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健康・移動・金の移動を全てアプリで管理できる利便性とリスク

日本のメディアの多くは、”中国のテクノロジーはすごい!比べて日本は出遅れている”と言います。半分当たっていて、半分間違っているかと思います。そんな優れたビジネスモデルとして紹介されることも多い、オンライン・ヘルスケア・メディカル・プラットフォーム”平安好医生”について紹介させていただきます。

多くのメディアが取り上げているのが、表のビジネス・モデルですが、見落としてはいけないのが、一党独裁国にある企業ということで、ビジネス・モデルが違う目的で利用される可能性もあるということです。

最近のワクチンパスポート関連のニュースを見ていると、この本来は予想していなかったであろうビジネス・モデルが展開される可能性について、広く知って頂いた方が良いのではないかと思いました。

平安好医生のビジネス・モデル(企業発表情報をもとに)

ユニコーンの1つ、平安好医生

平安好医生は、2015年に中国平安保険の完全子会社として誕生した、オンライン・ヘルスケア・メディカル・プラットフォーム。巨大エコシステムを提唱する同社中核を担う存在が同名のスマホアプリです。2017年末時点には、1.93億人のユーザーを獲得し、6万人超の医療機関・医者が登録。2019年にはユーザー数が3億人を突破したと発表されています(あくまで同社発表による数字です)。

2014年の設立からわずか2年でユニコーン入りを果たし、2018年5月には香港証券取引所に上場。代表の馬明哲さんは、上場当時、アリババのジャック・マー、テンセントのポニー・マーと並び、”3馬(馬:苗字)”として脚光を浴びていました。

そして、日本のソフトバンクもガッツリ投資している・・・という会社です。ソフトバンクは、中国の超優良企業への投資を行っていることで知られていますが、外国企業が中国国内でこれを許されているというのは・・・党幹部とかなりうまくやれているということのようです。日本企業とのつながりで、中国企業の中国内での位置づけを紹介するというのも、変な気がしますが、中国企業でソフトバンクのビジョン・ファンドが投資しているというと、何か1つのカテゴリーが出来上がっている気がします。

ソフトバンクが投資している部分を除いても、急成長している企業には必ず共産党の後ろ盾があります。共産党は中国で”絶対的なルール”です。後ろ盾がある企業なのだから、急成長して当然!というところも確かにあるのですが、同社のビジネス・モデル自体はとても興味深いものになっています。

平安好医生が解決した中国の医療問題

もともと中国の医療サービスといえば、”3時間待って、たった3分の診察が受けられる”と言われるほど、劣悪な環境にありました。受信の前に、支払いを行う必要がある等、”医師に診察してもらう”というのは、いろいろなハードルがあることでした。・・・とはいえ、アメリカも、受診までのハードルー支払い能力の確認ーは同様にありますから、日本のような国方がむしろ稀かと思います。
(日本も保険証の確認はされますが、アメリカの場合、新規患者手続きに3日〜1週間くらいかかります)

そんな劣悪な医療環境を救うべく登場したのが”メディテック(医療+テクノロジー)”です。スマホアプリを活用し、診察にまつわるプロセスを効率化しました。(実際に同アプリを使ったことがないため、同社が発表したもの、ウェブ上にある体験談からまとめたものです)

  1. 24時間体制の医療相談サービス(AIドクター)

  2. 診断が必要と判断されれば、最寄りの医者を予約

  3. 診療費の支払い *アプリからの予約者は、支払いの列に並ばないで済む

  4. 処方薬のデリバリ・オーダー

  5. 健康食品や医療器具のショップサイト

そんなに画期的?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、同じアプリを発表しても、日本と中国とのインパクトは全く違います。診察を受けることがいろいろな意味で困難だった、中国でのインパクトは、かなりのものでした。

1は、人間の医師がフォローする形でAIドクターが診断を行うというところまで、進んでいたのが数年前ですので、現在ではもっと進んでいる(AIドクター単独での診察等)かもしれません。いずれにしても、自宅にいながら診察を受けるべきかの有無を受けることができます。おそらく2まで進まなくても、1の段階で、処方箋がもらえるようで、こちらもアプリ内でデリバリを頼むことができます。

2では、最寄りの医者だけでなく、登録医のオンライン診療を受けることが可能です。この機能を使うと、医師のいない地方に住んでいても、都市部にいる専門医師の治療を受けることもできるようになりますから、医療格差の解消に役立っている社会的にも意味のあるアプリだといえます。

4は次章で詳細を説明させていただきます。5は、単純にオンラインショップを開設しているだけではなく、定期的に届く健康情報を配信することで、アプリへのアクセス回数を増やすことで、垣根を低くしているとのことでした。ここは憶測ですが、医療相談での問診や、処方箋がアプリ上にあるということは、技術的には、症状に応じた商品案内を送ることも可能です。これを行っているのだとすれば、かなりの広告効果だと思います。

メディテック + フィンテック 

このようなアプリを立ち上げた場合、キーとなるのが医療機関や医師の囲い込みかと思います。どんなに便利なアプリであっても、診てくれる医師の数が少なければ魅力が低減してしまうからです。その点で、平安好医生は開発から2年で6万人を超える医療機関・医師を獲得できたといいます。それは、同社アプリのユーザーを患者とすることは、支払いの確保ができ、事務作業の軽減につながるため、医療機関としても、アプリを使うメリットが大きいためです。

前章であげた5つのプロセスの改善のうち、平安好医生の最大の強みは、4の支払いの部分だと思います。というのも、親会社は、平安保険であり、グループ会社には、フィンテックの”陸金所Lufax”もあり、”グループ会社全体でのエコシステム”が出来上がっているからです。Lufaxは、保険だけでなく、流動性預金や定期預金、投資信託、P2P等を取り扱う総合金融サービスを提供しています。

メディテック + 伝統的な保険セールス

ここまででしたら、楽天等の日本の企業でも、できそうですが、平安がうまいなと思うのが、ここに伝統的な保険ビジネスも盛り込んでいるところです。具体的には、病院の予約等のアプリの利用により、ユーザーの”お困り事”を把握した平安保険の営業がユーザーのもとに駆け寄り、”職員の善意”により、ユーザーをサポートしてくれるのです。このサポートは、アプリや平安と全く関係のないことまでやってくれるようです。ウェブ上にあった情報では、病院に行っている間の子どものお迎え等もお願いできるようで、とにかく困ったユーザーを助けてくれるのです。

保険の営業は、近々の”お困り事”が解決した後です。高い医療費を払った後というのは、人が保険加入を最も考える時期かと思います。そのタイミングで、個人的なサポートをしてくれた営業職員から、適切な保険を勧められるわけですから、加入率もアップするでしょう。
とはいえ、平安保険のすごいところは、営業のKPIを”保険の加入者数”ではなく”アプリの登録者数”としているところです。営業職員として、無理やり保険の加入を迫る必要がありません。ですから、保険加入についても、善意からのお勧めという路線のままいけます。そんな営業職員が顧客にプッシュすべきは、”知人や家族を紹介してもらい、無料のアプリに加入してもらうこと”です。顧客としても、親切な営業マン勧める便利なアプリですから、知人や家族に紹介しやすいものです。

好医生とは、良いお医者さんの意味ですが、その名の通り、ユーザーの支持率が高いアプリとしても知られています。ここが”好医生”戦略のすごさです。なぜこんなビジネス・モデルが可能かといえば、グループ全体のエコシステムでビジネスを考えているからです。保険契約が少額であっても、アプリとしての信頼を勝ち得ることで、結果的に一人のユーザーからたくさんの売上が期待できるため、高額保険契約を売り付ける必要がないのです。

コロナ禍のビジネス拡大

前章までは、コロナ前までに同社が発表していた平安好医生についてです。コロナ禍には、院内での感染を避けられるオンライン診療が注目されています。

中国平安保険集団有限公司の共同CEOであるジェシカ・タンは2020年8月13日、”2020 MIT Platform Strategy”で、”コロナウイルスが蔓延する中、テクノロジーが平安の健康管理を強化”というスピーチを行っています。その内容をまとめてみました。

対患者:平安好医生(平安グッド・ドクター)

同社共同CEOによると、中国で新型コロナの流行がピークに達した2020年1月22日から2月6日までの間、新規登録ユーザー数は1月1日から21日までの期間と比較して10倍に増加しました。また、1日の平均オンライン相談件数は同期間に9倍に増加したと言います。

対医療サービス提供者:平安智慧城(平安スマート・ヘルスケア)

医療サービス提供者に対しては、医療サービス提供前、提供中、提供後のすべてのステップをサポートするデジタルプラットフォーム、”平安智慧城”を提供しています。2020年7月現在、平安スマートヘルスケアは、中国の90都市にある約17,000の医療機関のネットワークをサポートしています。

  • ”スマート画像読取システムCOVID-19”(2020年初頭):約15秒で、90%以上の精度を誇る分析結果により、医師の迅速かつ正確な診断を支援

  • ”AskBob Doctor”(2019年6月):AIを活用した診断・治療支援ツール。43万人の医師が3,300万回利用。医療判断支援、患者フォロー、患者教育にも活用。

対社会医療保険等の支払者:平安医療健康管理(平安ヘルス・コネクト)

高度なアルゴリズムと技術を用いて構築した、不正防止モデルと医療資源最適化モデルです。これにより、過剰治療、不正を削減します。また、中小規模の保険会社にもリスク管理サービスを提供しています。2019年末時点でのサービスの提供は、200以上の都市で8億人以上。

チャイナ・リスク

政治と経済の密な関係

平安好医生のビジネス・モデルについて紹介してきました。コロナ禍でも一層、ビジネス拡大を行っているようです。が、投資対象として、平安好医生が良いかどうかはまた別の話となります。利益は上がっているものの、巨額の赤字はいまだ解消されていないからです。

中国経済メディア「財新」は5月19日、平安好医生の董事長兼CEOを務めた王濤氏の解任後、同社COO(最高執行責任者)、CPO(最高製品責任者)、CTO(最高技術責任者)などの幹部も全員解任されたと報じました。”期待通りの成績を上げることができなかった”と、取締役会が判断したため、と同社は説明しています。しかし、中国ウォッチャーの間で、注目すべき点とされているのは、平安好医生の主要幹部はいずれも”アリババ出身”だった点です。

アリババといえば昨年末から大変なことになっています。創業者、ジャック・マーは、2020年10月から数ヶ月間、行方不明になっていましたが、今年はじめ、公に姿を表しました(が、以前と印象が違うという噂もあります)。
その後、アリババ(eコマース)、アントグループ(フィンテック)に対して、中国政府からの攻撃が続いていると言います。攻撃の破壊力がどれくらいか?といえば、史上最大のIPOを予定したアント社ですが、当局により、突然、中止されてしまうくらいです。そもそもの原因は、ジャック・マーによる金融政策批判と言われています。その直後に姿を消したからです。ただし、テック企業の多くは、共産党旧勢力の子孫の影響下にあると言われており、その資金源となっている”テック企業潰し”が行えるなら、現政権にとって理由は何でも良かったという説もあるようです。

という風に考えていくと、アリババ出身の平安好医生幹部もまた、旧勢力の影響を受けた人であるとも考えられますから、何らかのプレッシャーがあったのかもしれません。

国防動員法

中国に進出しようと(している)にもかかわらず、中国の政治をほとんど理解していない経営陣が日本にもアメリカにも結構います。コミュニズムは素晴らしい!なんて教えている大学があるくらいですから、仕方ないのかもしれませんが、チャイナリスクの話をすると、陰謀論を聞いているかのような反応をします。しかし、中国が今の政権になってから、中国は”世界征服を狙っている”ということを全く隠していません。”一帯一路”を始め、今回紹介する国防動員法も、全てニュースに出ている話です。

その1つが2010年7月に施行された国防動員法です。

例えば第31条。「召集された予備役要員が所属する単位(役所や企業など)は兵役機関の予備役要員の召集業務の遂行に協力しなければならない」。予備役要員は中国国籍の男性18~60歳、女性18~55歳が対象。有事の際、戦地に送られるというよりは、兵站などの後方支援や中国の敵国に関する情報収集任務が与えられる可能性がある。

https://www.sankei.com/article/20150904-ATMA4MZT25L43P2CYLXMBPJX6U/

中国が”緊急時である”と判断すれば、中国籍を持つ対象年齢の全ての人がスパイになり得ます。これは日本やアメリカにいる中国籍の人も同じです。企業または国家秘密を漏洩すれば、日本やアメリカで罪を問われますが、どんな国にいても、中国政府の命令に背くより怖い法律はないかと思います。というのも、中国では、罰せられるのが本人だけでなく、家族、親戚にまで及ぶ可能性があるからです。

そして第54条。「備蓄物資が国防動員の需要を延滞なく満たすことができなくなったときは民生用資源を徴用できる」。民生用資源は、企業など組織や個人が所有、または使用している社会生産、サービス、生活上の物資、施設などを幅広く含むとされる。自動車や電機など、現地工場の生産設備や物流のためのトラックなどのモノが根こそぎ徴用されても合法だ。

https://www.sankei.com/article/20150904-ATMA4MZT25L43P2CYLXMBPJX6U/2/

記事では、徴用される事例では、生産設備やトラック等、目に見える資産が列挙されていますが、今回紹介したようなアプリ(サービス)や、アプリで収集・蓄積したユーザー情報も徴用対象となる可能性はあります。健康情報から、健康な人だけでなく、特定の疾患のある人を検索することもできるでしょうし、資産の情報も調べることができます。何より・・・アプリで管理された資産を凍結することは、技術的には容易いことです。

トランプ政権が2020年9月に、中共軍との関係が見られた中国人ビザ1,000件以上を取り消した際に、リベラル派は”人種差別”や”人権侵害”のような反対を行っていましたが、本人たちが共産党員でないならば、中国政治についてあまりにも無知だと言わざるを得ません。トランプ政権は「軍との関係がない中国からの留学生や学者は歓迎」と、中共と中国人は全く異なるものとして扱っています。実際のところ、国家動員法は、軍との関係のない一般中国人を対象としたものですので、リスクヘッジを考えれば、全ての中国籍の人のビザを取り消すことが最も安全ですが、
それはしなかったわけです。

さらに、中国共産党に対して厳しかったのは、トランプ大統領よりも、むしろ、アメリカ議会の方です。中でも、マルコ・ルビオ上院議員は、中国共産党の戦略をよく研究されていて、民間企業や学者、学生を装ってアメリカの国家、民間企業の知的財産を盗もうとする中共の動きにいち早く気づき、これを阻止する活動をしています。

余談ですが、アメリカでは、対中共だったらマルコ・ルビオ議員、対ファウチ(謎の多いコロナ対策)ならランド・ポール議員のような感じで、議員の得意分野や政策が外国人の私にもわかりやすいほど、彼らの活躍がはっきりとしています。日本の政治家で、これをしようと思うと・・・。
コロナ政策で、最初にわけがわからない状態になったのはアメリカでしたが、ワクチンの義務化では、ギリギリのところでこれを止めることができています。それは、立法能力のある議員がたくさんいて、議会が機能しているからではないかと思います。内閣の評価はここであえていうまでもないことかと思いますが、全ての政策が失敗に終わっています。不正選挙やアンティファ等が人種問題にすり替えようとする刑事事件等では、司法はボロボロでしたが、最近の裁判は脅しに負けない判決が出てきています。三権分立のうち、2つの権力がボロボロでも、1つが機能していれば、何とか持ち堪えて、別の権力も立て直せるのかな・・なんてことを考えています。

コロナファシズムと、デジタル・ワクチンパス

ワクチンの義務化に際し、接種を証明するための”ワクチンパス”と、そのデジタル化の話が出たときに、平安好医生のアプリのことを思い出し、今後、各国の共産党政府が考えるかもしれないことを想像し、ちょっと寒くなりました。ここからは架空の物語です。

コロナの変異株Ω(オメガ)が出現。政府が”緊急時”と判断し、国家動員法を発動。ある民間企業が持っていた資産、”健康アプリ”が徴用されます。政府はこのアプリを使ったワクチンパスを発行することにします。義務化されていたワクチンは、政府の命令に従ってきた人ならば、すでに5回打っていることになります。命令を受けた医療機関は、これまで紙ベースで対応していたワクチンパスを”健康アプリ”上にアップロードします。ここで5回分の記録がある人はセーフですが、足りない人は、1回ごとに10点が”グッド・シティズン(ポイント)”から引かれることになります。記録が1回もない人は、その時点で、”健康アプリ”と連動した”金融アプリ”が凍結され、資産は徴用されます。未成年の子どもの未接種は、親の責任になり、回数分だけ”グッド・シティズン”からマイナスされます。なお、親が子どもにワクチンを打たせなかった(勧めなかった)こと通報した子どもには、”グッド・シティズン”にポイントが100点加算されます。

各ワクチンには、6ヶ月の期限がついています。この期限内のワクチンがなければ病院で診てもらうことができないだけでなく、金融アプリでの利息が減ったり等のペナルティが与えられます。学校やオフィスの入り口にあるセキュリティスポットも通過できない仕組みになっていますから、定期接種は就学、就業のためにも不可欠です。

このアプリは位置情報も活用しています。期限内のワクチン接種がないまま、市外に出ようとすると、警告メッセージが表示されます。表示されたメッセージに従わない場合、位置情報と町中に張り巡らされた監視カメラにより、警官がやってきて、速攻、逮捕されます。逮捕されれば、当然、金融アプリの資産は徴用されます。

・・・以上は、全く架空の話ですが、部分的には実際に行われている政策もあります。さらに、オーストラリアやカナダ等のコロナ政策の動向を見ていると、民主主義国家であるならば、このようなことが行われるわけがないとは、断言できない事態になっています。次回は、この架空の物語をベースに、実際に行われている”これはもうファシズムでしょ?”についてシェアさせて頂きます。


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