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渡る中国にも鬼はなし(56/67)

第6章 中国第5日目 昆明 
日本料理


 1時間ほど見て回るとお昼まで30分になりました。日本語の分かるお嬢さんには心に決めたホテルがあったようです。何か言いにくそうにしています。聞いてみるとこういうことでした。「日本料理結構高いんだけど、いいですか?」「どれくらい」と聞くと「4人だと、大体6千円位」と言うのです。4人で6千円という金額は日本の標準的な値段です。しかし、その値段は彼女たちの月収に相当しますから、きっと気にしてくれたのでしょう。

 こういう時、ほぼ100%、日本人男性は見栄を張ります。私も当然「全然、問題じゃないよ」などと2人のお嬢さんの前で言いました。そのホテルの場所を聞くと、この公園から歩いていけるということでしたので、4人で公園を出て、歩き始めました。道は結構広くて、両側には歩道もあります。しかし、彼女たちもそうですし、大半の中国人にとって道の両側2メートルほどの幅は自転車、バイク、歩行者が通っていいものと決めているようです。彼女たちにとって道の両側は歩道なのです。

 車いすに座っていると、目の高さと同じところに車のヘッドライトが見えます。特に目線の低い私にとっては、かなり刺激的な光景ですが、お嬢さん達は平気です。いつの間にか母と日本語の分かるお嬢さんとは手をつないで歩いていました。車イスの私と英語の分かるお嬢さんが手をつなぐということは、市民友好交流訪中団員としてはもっとも必要なことではないか、いやそうに違いないと私は思ったのですが、あいにく、そのお嬢さんの手は私の車イスのグリップを握っていますし、一方私は、後ろの方まで手を伸ばすという理由がありませんでしたので、この友好交流はできなかったことをご報告させて頂きます。

 そうこうしている内に、ホテルの前に来ました。このホテルは5つ星だといいます。私たちが泊まっているホテルが4つ星ですから、きっと豪華なホテルなのでしょう。エレベーターで上に上がります。「都」と書かれた日本料理屋に入りました。ここが日本語が分かるお嬢さんが来てみたかった料理屋のようです。中は日本のこざっぱりした寿司屋の雰囲気で、テーブル席が10卓ほどあり、中央に生け簀があります。

 私たち4人はまずメニューを眺めました。メニューは英語と日本語で書かれていて料金のみ人民元で書いてあります。私と母にはその料理の内容が即分かったのですが、お嬢さん達にはそのメニューからは内容が分かりません。お店の若い女店員さんにその料理の内容を聞いていますが、女店員も良く知らないようで、今度は店の奧に聞きに引っ込んでしまいました。

 結局あれやこれやと品定めをして、日本語の分かるお嬢さんが焼き肉定食、もう1人のお嬢さんが親子丼ということになりました。私と母は「寿司の盛り合わせ」です。寿司を勧めたのですが、トマト、きゅうりさえ煮て食べる食文化に育った中国人のお嬢さん達にとって、生のものを食べるというのはかなりの勇気がいるみたいでした。この日本料理店はけっして肝試しの店ではありませんでしたので、それほど強く勧めませんでした。

 出された寿司はネタはまぁまぁ、握り方もしっかりとしているのですが、ご飯がいけません。ぱさぱさの味のないお米です。焼き肉定食を頼んだお嬢さんはおいしそうに食べているのに引き替え、もう1人の女性はなんだかおっかなびっくりです。とうとう1口2口食べただけで、止めてしまいました。聞くと「お肉が…」ということでした。英語でチキン(ニワトリ)と書いてあったので、問題ないと思ったのですが、駄目でした。結局4人でこれだけ食べて全部で360元(4680円)でした。

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