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人を病気にする家

仕事柄他人(患者さん)の家に入ることが度々ある。

退院前に家屋評価をして本人の身体機能でも暮らしていけるよう福祉用具などの提案をするためだ。

具体的には戸建てなら玄関に置き型手すりを設置するとか、今までお布団を使ってきたけどベッドにしようとか、必要な福祉用具を検討するわけだ。

もともとバリアフリーのお宅だったり、身体機能が十分回復していて福祉用具の検討が必要ないケースでは家屋評価に行くことはないが、大抵は家の様子を見に行くことになる。

今回は狭小住宅。今までもいろんな狭小住宅を見てきたが、そういう家はとにかく物が多い。物に空間が占領されていて小さな家がさらに狭くなってしまう。

Bさんはコロナ罹患後に体の機能が低下したため入院したのだが、もともと間質性肺炎があったり心不全があったりで今現在も歩けない。何とか立ち上がれるようにはなったので車椅子に移ることは出来る。退院後は家に帰りたい(施設は嫌だ)と言うので家に帰ることになったが、自分で歩けないので車椅子を家に入れなければいけない。

Bさんのご主人に車椅子が入れられるよう片付けをお願いしておいたのだけど、果たして…。

物がとにかく多いそのお家の空気はどんよりしていた。昼間なのに真っ暗で、光がどこからも入ってこない。
玄関の横の壁は恐らく黴だろう。真っ黒だった。

ゴミではないのだろうけど、調味料やら洗剤やら中に何か入っているビニール袋やらが至るところに置かれ、積まれている。アルミホイルやラップが数十本シンクの上に置いてある。たぶん一生かかっても使いきれない量だ。 
もう家人も何がどれぐらいどこにあるかを把握できてないだろう。

どこからも光も風も入ってこないウチ。
空気が澱んだウチ。
暗いウチ。

家族の全員が病気ではないけれど、Bさんはなるべくして今の状態になったのではないか。
カビを吸い込んで肺に炎症が起きたのではないか。

普段いる環境はとても大切だ。

ここにあるものを全部捨てて光と風を通したい。最低限の清潔を保って生活できるようにしたい。

でもここはBさんのウチ。その環境を作ってきたのはBさんを含めた家族だ。

彼女の病室も物で溢れている。ベッドの上にたくさんのものを置いてしまう。私にはゴミにしか見えないものでも(汚れているペーパーとか)本人は捨てないで、と言う。
今使わないものでも手元に置きたがる。枕元に置きたがる。

それ(多すぎる物)がBさんを病気にしたかどうかはわからないけど、それも少しは関係していると思えて仕方ない。




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