見出し画像

記事「医療従事者でブレークスルー感染が増加」に潜んだ不都合なファクト?

記事の概要

医療従事者でブレークスルー感染が増加(2021年9月13日)ワクチン接種による感染予防効果は2回目接種後6~8カ月で低下することが示唆されたという。今回はこの記事や、記事にあったデータについて検討していきたいと思います。

医療従事者約1万9,000人を擁するUCSDHの関連施設では、マスク着用義務化と感染予防策を厳格に実施してきた。2020年12月中旬にmRNAワクチン(ファイザーまたはモデルナ製)の接種を開始し、2回接種率は2021年3月に76%、7月には83%となった。
2021年3月1日~7月31日にSARS-CoV-2陽性となったのは227人で、うち130人(57.3%)がSARS-CoV-2 mRNAワクチン2回接種を完了していた。2回接種者130人中109人、非接種者90人中80人で症状が発現した。残りの7人はワクチン接種が1回のみだった。

上記の記事の数字をまとめると下記の表になります。

画像1

まず、記事中には、陽性者中130人を57.3%としていますが、ここでこの割合を出してしまうと、接種者の方が多く感染したような印象になってしまいますが、同院の完全接種率は3月に76%、7月に83%であり、接種者、未接種者の母数が違うことからこの数字はあまり意味のないものかと思います。

米・University of California, San Diegoの医療システムであるUC San Diego Health(UCSDH)のJocelyn Keehner氏らが、UCSDHの医療従事者を対象にSARS-CoV-2 mRNAワクチンの感染予防効果を検証した結果をN Engl J Med(2021年9月1日オンライン版)に報告。ワクチン接種による感染予防効果は2回目接種後6~8カ月で低下することが示唆されたという。

もともとこの記事(研究)は、ワクチン接種による感染予防効果は6−8ヶ月で低下するというものを表したものでした。しかし、提供されたデータから、約1万9,000人中、189人が発症ということで、発症率は0.99%、重症化率は0.005%。コロナ感染のリスクが最も高い場所の1つ病院であっても、きちんと対策すればここまで抑えることができるという風にも読み取れないでしょうか? ただし、この記事の結論は全く違ったものです。

記事の結論:データのいいとこ取り?

この研究では、ワクチン有効率の低下について、次の点も理由としてあげています。

 共著者でUCSDHのNancy J. Binkin氏は「6月から7月にかけてのワクチン有効率の顕著な低下は、サンデイエゴ市におけるデルタ株の出現と経時的なワクチン有効率の低下に加え、カリフォルニア州におけるマスク着用義務の解除(6月15日)とそれに伴う市中感染リスクの上昇などの因子が影響していると考えられる」と指摘している。  

このあたりはグラフ等が使われて説明されています。

問題は次の一文です。

筆頭著者でUCSDHのLucy E. Horton氏は「デルタ株では5~11歳の小児の感染率も高い。2回接種者に比べてワクチン非接種者は検査の陽性率が7倍で、非接種の成人は入院リスクが32倍となる」と説明している。

このデータは別の統計から持ってきたものですよね?CDCが74%の感染者がブレイクスルー感染と発表した後に、それを打ち消すように出したカリフォルニア州の とある郡でのデータかと思います。期間設定が5月1日から7月25日と、なぜ7月末日までのデータではないか些か不思議ですし、2回接種者でも接種から2週間経っていないと「未接種者」扱いとして計上されている点にも疑問が残ります。より正確なデータを作成したいのならば、1項目増やし、1回接種者を追加するべきです。イギリスの公衆衛生庁のデータはそのようになっていたと思います。さらに、国全体の数字が出せないにしても、せめて州全体の数字は出せたはずです。この期間、この郡の調査が一番インパクトがあったのでは?と勘繰られても仕方ない気がします。そもそもCDCのガイドラインでは、陽性者数のカウントは、CT値の設定がワクチン接種有無で異なります。

ワクチン接種有無に関する感染者と入院者のデータは、本調査でも、簡単に出せる数字かと思います。ここに言及するならば、自分たちが出した数字を元になぜ計算しないのでしょうか?

ちなみに、2回目完了率76%を使って推定ワクチン接種者数を計算すると、14,440人。その数字を元に計算すると下記の通り。*は1回のみの情報が陽性者が7としかわからないため、1回接種者と未接種者を合計しました。

画像2

完了者83%で計算すると下記の通り。

画像3

ワクチン接種している人の感染率はおそらく1%以下なのではないでしょうか?

さらにびっくりするのが記事のクロージングです。

上級著者でUCSDHのShira R. Abeles氏は「これらの結果から、SARS-CoV-2感染対策として屋内でのマスク着用や集中的な検査戦略に加え、ワクチン接種率を上昇させる重要性が明らかとなった。同様の結果が米国や他の国々からも報告されており、ワクチンの追加接種(ブースター接種)が必要になる可能性は高い」と付言した。

どうしてそうなる???

あくまで上記で算出した推定値ですが、2回接種により下げることのできる感染率は1〜2%くらいかと思います。それに、研究論文では、「6月から7月にかけてのワクチン有効率の顕著な低下は、サンデイエゴ市におけるデルタ株の出現と経時的なワクチン有効率の低下に加え〜」と、デルタの出現がワクチン有効率の低下の原因としています。不完全なワクチンにはより強固な変異があわられやすいという研究もありますし、デルタがこれだけ感染拡大しているということは、変異もその分だけ行われているはずです。デルタよりももっとワクチンの効かない変異ができる懸念を考慮しないのは、なぜでしょうか?すでにミュー株がそうだと言われていますそこに触れずに、ブースター接種が唯一の解決法のような結論にたどり着くというのは疑問しかありません。もっと言ってしまうえば、デルタ株の出現が想定外みたいな言い方をする科学者もいますが、コロナは変異が激しいため、ワクチンでの押さえ込みは難しいということは、当初から反対派の科学者が指摘していた通りのことです。懸念されていたことが起こったね、以上のことはないはずです。それを加味した上で開発したワクチンということだったのでは?

ブースター接種を後押しするデータは、何らかの理由で効果が薄れたことを示す必要があるため、ワクチン接種の有効性を軽減することはあっても、増やすことはあり得ません。CDCの政策に合わせた結論に導くために、自らの研究とは別のデータを持ってきたというところではないでしょうか。

さらに、ブースター接種の有無を検討するならば、ワクチンの有害事象の評価を加えることが不可欠ではないでしょうか?米国では、ファイザー社に関して、FDAが正式承認してしまいましたので、安全はFDAが担保ということになるのでしょうが、治験中のワクチンであることには変わりありません。現在も、長期的な有害事象についての情報は集めているという状態です。FDAの承認部門の幹部2人の、突然のリタイヤも気になる出来事の1つです。

提供されたデータから、約1万9,000人中、189人が発症ということで、コロナの発症率は0.99%、重症化率は0.005%(入院1人)。その上で、ワクチン有効率の時間による低下、3回目接種時の副反応、ワクチンがより効かない変異株の出現確率等を示した上で、ブースターショットの必要性を訴えるべきではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?