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君と僕とで描く未来【連載小説No.1-1】

未来の僕達は何をしている?
誰にも分からないこの問いの答えを僕達は探していく。

「澄み渡る空気を吸いながらのランニングはとても気持ちいい。」
朝5時半、この街で1番大きな川を渡る橋の上を駆け抜けながら悟(さとる)は呟いた。
「夜中に車が通らなくなって排気ガスがどこかへ流れて一帯の空気がリセットされた気がする。だから朝の空気は美味しく感じるんだよ。自論だけど。」
「ああそれ俺も思ってた。夜はまだ空気が入れ替わってないんだよな。だから朝のランニングが一番好きなんだ。」
隣を自転車で走る友人の自論に同調しながら少しずつペースを上げていく。
総計2時間。インターバルを挟みながら朝の日課を終わらせた。
別に陸上部という訳でもない。それどころか今まで部活に入ったことはない。ただ、趣味で、習慣で走っている。雨の日も雪の日も毎朝5時から7時までをコースは適当にその日の気分で決めて。
そんな悟の隣を自転車で走る友人の名前は翔悟(しょうご)。名前の漢字が一緒という在り来りなきっかけで仲良くなった小学校の頃からの悟の友人である。
悟の影響か翔悟も部活に入ったことは無い。ただ毎日、文句も言わずに悟の朝のランニングについてくる。翔悟が違うのは気分によって自転車かランニングか変えてくるところだ。最初の頃はついてこなくてもいいのに、と悟も言っていたのだが朝動くと気分がいいんだ、と毎日きっちりついてくる翔悟に根負けし、どんなときも一緒に走っている。

「明日はどうしても行けないんだ。」
翔悟が言う。
「初めてじゃないか、どうしたんだよ。」
翔悟からの初めての断りに戸惑いを隠せない悟は聞き返した。
「いや、ちょっと…受験がさ、迫っているだろ?俺、どうしても京大に行きたいんだ。でも俺は悟と違って文武両道って訳じゃなくてどちらも平凡だから…。これから、のために今を犠牲にするのは心苦しいけど俺にとってはこれからも大事なんだ。」
ああそうか、と悟は納得した。常に一緒だからと言って成績や体の仕上がりまで一緒になるわけが無い。
悟は比較的レベルの高いこの学校で5番以内を逃したことがないし運動も各部活から勧誘を受けるほどにはできる。
それに比べると翔悟はこの高校も何とか滑り込んで合格し、その後は頑張って中間くらいの位置まで押し上げてきたが京大を目標とするとなると今ひとつ届かない。運動に関しては悟と走っているだけあって走ることに関してはそれなりだがほかはからっきし。毎日一緒に走っている悟ですらよく俺についてこれるな、と感心する程である。
そんな翔悟が悟との朝のランニングを諦めてまで京大に受かりたいと言う。友人としては応援しないわけが無い。
「いいんだ。頑張れよ。応援する。それにそういうことなら俺が勉強手伝ってやれるぜ?一緒に京大行こうぜ。」
悟は翔悟が京大を目指すと聞いて少し舞い上がっていた。これからも一緒にいられるんだ、と。
「いや、勉強は…いいよ、悟と一緒だと怠けそうだ。」
「おいおい、この俺が怠けさせると思うか?俺が一緒なんだ。何がなんでも京大行くぞ。これから放課後は翔悟の家で勉強会だ。」
「はは、ありがとう。」
悟は翔悟が悟の提案に喜ぶと思っていた。しかし翔悟から返ってきたのは乾いたような、でもどこか震えたような声だった。
「どうした?なにかあったのか?」
異変に気づいた悟は翔悟の顔を覗き込んだ。


今日はここまで。
続き【No.1-2】は明日出す予定です。
不定期にはなると思いますが1回1000字-1500字程度で区切りをつけて連載していこうと思うのでどうかこれからよろしくお願い致します。
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誤字脱字に気づいた場合は教えて下さると大変助かります。

ここまで読んでいただきありがとうございます🌟

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