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公務員のキャリアをアップデートする会開催報告:官公庁出身経営者の軌跡と公務員のパラレルキャリア

こんにちは(^^)

2019年8月17日(土)に「公務員のキャリアをアップデートする会」を開催いたしました。

場所は、台東区浅草橋にある世界と地方を結ぶゲストハウス「リトルジャパン

最近は、ゲストハウス以外にも、台東区と共同で在住外国人向けのグローバルコミュニティカフェ事業も行なっており、多様な場作りをしている場所です。

そして、「公務員のキャリアをアップデートする会」は、今回で3回目。

1回目2回目の様子はこちら。

「公のために務める」のが公務員であれば、「公のために務める」形は、今の職場で良い成果を出すことであったり、今の職場で働きながら別の公の機関でも働くことであったり、あるいは別の組織に転職したり、起業をすることなど様々な形があろうと思います。

そこで、当会では「公務員のパラレルキャリア」という概念を『様々な形で「公のために務めること」を実践するキャリア』と広く定義して、そのようなキャリアをお持ちの方をお招きして、公務員の多様なキャリアの可能性について考えていくものです。

今回は、元東京都職員で、現在は「株式会社アトムズ」代表取締役の仁村大祐さんをお招きして、官公庁職員から起業家への転身の軌跡を伺い、公務員の多面的なキャリアの可能性についてお話いただきました。

仁村さんは、2002年に東京都庁でキャリアをスタートされ、2007年9月に退職後、コンサルティング会社で経営コンサルティング、M&A、上場支援などに携わり、2013年に、経営コンサルティング事業を行う株式会社アトムズを創業し、人事、経理、税務など幅広く企業の課題解決のお手伝いをされています。

株式会社アトムズ ホームページ
https://atmz.co.jp/

冒頭、仁村さんからは、今自分が行なっている事業コンセプトのお話がありました。

現在、ジャンルを絞らず経営のお手伝いをするコンサルティングをされていますが、これは自分自身として「これをやりたい」というものを定義づけていない影響が大きいとのことです。

裏を返せば、「なんでもやりたい」ということで、これを「苔のように広がっている会社であり、事業である」という表現をされていました。

次にキャリアスタートの都庁時代のお話。仁村さんが東京都に入庁された2002年は、石原都知事の時代。

最初に配属されたのが都税事務所の徴収課という部署。こちらは、税金の滞納整理ということで、自分の担当地区で税金を滞納している会社の社長のところに訪問をして、税金の納付を催告していくというもの。

非常にタフなお仕事ですが、こちらで多くの税金を滞納している会社の社長と触れ合ったことが、後々のビジネスで起業し顧客にコンサルする際に、「かつて都税事務所時代に担当していた会社のようにさせないように考える」ということにつながっているとのことです。

2年間の都税事務所配属ののちに、配属となったのが東京都主税局徴収部徴収指導課という部署。こちらは、都税の徴収率をあげるために都内各地にある都税事務所への徴収指導・支援を行いつつ、新たな徴収施策を立案するところです。

こちらで仁村さんが考案したのが、催告書を思い切り目立たせる「黄色い封筒」と自動車の「タイヤロック」

「黄色い封筒」は、租税催告書は今まで地味な封筒で気付きにくかった催告書について、目立たせる黄色い蛍光色の封筒に変更することで、まずは催告書に気づいてもらう工夫をするもの。

そして、もう一つは、車の差押えの滞納整理手法をより簡易な形で出来るように、車のタイヤをロックする機器を都内中小企業と共同で開発して、実施するもの。

特に、後段のタイヤロックについては、物理的に車を使用できなくする効果があるため、税金を滞納している人に対する効果も大きく、現在は、全国の多くの自治体が真似して実施しているヒット施策になっているようです。

自治体の施策が成功したかどうかの評価基準は、徴収施策であれば当然、徴収率が向上したということになりますが、「他の自治体が真似するほどの施策であるかどうか」も評価基準になり、これだけ多く自治体が真似したということは効果的な施策だったことを物語っています。

このように今まで誰も考案しなかったアイデアで徴収率を高める施策を次々と打ち出すことで、東京都の徴収率向上に貢献し、かつその施策が結果的に全国に広がっていったとのことです。

続いて配属になったのは、石原都知事が2期目の選挙公約で掲げた低所得者層に向けた「都民税軽減対策チーム」。

こちらでは、事業スキームの組立や実際に都民税(区民税)徴収に当たる区市町村との調整などを行なっていたとのことですが、税制上の「低所得者」について、フローの収入のみで捉えることは非常に難しく、かつシステム改修などを伴う区市町村との調整も難航したそうです。

その間、石原都知事が施策の方向性を転換し、税制上の施策ではなく、福祉・就労支援で低所得者対策を行うということとなり、こちらの「都民税軽減対策チーム」も解散することになったとのこと。

その間、時間もできたので、旅行先でみたヤマメが川から外の海に出てサクラマスとなって帰ってくる様を見たり(外の世界に出てみるのも1つの選択肢)、当時「役人廃業.com」という転職サイトを運営したエージェントの方と出会ううちに、好奇心から転職活動をしてみた結果、あれよという間に、決まってしまい経営コンサルティングの世界に飛び込むことになったとのことです。

↑↑垣根を超えるフットワークが軽すぎる(^^;!!

ただ、私の感想ですが、きっと公務員の世界でそれなりに結果を残していたからこそ、自分が民間の世界で通用するのか、という思いは徐々に大きくなってきたのではないかと思います。

むしろ、公務員で結果を残して、民間の世界でもキャリアを築いていくという垣根がもっと低くなることが、結果的に公務員のキャリア市場の流動化を促すのではないかと思います。

以来、仁村さんが経営コンサルティングの世界で10年以上、キャリアを築いてきたからこそ見えてきたのは、公務員でも民間でも仕事の本質は一緒であり、必要なのは「コミュニケーション能力」と「変化への対応力」ではないか。

むしろ、公務員は、「着実な業務遂行力」、「ドキュメント作成」、「調整力」、「組織の論理の本質への理解」を持っていることが大きな強みではないか、とのこと。

特に私が、こちらの話で印象が残ったのが、公務員と大企業との違いよりも、大企業とベンチャー企業との違いの方が大きく、公務員出身者であれば、その間を繋ぐための役割ができるのではないかという考え方です。

つまり、公務員は組織の中の論理を理解しているからこそ、大企業や役所と組むに当たって注意することや、意思決定のプロセスなどを、比較的規模が小さいベンチャー企業などに対して伝えることができるということ。これは、次に話が出てくる、ソーシャルベンチャーと言われる社会起業家達への支援にも繋がってくると思います。

現在、仁村さんは冒頭ご紹介した経営コンサル会社にて、顧客に必要なニーズを聞きだしながら、企業の人事労務、経理などのバックオフィス業務を全方位的に支援する事業を行なっております。

その中で、公務員よりも社会のことを考えている起業家(社会起業家)の人たちの支援もしており、支援されている社会起業的な会社として、心肺停止を防ぐ事業を行なっているCoaido株式会社さんや防災をもっと身近に感じるための事業を行なっている一般社団法人防災ガールさんなどがあるそうです。

こうした社会起業家達が、役所で共同的に取り組むに当たっての必要な手続きや視点について、当事者でなくても、友人くらいの立場で話ができる公務員の存在の必要性も感じており、社会起業家と公務員達が繋がる場づくりの必要性も感じているとのことです。

そこで、筆者自身も関わっているのですが、9月6日金曜日の夜に社会起業家×公務員との交流トークイベントを実施する予定のため、ご興味あればぜひ(^^)

以上、仁村さんからは、公務員から民間企業、そして起業家への転身したからこそ、見える視点や公務員の強みなどを色々とお話いただき、とても有意義な会となりました。

また、公務員や公務員以外の多くのキャリア意識の高い方々にご参加をいただきとても密度の濃い交流をさせていただくことができ、ありがとうございました。

また、今後も継続的に公務員の多様なキャリアを考えていく会を行なっていきたいと思います‼️


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