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EVの話の続きと、全体像を見ること

このテーマ、本当は全く別の方向に話を進めていきたいのだけど、前回うっかりEVについて触れてしまったので(笑)、もう少しだけこの話に留まることにします。

前回はエネルギー消費についてざっくりとした話を書いたけど、もちろん別の観点もあります。例えば、二酸化炭素(CO2)の排出量がありますね。カーボンフットプリントとも呼ばれていて、気候変動の原因と言われている温室効果ガスの排出量を示すものです。この排出量の削減が早急に必要とされていて、多くの努力もされているというのは、みなさんご存じの通り。

EVの走行時のCO2排出量を計算する際、その国の電力供給のCO2排出量の平均値を使用して求めます。つまり、電力供給で再生可能エネルギーの割合が大きければ排出量が少なくなります。そして、計算結果はどの電力供給バランスでも、大抵はEVの方がガソリン車より排出量が少なくなると思います。

しかし、だからと言って、これでEV万歳!とはならないのです。

このCO2排出量はあくまで一定の条件で計算された走行時の排出量です。例えば、EVは暖房を使うと、到達距離が300kmだったのが200kmぐらいに落ちたりします。300kmが200kmに落ちたら、CO2排出量は1.5倍増です。ガソリン車の暖房は排熱を利用しているので、CO2排出量は暖房を使っても変わりません。

それから、電池は気温が低いところでは性能がかなり落ちます。つまり寒冷地でEVを使う場合は、CO2排出量は違う値になると考える方がよいでしょう。

あとは当然、生産と破棄のプロセスも考えないといけません。環境評価をする際には、製品のライフサイクルを通して考えるというのは基本です。

EVの場合は、電池の生産でかなりの量のCO2が排出されると言われています。生産時に全ライフサイクルの40%以上のCO2を排出するというデータも読んだことがあります。全くもって無視できません。

あと電池は、スマホの電池とほぼ同じですから経年劣化します。なるべく劣化しないように最適化するようには設計されているようですが、交換したらその分CO2の排出量も増えます。ガソリン車の場合、普通は燃料タンクは交換しないし、たとえ交換するケースがあったとしても単なるプラスチックの容器なので、これに較べたらCO2排出量はゼロのようなものです。

また、テスラ車のように、ほぼ市販の乾電池のような大きさの電池を大量にハンダ付けして使っていたら、廃棄時のコストもかかり、CO2の排出量も増えるだろうと言われています。

そんな風に、様々な要素を考慮しないといけないのですよね。このテーマでは、かなり多くの調査・研究がされています。ここで絞って紹介することはできないので、興味があれば調べてみられるとよいでしょう。

しかし私にとっては、EVとガソリン車のどちらがよりCO2の排出量が少ないかというのは、けっこうどうでもよいのです…。EVの排出量の方が少なかったとしても、上記のような理由で差はそんなに大きくないはずです。その状態でEVを推進し、まだ走れる古い車を破棄させて、EVを生産をして購入させるというのは、結局はCO2の排出量を増やすことになっているだろうと思っています。

少しでも環境に良いことを…と、頑張ってEVを開発されている方達は素晴らしいと思うのです。でも、CO2排出量の削減が早急に必要というこの状況で、生産と破棄で余分にCO2を排出しつつ、排出量がちょっと少なそうな別の何かを推進するのは違うのではないかと思っています。

これはEVに限った話ではなく、ほかの製品でもそうなのです。

長くなって「全体像を見ること」の部分が書ききれなかったので、次回に回します。


この記事は別ブログに書いたものを移行したものです。

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