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Tegeler Fließの水牛たち

木曜日に4回目のコロナワクチンを接種した後、3日ほど大人しく過ごしていた。

今回は熱は出なかったけど、翌日は仕事をするのは明らかに無理だった。やたら眠くて寝て過ごした。さらに次の日の土曜日も決して体調は悪くはなかったけれど、庭仕事をするのもよくなさそうな感じだったので、家の中で過ごした。

そして日曜日、ようやくちょっと散歩しに出ることにした。行ったのはTegeler Fließ。ベルリンのReinickendorf地区にある小川である。

小川というと聞こえはいいが、そのイメージから連想するような爽やかな場所ではない。決して悪い場所ではないけれど、爽やかなイメージで行くとちょっと違うので、ガッカリすること間違いない(笑)。

Tegeler Fließは、ベルリンから少し北のブランデンブルク州のBasdorfやBahrenbruchから始まり、テーゲル湖に流れる、全長30.4kmの小さな川である。

Von A. Fiedler - Eigenes Werk, CC BY-SA 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2094778

流れは、ほぼ流れていないぐらいのスピードである。水面を見るとほぼ止まっているし、逆流することもある(Spreeも逆流するし、この辺りでは普通のことなのだと思う)。これは標高差がほとんどないからだ。源流付近のBasdorfの標高が59mで、テーゲル湖のあるTegelが52mだから、たった7mの差しかない。

これが小川の周りに沼地や湿地を作った。地面はジメジメし、水が所々で停滞し、夏場にはもちろん蚊が大量発生する。実に爽やかではない。

天気が良い日はまだマシなのだが、天気が悪いと、ただジメジメした憂鬱な暗い場所に見えても不思議はない。

前置きが長くなってしまったが、こんなTegeler Fließへ散歩に行ったら、もうとっくに居なくなっていると思っていた水牛がいたのである。

水牛は草を食べながらゆっくり移動する。とにかく大きい!

水牛は2015年から毎年、大体4月~10月あたりにここで放牧されている。場所はTegeler FließのHermsdorf側だ。どの区画で放牧されているかは、行ってみないと分からない。

この辺りの草地は1960年代まで農業で使われていたが、このような湿った地面では経済的に割に合わなくなり、その後は放置され、木質の植物が増えていった。そうすると、人間の手が入ることによって維持されていた環境に適応していた動植物が、逆に生存の危機に晒されるようになってしまったのだそう。

ここは青銅器時代の集落の跡が見つかるような、長く人間の手が入っていた場所である。それが近年になって手が入らなくなり、希少な動植物が生存の危機に晒されてることになってしまったわけだ。

しかし、湿地のズブズブとした地面では草刈り機を入れるのは無理だし、手作業でやるには人件費がかかりすぎる。そこで白羽の矢が立ったのが水牛だ。

水牛は、普通の牛が食べないような、この辺りに生えている葦などの固い植物も食べるし、沼地でも問題なく歩ける蹄を持っている。ベルリンでは、Südgeländeなど同様の目的で羊を入れている場所もあるけど、ここには水牛が最適だということになったらしい。

水牛はせっせと草を食べて生態系を維持し、住人はそんな水牛を見に散歩をしに来る。子供たちも大喜びしている。

そしてこれが、首都ベルリンの一風景というのが面白い。私はこんな風に多面性のあるベルリンが大好きだ。


この記事は別ブログに書いたものを移行したものです。

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