ザキオカに学ぶ、FRBが利下げに転じて1年後までに景気後退する確率は70%
米国の政策金利であるFF金利は、23年7月のFOMCで5.25%~5.5%に引き上げた後に12月のFOMCでも利上げ発表がなく、利上げは停止されたものと思われます。またFOMC経済見通しから、24年に利下げに転じることが確実視されています。
そこで気になるのが「米国が景気後退するのか」「株価は上がるのか下がるのか」です。その答えを金融ストラテジストの岡崎良介さんが過去10回のケースを分析し動画で公開しているので、この記事で紹介していきます。
最後の利上げから最初の利下げまでの過ごし方〜株・為替、過去10回の動きから検証 [岡崎良介の投資戦略]
利下げ後1年以内に景気後退する確率は70%
過去10回の最後の利上げから最初の利下げまでの期間
1974年04月25日~1974年12月09日 景気後退期1
1980年02月15日~1980年05月29日 景気後退期1
1981年05月05日~1981年11月02日 景気後退期1
1984年04月09日~1984年11月21日 なし
1989年02月14日~1990年12月19日 景気後退期2
1995年02月01日~1995年07月06日 なし
1997年03月25日~1998年09月29日 なし
2000年05月16日~2001年01月03日 景気後退期2
2006年06月29日~2007年09月18日 景気後退期2
2018年12月20日~2019年08月01日 景気後退期2
長くゼロ金利の時代が続く日本人の感覚からすると、米国では割と頻繫に利上げと利下げを行っていることが分かります。
さてここからが本題です。この10回の利上げ停止から利下げまでの期間は平均すると9.9ヶ月、景気後退したのが7回あります。このうち最後の利上げから利下げ開始までに景気後退したのが4回(景気後退期1)、利下げに転じてから1年以内に景気後退したのが3回(景気後退期2)、残りの3回は利下げ開始後1年以内に景気後退しませんでした。
景気後退期1 40%
景気後退期2 30%
景気後退なし 30%
ということは過去10回の景気後退確率は70%であり、油断は禁物です。
さて今回はどうなるのでしょうか? いずれにしてもSNSで飛び交っている「利下げすれば確実に景気後退する」あるいは「逆イールドになれば100%景気後退」というのは間違いだということになります。
利下げ開始までにS&P500が上がったのは7回
景気後退確率70%だと分かると身構えてしまいます。しかし、ザキオカの分析によると、意外にも最後の利上げを100とした場合に、最初の利下げまでにS&P500が上がったのは7回ありました。このうち97年3月からのケースではなんと最大50%も上昇しています。
10%超上昇したケース
89年2月~
97年3月~
06年6月~
株価が戻らなかったケース
74年2月~
81年3月~
00年5月~
今回もいまのところ100を超えて推移していて、S&P500については高値を更新しそうです。
ちなみにザキオカの分析によると、大型が良いとか、小型が良いなどのパターンはないそうです。このあたりはいろいろなことを言う人が居ますが、「エッジが効いたことはせずに、普通にしているのが良い」とザキオカは言っています。景気後退確率が高まってから、株のウエイトを下げるなり、不況に強い銘柄に入れ替えるなどをしても遅くはなさそうです。
10%以上の円高は過去10回中2回のみ
最後に為替についてもザキオカが意外な答えを示してくれています。
米国が利下げに転じれば当然のように円高に振れそうですが、実は意外にも最後の利上げ時を100として、10%以上の円高に振れたのは過去10回中2回のみでした。
10%以上の円高になったケース
95年2月~
97年3月~
利下げすればドル安になりそうですが、実はそうではないということです。「なんらかのゲームチェンジが起きている、ドルの強さは何かしら残る」とザキオカは結論づけています。ちなみに97年は日本で金融危機があった年、95年は阪神淡路大震災やオウム真理教事件があり日本が混乱した年です。この特殊事情の2回を除けば、意外とドルが強かったのが事実です。
なお今回は12月21日時点で1ドル142円であり、まだ7月のスタート地点を割っていません。つまり実際には円安が一服しただけで、円高になったわけではないということです。
円高に振れれば日本株には逆風になりますが、過去のケースを見れば極端な円高に振れる確率は低いというのが結論です。
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