夫氏が小説を書き始めたようです⑤(後編)

前回の続きです。果たして…


話が弾み、二人の時間は過ぎていき、あの娘が呼ばれて席を外す。
そして戻ってくると、こう言ってきた。
「晩ごはん食べていきなよ。」

「いやいや悪いよ。」

「もう作ってるらしいから、うちもちょっと手伝ってくる。」

「え、ちょっと待って女の子の部屋に一人にしないで。」

マンガやアニメならここで女の子の部屋を物色などするのだろうが、そんな意気地がどこにもなかったどころか、その発想にも及ばなかった。

そうこうしているうちに、あの娘が部屋へ戻ってきた。
「準備できたらから、下降りよう。」

「うん。」そう言って、あの娘と食卓に着く。
食卓にはなんと、お父様も居て借りてきた猫状態になる。

お父様から何回か質問を受けたが緊張のあまり、なんと答えたか覚えていなかった。

晩ごはんも食べ終えて、少し休憩したら、良い時間になったので駅まで送ってもらうことになった。
普通逆だよな。夜なので街灯はあるといっても僕を送った後、この暗い中一人で帰らすことの方が心配だった。

「送ってくれるのはありがたいけど、帰り道一人で帰らないといけなくなるから、送ってもらわなくていいよ。道覚えているから、一人で帰れるよ。」

「高校時代とか普通に夜道も帰ってたから大丈夫。それに歩きとちゃうし、自転車で帰るから大丈夫。」

「そこまで言うならお願いします。」
本当は、少しでも一緒に居たかったことは内緒である。

駅までの道中星空がただただ綺麗だったことだけ覚えている。

「今日はありがとう。晩ごはんまでご馳走になって。」

「母さん喜んでたし、また来て言うとったからまた晩ごはん食べにきたらええよ。」

「ありがとう。ご迷惑でないならまたお願いします。と伝えておいて。」

「うん。もうすぐ電車くるみたいやで。」

「じゃあそろそろ行くね。気をつけて帰ってね。」

「自転車あるし大丈夫やろ。」

「うん。出来るだけ明るい道を帰ってね。本当に今日はありがとう。楽しかった。またメールするね。」

「じゃあ。気をつけて。」

あの娘の見送りを後に電車に乗り込んだ。
それにしても、まさかあの娘の家に行くことになろうとは思わなかった。
そして、電車に乗ってから告白の事を思い出す。
今日も告白が出来なかったと、落胆しながらあの娘にメールを送る。

家に戻り、あの娘とのメールも数通やりとりを終えて、自分の気持ちの変化に気づいた。
あの娘は本来人に言いにくいであろう、秘密を僕に暴露してくれたんだから僕の気持ちも暴露しても良いのでないだろうか?
そう思った瞬間、メールではなく電話をかけた。
タイミングとか考えてたら永遠にチャンスが来ない気がするから、今伝えよう。
そう思いながら、電話のコール音が続き留守番電話になった。
ええ、出てくれない。そう思いながらどうしようかと悩んでいたら、あの娘からメールが届いた。

「ごめん。電話は無理。」

一瞬しゅんとなったが、電話がダメならメールで伝えよう。と自分の想いをメールに綴った。

「今日色々と人には言いにくいようなことを僕に暴露してくれたように、僕も伝えておきたいことがある。君のことがずっと前から好きでした。付き合ってください。」

この文章を見てあの娘はどんなことを思うだろうかと考えたが、気持ちを抑えることができないところまできていたので、メールの送信ボタンを押していた。

そして、返信を待つこと数分。メールの着信音ではなく、電話の着信音がなった。
あの娘からだった。
慌てて、電話に出た。

「もしもし。」

「もしもし。あの、ええっと、メールありがとう。そうなんじゃないかと思ってた。」

「うん。」

「うちな、好きって気持ちがようわからんねん。好きでいてくれることはありがたいけど、うちはまだ好きって気持ちがない。」

あれこれって振られるパターン?
「うん・・・」

「やけど、嫌いではないし、一緒にいると楽しいからこんなうちでよければお願いします。」

今お願いしますって言ったよね。
よっしゃーとガッツポーズ。

「こちらこそよろしくお願いします。」
とりあえず、電話越しにペコペコしている。

「うち、付き合ったことないから、どんなことしたらええのか分からん。」

「僕も無いからお互い様だね。そういえば、もうすぐ誕生日だしどこかおでかけしない?」

「あ、ごめんバイト入っている。」

「え?じゃあ次の休日いつ?」

「〇日」

「じゃあその日にデートしよう。」

「良いよ。」

「10時に□□駅集合にしようか。」

「分かった。今日は夜遅いしもう寝るね。お休み。」

「お休み。」

こうして、お互いに初めての彼氏彼女が出来たのだった。

恋愛は惚れた方が負けと言うが、僕は負けたとか勝ったとかはどうでもよかった。
初めての彼女が出来たことがただただ嬉しく思う。
仮にあの娘は僕のことをまだ好きだとは思っていなくとも、逆に惚れさせるぐらいに魅力的になってやればいいだけのことなのだから。
これからどのようなことが待ち構えているのか楽しみでならない。


やっと告白しましたね!!長らくお待たせ致しました!!(?)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?