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■指名手配


通報から一週間たっても犯人は依然逃走中。

ただ道を歩いていただけなのに、突然ぶつかってきた男はあたしをぶん殴った。

左頬は真っ赤に晴れて歯を二本失った。絶対に許さない。警察に電話をしても手掛かりがありません、とだけ。怒りで気を失いそうだ。

さっき殴られた後で必死に撮影した写真で作ったビラを街中に張り付けてきた。何もしない警察が悪い。あたしが必ずあいつを捕まえる。

一週間たってDMでメッセージをくれた人がいた。一度詳しく話したいので会えないか、ということでアルタ前で今日待ち合わせだ。

でも彼は時間になっても現れなかった。
私の服装を伝えたんだけれど、突然連絡がとれなくなったのだ。
望みを失い悲しい気持ちになった。

家までは電車で一駅なんだけれど悲しみを忘れたくてコンビニでチューハイを買った。飲みながら歩いて帰ろうと思った。

いつもは手を出さないストロングゼロのせいでふらつきながら自宅に到着し、ドアを開けた瞬間後頭部に鈍い痛みが走った。あたしは倒れて、死んだ。

瞳にはあの男が映っていた。

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