夫氏が小説を書き始めたようです⑤(前編)

夫氏「今回は長いから前編と後編に分けるぞ!」
ワイ「りょ」(というわけで前編後編に分かれます)


第五章 カミングアウト

二回目のデート当日を迎えた。

二回も告白のチャンスを潰しているから、さすがに今回こそは思いを伝えるぞ。と意気込みながら、待ち合わせ場所であの娘を待つ駅へと向かう。

今回は、あの娘の方が早くに駅で待っていてくれた。

「ごめん。待たせちゃって。」

「ええよ。地元やし、うちが先についてても当たり前やわ。」

あの娘を前にして、告白の事ばかりが頭によぎる。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずかあの娘はこう言う。

「自転車置いてきていい?」

「え、あうん。自転車で来たんだ。自転車置いてから、この辺散策しようか。」

そして、あの娘は自転車置き場に自転車を置いて、ぶらぶらと散策をはじめる。

それにしても、人も賑わっているのに緑もあってあの娘の地元は良い所だよな。と感心しながらあの娘と散策を続けた。

「今日は何かしたいことある?」
あの娘は質問をした。

僕の内心はどのタイミングで告白するかというよこしまな考えでいっぱいだった。それに、あの娘と居られるのであれば何をしていても楽しいとさえ思えたから特別要望は無かった。

「とりあえず、何か食べる?」と訊いてみる。

「じゃあソフトクリームでも食べようか。」とあの娘はソフトクリームが売られている売店前まで案内してくれた。

「ここは僕が出すよ。」

「良いよ。この間奢ってもらったし今回は出すよ。」

「こっちこそ、色々と案内してもらっているし、僕に出させて。」

そして、ソフトクリームを食べ終え、しばらく散策をしてすることが無くなったところで、あの娘がとんでもないことを口にする。

「せっかくだったら、うち来る?」

僕は思わず耳を疑った。
年頃の男女なんだし、さすがに警戒をした方が良いのではないのだろうか。と思いながらも、せっかくの好意なので断るのも悪いと思いこう答える。
「ご家族の方に迷惑じゃないならお願いします。」と、言ったが、内心心臓バクバクで居てもたっても居られない状態で、告白のことが頭からぶっ飛んでいった。

そして、あの娘の家へ向かう道中も会話は続くがまったく頭に入ってこなかった。

「着いたよ。」

「あ着いたの?入って大丈夫?」

「母さんに言ってくるから少し待ってて。」

待つこと数分。

「入って、入って。」

「おじゃまします。」

リビングにはお母さまが居て、軽く挨拶をする。
そして、緊張しながら、あの娘の部屋へ足を運ぶ。
マンガやアニメなどで良く女の子っぽい部屋とか表現されるが、あの娘の部屋はそんなメルヘンチックな装飾も無く、カジュアルな感じで整ってあった。

「あたりを見回しても何も面白い物は無いよ。」とあの娘は言う。

「女の子の部屋にあがらせてもらうことが初めてだから、緊張しちゃってつい。ごめん。」

「良いよ。謝らなくても。あ、ちょっと待ってて、お菓子と飲み物持ってくるから。」

「うん。」
そして、一人になってふと思い出す。
告白のことを思い出して、一人頭を抱える。
そうこうしている間に、あの娘が戻ってきた。

「お待たせ。」

「ありがとう。」そう言ってお菓子を口にしながら、どうにか場つなぎの会話をしないとと思いこう続ける。
「そういえば、家では普段何しているの?」

「絵を描いたり、音楽聞いたりかな。」

「へぇそうなんだ。音楽はどんなの聴くの?」

「aikoさんとか」

「僕の親も一時期聞いてたは。他には?」

「ヤイコさんとかも聞くかな?」

「それもめちゃくちゃ聞いてた。音楽の趣味は結構合うかも。」

「そうかもしれへんな。」

「ちなみに、絵はどんなの描くの?」
少し、間があったような気はしたが、あの娘はこう返す。
「ポケモンとかヨッシーとかが多いかな。」

「ポケモン描くんだ。小学生の時は良く僕も描いてた。そういえば、僕がグループから離れる前に研究室で、ポケモンの話してたことあったよな。」

「そんなんしてたっけ?」

「うん。メタモンの話が印象的過ぎて忘れるわけないよ。メタモンは繁殖させる物と言ってて分かってんなと思ったもん。」

「確かに言うてたなそんなこと。誰も反応してくれてなかったから聞き流されている物だと思ってた。」

「こんなインパクトあるセリフを女の子が言ったら忘れろと言われても、忘れられないと思う。」

「そんなものかな。」

「そんなものだと思う。もしよかったら、描いた絵見せてもらってもいい?」

「良いよ。」

「上手いな。僕は上手に描けないから羨ましい。」

「そうかな?(もしかしたら、あの人ならうちの趣味を理解してくれるかもわからへん。)」
「なあ、もしよかったら最近書いた絵も見てみる?」

「うん。どんな絵なん?」

「これやけど・・・」
そう言って、見せてくれた絵は、某漫画のキャラクターをデフォルメ擬獣化された絵だった。

「これめっちゃ可愛い。○○のオマージュ?」

「え、うん。そう。」
「やっぱり絵上手いね。」

「(あれこんな反応してくれるんや。もしかしたら、うちの趣味を受け入れてくれるかな?)」

あの娘はもじもじしながら言った。
「実はうち腐女子やねん。」

「ふじょし?」
そういえば、高校の時に、クラスの子からこんなワードを聞いたことがあったが、それが何を指すのか意味を知らかった。

「ええっと、恥ずかしいねんけど、男同士のイチャコラが好きやねん。」

「へぇそうなんだ。そういった趣味があっても良いと思う。」

「(あれあれ、めっちゃ普通に接してくれてんねんけど、普通否定されて拒絶されると思った。)おかしいと思わへんの?」

「だって趣味をとやかく言うのって違うくない?他人がその人の趣味や趣向を奪う権利なんて無いんだから思う存分没頭したらいいんんじゃないの?」

あれあっさり受け入れてくれた。
「実は他にもいろいろと描いてて、こんなのもあるねん。」とあの娘は隠していた絵を次々と見せてくれた。

きっと、誰にも言えなくて辛かったんだろうな。僕だけでもあの娘の理解者で居てあげよう。と思いながら、告白のことを忘れていたのだった。

(後編に続く!)


ワイ「ちょいちょいワイ視点が入っててわらう(はずかしい)」

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