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祈りにも似た自己療養

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書くことで、自分の輪郭を保とうとする私がいます。
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#言葉

君の誕生日に思うこと

君っていうのはもちろん、今からこれを読む君のことだ。 21回目「誕生日って、そんなにおめでたいもんかな」 帰り道。だって大人になんかなりたくないし~、と笑う友達のその一言が妙に心に引っかかった。たしかにーと返しつつ、万国共通で”うれしい日”なんだと相場が決まっている年に一度の誕生日の正体を、私は分からずにいた。 たしかに、私たちは大人になることに、私たちを大人へと押しやってしまう時間の流れに、抗うことを夢に見た。朝は迎えたくなくて、遮光カーテンの隙間からさしこむ朝日を無

生活と行間

時代の隙間に必ず文学が存在している。その膨大さを目の前にすると、いつだって私は死んでしまいたいと思う。 図書館にいるとお腹が痛い、文学に生かされていると信じていたかった。言葉の表面を覆う綺麗な上澄みに騙されていた。生活はもっと生々しくて凶暴だったよ。効かない鎮痛剤とか、クレジットカードの明細とか、遠い国の痛ましいニュースとか、茶葉をケチった薄い紅茶とかで、日々は出来てる。誰かの唯一無二になれないのなら、新明解国語辞典のいかにも狭そうなあの行間に身をうずめてしまいたいな。辞書の

いつかの貴方へ

殺人ウイルスがアルバイト先をとうとう休業に追い込んでしまい、この週末急にぽっかりと時間が出来た。 娯楽にどうも手が付かなかった。本も読めなかったし、映画もアニメも観続けられなかった、音楽だけを聞き流しながら、のらりくらりと夜までぼんやり過ごす。 夜になって急に、部屋の掃除を始めた。 どうでも良いけれど、掃除って然るべき時に出来ない。日中どんなに時間があっても、わたしはいつだって夜中に、ひとりこそこそと掃除をする習性がある。おかしい。 大学の書類やクレジットカードの明細や

理由とかそんな大層なもの、

無いんだよ別に。 写真を撮るにつけてもそう。 以前のわたしは、何を始めようが終わらせようが、何を好きになろうが嫌いになろうが、そこに当たり前に理由があると思ってた。だって、そう教わったんだもの。 写真を撮る理由を、このnoteに書き並べてみたことすらある。けれどもそんな大層なものを常に抱えている器用さを、わたしは持ち合わせていない。 年越しと私、撮る理由。|月嶋 真昼 @noontime_moon #note https://note.com/noontime_moon/

そんなバカな、みたいな安心

2019年、師走に入った頃だと思う。 その年の4月に出会った、まだ知り合ってから1年も経たない友人と、寒い夜、おでん屋さんで泣いてた。 嘘みたいだけど、ほんとの話なんだよこれ。 泣きながら、 「わたし、あんたに会えて仲良くなれてすごく嬉しいんだよ」 って。バカなんじゃないの。いや、間違いなくバカなんだけど。まあもう少し、この戯言を聞いてやって下さい。 話は2016年に遡る。 高校1年生、出席番号順に座ったときの後ろ席の男の子と、私は仲良くなりたかった。細っこいからだの、頭の

熱帯夜

気温の高い夏には血圧が下がるものらしい。死ぬほど暑い夏の盛りにそれを聞いた時は「だから何なの」と反抗期の小学生みたいなことしか思わなかったけれど、秋が少しずつ顔を覗かせて、涼やかな風に吹かれて脳みその中にこもっていた熱が引くと、それは至極当たり前であることに気付いた。体温を下げようとして血管が拡張するのだ。なるほど、もともと血圧の低い私の血圧も、さらに下がる訳である。 そして今年も漏れなく暑すぎるこの東京で、私は低血圧による目眩でふわふわする頭を持ち上げ、明るくってぴかぴか

空気のような愛を、

子どもの頃のお気に入りの遊びは、開け放した窓から吹き込む風に膨らむカーテンの裾に、ぺたんと座り込むこと。 レースのカーテンが私のからだを撫でるのが気持ち良くって、好きだった。吹き込む風が寄せては引いて、当時行ったことのなかった海を想った。6歳のちいさな肺いっぱいに風を吸い込んではそれを吐き、レースの影を手で掬い、風のにおいで鼻腔を満たし、木漏れ日がきらきらさんざめくのを眺め、時折カーテンのお腹をくぐり抜けて外に出て庭の芝生の緑に触れた。 私の持つなかで、いちばん透明な記憶であ

虚(がらんどう)な言葉の話 

私たちは言葉を並べて意思疎通をし、 相手のことを知り、 自分の中の感情になまえを付け、 心に溜まるモノ、意思と意志、感情、思慮、思考、、、、、それら全てを言葉によって消化しています。 辞書を捲れば、言葉が意味を従えて並んでいるように、私とあなたの間にある言葉たちは、それぞれ共通の、全く同じ意味を抱えてそこにあります。 私の「嬉しい」とあなたの「嬉しい」 私の「悲しい」とあなたの「悲しい」 私の「綺麗」とあなたの「綺麗」 ほら、書いてみたら全く一緒だ、 寸分違わず同じ

年越しと私、撮る理由。

毎年毎年、年を越しても何も変わらない自分に苛つくから冬休みは好きじゃない。 卒業したり入学したり、進級したり部活を辞めたり、環境が変わったところで (自分で無理やり変えたところで) 自分は何も変わらなくて、そういう自分が大嫌いなまま、もう18になるだなんて信じたくない。 時間なんて止まればいいのに。 そんなことを思っていたら、写真を好きになった理由が分かった気がしました。 この世界は美しいもので溢れているのに、わたしの心はスプーンひと匙分の感情しか乗せきれま