考えているのならば、いろいろ問題です。

共産主義者間での、半導体利権獲得を邪推してしまう・・・ような話も

8月16日付け、データセンター・ナレッジによると、半導体の国産化を促進するプロジェクトが各国(地域)で進められていることを受け、新しい投資が効果を発揮するには、少なくとも2、3年かかる一方で、長期的には供給過剰な状態が来るだという見通しがあるようです。それも今後1年〜2年のうちに。

Omdiaのクラウドおよびデータセンター研究プラクティスの責任者であるウラジミール・ガラボフは、8月15日に発表されたOmdiaのリサーチブリーフを参照しながら、国産化を促進するための多くの国家的イニシアティブを後押ししていることを受け、様々なデバイスタイプやアプリケーションにおいて「長期的な供給過剰環境」に移行すると述べ、と語った。
(アメリカのCHIPS法案についての話を、略)
EUは、2030年までに500億ドル(450億ユーロ)を投資する。この新しい投資が効果を発揮するのは、少なくとも今後2〜3年の間だろうとガラボフ氏は言う。新しい半導体製造施設を建設して稼働させるには、それくらいの期間が必要なのだ。しかし、新しい生産が始まる前でも、半導体業界は今後12カ月から24カ月で供給過剰の環境になると、ガラボフ氏。

https://www.datacenterknowledge.com/manage/will-pelosi-s-taiwan-visit-affect-data-center-semiconductor-supply-chain

今後、1年〜2年で供給過剰な状況が見えている業界に、520億ドル以上もの投資をするべきなのでしょうか?米国の半導体企業の生産能力を上げるための投資は、国防上、絶対に必要だと思います。しかし、それならば、資金を受けた企業に関して、少なくとも国内企業への販売を優先させる等の縛りが必要ですし、中国企業に販売しない前提であれば、供給量もそこまで拡大させる必要がない、つまり520億ドルも投資する必要がないと思うのです。

余ったら、どうするんでしょうね。
また、日本に押し付ける?

世界的な半導体不足が言われている中、本当に供給過剰なんて起こるのかについてですが、実際、今年7月1日に、すでに気になるニュースがありました。

Nvidia、需要冷え込みでRTX 4000シリーズ向け5nm TSMC受注を減らす可能性

Nvidia、AMD、Appleの3社は、世界的なインフレの高まりを受け、人々が最新電子製品の購入の優先順位を下げているため、TSMCへの発注を減らしていると言われている。(中略)
NvidiaはすでにTSMCから5nmの生産能力を確保するために前払いを行っている。(中略)Nvidiaは需要の低下に直面しており、5nmの注文をカットしたいと考えているという。
TSMCはNvidiaの窮状に同情的ではなく、何の譲歩もしないとみられている。TSMCにできることは、出荷を1四半期遅らせるか、2023年第1四半期に遅らせることであり、これはNvidiaがTSMCの空いた生産能力のために代わりの顧客を見つけることを意味することになる。

ん?
520億ドル以上の政府予算を投じることにした理由は、
コロナの影響での生産減・需要増による深刻な半導体不足が深刻だったはず。
それが”世界的なインフレの高まりを受けた需要減”
しかも、メーカーは受注数減分生産を他のに回しにくい状況でもあるの?

確かに最近発売したiPhone14の標準モデルの売れ行きはイマイチと聞きます。しかし、その原因を世界的なインフレを受けた需要減とされると、”パンデミックの影響を受けた、生産減・需要増・・・”という商務省の聞き取り調査と矛盾するような印象を受けます。実際、Proシリーズは引き続き高い需要があると言われていますので、単純に標準シリーズは13で十分というだけではないかと思うのですが。

何はともあれ、ここでは一旦、記事通り、Nvidiaがインフレ高による需要減を受け、TSMCへの発注を減らしたいと考えているが、強気なTSMCはその依頼を受けないようだとします。そのようなある意味ゴタゴタがあった中の9月20日、両社間のビジネスがさらに拡大したことが発表されています。この記事はどちらかといえば韓国目線で書かれたもので、業界第2位のサムスンの顧客(売上)が同第1位のTSMCに取られてしまった・・・というもので、その理由はサムスン側の納期に問題があったとしています。

9月20日(現地時間)、NVIDIAは次世代グラフィック処理装置(GPU)「RTX40」シリーズを紹介した。新しいアーキテクチャ「Ada Lovelace」を採用し、前作に比べて性能を約4倍高めた。
注目すべき部分は工程改善だ。「RTX30」シリーズは8ナノメートル(nm)基盤だったとすれば新作は4nm技術が導入された。もう一つの変化は、生産メーカーがサムスン電子からTSMCに変わった点だ。
GPU市場は20兆ウォン(約2兆146億円)を上回るものと推定される。このうち、NVIDIAは80%以上を占めている。NVIDIAの新製品受注を獲得したということは、兆(千億円)単位の収益を確保したという意味だ。これに先立ちTSMCはスーパーコンピューターなどに使われるNVIDIA「H100」の製造も担当することになった。両社間の協力が強化される傾向にある。

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/koreaelec/business/koreaelec-20220929-18025

もちろん、受注量を減らしたかった製品と、新規受注製品は、異なるものだと思うのですが・・・。前回の記事で「NvidiaがTSMCの空いた生産能力のために代わりの顧客を見つけることを意味する」とありましたが、素人考えでは、その空いた生産能力を新規受注分に当てれば、受注減の問題もクリアだと思うのですが、その辺はこの記事には書かれてありませんでした。

繰り返しになりますが、CHIPS法の目的の1つは、広い意味での中華圏(台湾、中国)に半導体製造工場が集中しているのは、安全保障上、よろしくないというものだったと思います。しかし、Nvidiaのこの行動は、CHIPS法の目的とは逆の向きに進んでいるようなものです。

これは本当に邪推です。しかし、なんとなく中国と仲良くしているグループへ、米国の半導体投資のお金が流れていくような仕組みが作られてしまったようなモヤモヤ感があります。

とはいえ、この辺のモヤモヤは、もうこの際、どうでもいいんです。何しろ、この記事のラスト2行がインパクトありすぎて。

TSMC、対中制裁製品”NvidiaのH100”の製造を担当!?

先ほどの記事のラスト2行です。

”TSMCはスーパーコンピューターなどに使われるNVIDIA「H100」の製造も担当することになった。両社間の協力が強化される傾向にある。”

このH100って、先ほど米国現政権がNvidiaに中国への輸出を禁止した2つの製品のうちの1つだと思うのですが・・・?

「中国のクライアントのために、輸出が制限された製品の代替品を探す」と、Nvidiaの黄CEOはインタビューで答えていました。”TSMCがNVIDIA「H100」の製造も担当することになった”というのがどのような契約かわかりませんが、現政権が輸出禁止を命じたのは、Nvidiaに対してという記述だったと思います。トランプ政権の時の中国への輸出禁止令は、アメリカ企業だけでなく、アメリカ企業の製品を使った外国企業の製品も対象とされていました。今回の命令がNvidiaのみに出されたものだったとした場合、TSMCが中国H100を輸出することは可能なのか気になります。

万が一、TSMCがH100を中国へ輸出することが可能であった場合、表では安全保障の強化を謳いながら、実はアメリカの国力をどんどんと中国に流しているようなシステムが作られてしまったということも考えられます。

これらの邪推が一部でも当たっていたとしたら、ペロシが直接台湾に行き、関係者と直に話すというのは、盗聴の心配やメール公開のリスクがないという点で、とても意味のあることです。

台湾半導体でも儲かる、ペロシファミリー

冒頭のインサイダー取引疑惑があった、ペロシ夫のNvidia株の購入の件ですが、騒がれたためか、NVIDA株を売却し、341,365ドルの損失を計上したと報道されています。

ただし、Nvidia売却の件を紹介した記事には、下記のような記述もあります。すでに有効期限の9月16日をすぎていますが、この続報は見当たらず、こちらがどうなってのかはわかりません。

下院議長の取引を共有するTwitterのNancy Pelosi Trackerでは、Pelosisが2021年7月23日に買い戻した、行使価格100ドル、有効期限2022年9月16日のNVIDIA Corporationのオプションをまだ50個所有していることに注目している。

https://www.benzinga.com/news/22/08/28336497/could-nancy-pelosis-meeting-with-taiwan-semiconductor-benefit-her-investments

上記の記事ではさらに、「中国との緊張が高まる中、ナンシー・ペロシの台湾訪問の理由を世間が疑問視している。そのような中、ペロシの台湾訪問は、”投資的な側面”があるかもしれないとするのは、検討の余地がある」としています。なぜなら・・・、

ペロシ・ファミリーは台湾半導体の株式を直接保有していないが、
資産管理・投資会社アライアンス・バースタイン社の株式を大量に保有している

というのです。

ちょっとややこしいのですが、記事によると、アライアンス・バースタイン社は、台湾半導体の株を約147万株保有しており、その持ち株の価値は、6月末時点で約1億5300万ドルだったと言います。そのアライアンス・バースタインの株を、ペロシ・ファミリーは、6万株持っているというのです。

そのため、Nvidia株で損失を計上しても、台湾の半導体株がうまくいけば、十分すぎる儲けが出るというのです。

ポール・ペロシによるAllianBernsteinの購入は2020年に遡り、3件の購入が申請されている。
2020年12月22日:1株34ドル前後で2万株、評価額50万ドル〜100万ドル
2021年2月18日:1株約36ドル前後で15,000株、評価額50万ドル~100万ドル
2021年2月23日:1株36ドル前後で25,000株、評価額50万ドル〜100万ドル
この3回の購入により、ペロシ・ファミリーはアライアンス・バーンスタインの株式6万株(現在270万ドル相当)を保有することになる。

https://www.benzinga.com/news/22/08/28336497/could-nancy-pelosis-meeting-with-taiwan-semiconductor-benefit-her-investments

ナンシー・ペロシの動きについては、あと2つほど気になることがあるのですが、そちらはもう少しリサーチしてから・・・と思います。

いずれにしても、彼女の台湾訪問は、”彼女が何某らの得することなしには行われなかった”というのは、間違ってはいないことだと思います。イメージ回復は絶対に目的の1つだったとして、後に述べたアメリカの保守派の噂と、私の妄想に、果たして正解は含まれているのでしょうか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?