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下剤が手放せない女の話。②

前回の話↓↓↓

前回の話を読んでくださった方々、ありがとうございます。
今回はその続き、というか手放せなくなった理由を少し。

「痩せたら可愛いんだから」
小さい頃から同年代の子たちに比べ少しふっくらしていた私はずっと母からこう言われていた。
今思えばこの言葉に少しずつ心が傷ついていたんだと思う。
だけど小さい頃の、こう言われ出した頃の私は実はこれを褒め言葉だと思っていたし、冗談くらいに捉えていた。
「えへへ、でも今の私も可愛いでしょ?」
そう返せるくらいにはポジティブだったし能天気だったし、1番は見た目に興味がなかった。

けど数年経ち、性格に変化をもたらす出来事があった。
都会に引っ越した小学校中学年くらいの頃、私の態度にも原因があったのだろう、いじめを受けるようになった。
ゴリラって呼ばれて泣いたあの頃。
体育の授業がサッカーだったある日、クラスの人気者でサッカークラブに入ってる男の子とほか数人とボールの取り合いになった時に誤ってその子のスネを蹴ってしまった。何度も謝った。でも周りが許さなかった。それからエスカレートしたいじめ。
これは親にも言ってない、学校内で収まったお話。
でもその辺から私はだんだん卑屈になったように思う。

そうやって卑屈になっていった私はいつからか母の「痩せたら可愛いんだから」が嫌になっていった。
それでも「うん、そう…かな?頑張ってはみてるんだけど。」そう返していた。
内心は「痩せたからって可愛くなるわけないじゃない」そう思っていた。
ただこの「痩せたからって-」には根拠がある。
158cmの適正体重である54.9キロを下回っていた時でさえ母には「痩せたら可愛いんだから」と言われていた。
つまりずっと不細工なのだ。痩せてようと痩せてなかろうと不細工には変わりないのだ。低体重にでもなれば可愛くなるというのか。否、細いだけの不細工でしかない。

さて。昔話をしすぎた。
下剤を手放せなくなったのはここ最近なので一気に時を進めて下剤を飲み始めた頃に。
相変わらず「痩せたら-」と言われていた25の頃。
同棲していた彼と別れ、引越し、転職したことを報告した。
そしたら次の母の口癖は「自分を磨きなさい」に変わった。
性格・美容・知識その他全てをひっくるめるようになった。
25だから、そろそろ落ち着いて欲しいとか1人なら1人で生きる術を持って欲しいとか、そういう意味がこもっていたように思う。
ただその頃私は少し病んでいてとても自分を磨く余裕なんてなかった。生きていたくなかった。
そんな状態の私にかけられる「自分を磨かないといい人とは巡り合わない、自分を磨きなさい」

実家に帰る度に「太った?」
実家で着替える途中で「腹が出てる」「太って見える」
男関係の話で「痩せたら可愛いんだから」「自分を磨かないと-」

そしてご飯が食べれなくなった。
けれど一時的なもので自宅に戻れば普通にご飯は食べられた。
けれど頭の中でぐるぐると回る痩せたら、の言葉。
それも落ち着きしばらくした頃、同僚とご飯に行った。
食べすぎたねーと話しながら自宅に戻り久々に体重計に乗った。
ストレスもあって食べすぎていたのは自覚していた。表示されたのは過去最高の体重。
さすがにやばいと思った。
どうにかしようと思って手に取ったのは下剤。
3錠飲んで就寝。
翌日、ぎゅるぎゅるとなるお腹を抱えてトイレに駆け込む。出てきて体重をはかれば昨夜から2キロも落ちていた。

最初はそういう食べすぎた日だけだった。食べすぎた日は胃薬と下剤が手放せなかった。

ある日新しい職場で健康診断があった。
「少し痩せましょうか。」と言われた。この頃はさすがに痩せないといけない自覚はあったのですんなりと受け入れた。
ただ追い討ちは仕事が結構体力を使うものでもあるため、体力のない私は周りの足を引っ張っていて、先輩から痩せろって言われた事。あとは私が到達するだけの基準に「全員到達できるまで続ける」と。

痩せなきゃ。体力つけなきゃ。
何をしていてもそのことが頭から離れない。
ご飯、食べたくない。けれど食べないと体力が持たない。次第に食べても吐くようになった。これじゃだめだ食べてないのと一緒だ。
痩せなきゃ…。
後輩が入ってきた。体育会系の部活出身で全国区だったらしい。後輩の方が体力がある。
新卒で体力のある1年目と年増で体力のない2年目。どう考えても後輩の方が可愛がられる。
職場との相性が悪いのは分かっているがこのコロナ禍、辞める決断がなかなかできない。
ただこの職場にいる以上迷惑は極力かけたくは無い。
痩せないと…。

そして休前日、次の日が休みならお腹が痛くても職場に迷惑はかからない。そう思った私はまた下剤に手を伸ばした。
次の日、出した後に体重が減っているのを見て安心した。
休前日の恒例になった。

しばらくして、久々に実家に帰った。前回帰った時よりも5キロほど痩せた。さすがに太ったとは言われないだろう。

実家に帰って母と少し話して間が空いて、一言。

「太った?」

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