私の、あの頃。そして、あの頃の私へ。
映画『あの頃。』を観た衝動のまま殴り書いた、私と人生をともにしてきたアイドルたちとの、長い思い出話。
私の、あの頃。
本気で好きだったものは、体が憶えている。
冒頭、ツルギが初めてあややのミュージッククリップ集を再生したシーン。「♡桃色片想い♡」のMVが流れ始めた瞬間、わたしは一気に2002年にタイムスリップしていた。何度も何度も読み込んだ、会報の撮影レポート。いたずらばかりしてあややを怒らせる、ももぞうとピーコ。母親におねだりして買ってもらっていた、ティセラのシャンプー。それらの景色や色彩ひとつひとつが鮮明に思い出されて、スクリーンの中のツルギよりも先に、涙を流して泣いていた。
同世代が見たら懐かしさで卒倒しそうな、ティセラのシャンプー。
確かにあの頃、まわりの小学生はみんなモーニング娘。が好きだった。東京ビッグサイトまでハロプロキッズオーディションをこぞって受けに行ったし、駄菓子屋で買ったブロマイドやトレカを、時には喧嘩までしながら交換していた。そして当時の自分は、その中でもより高い熱量を持って好きだったんだと思う。
毎週かじりつくように見ていたハロモニ。
musix!、Mステ、うたばんやポップジャムなど、ビデオが擦り切れるまで見たその他の歌番組。
どうしようもなく憧れて誕生日におねだりした、ANGEL BLUEの洋服。
それらをかき集めてとびっきりのオシャレをして行った、コンサート。
小学生には少しドキドキした、アロハロシリーズ。
高橋愛ちゃんのアロハロ写真集。基本的にハワイで撮影が行われているので、「アロハロ」。
ぜんぶに大切な思い出があって、曲を聞いただけでそのジャケットやカップリング曲が浮かんでくる。各番組で着ていた衣装や、トーク内容も。そして当時自分に起きた出来事・景色・感情・着ていた服・考えていたことまで詳細に思い出せることに、映画を観ていて気が付いた。
よく人の記憶は音楽や匂いに結びつくというが、わたしの記憶は、間違いなくアイドルに紐付いている。
その一番強烈な体験が、ハロー!プロジェクトなのかもしれない。
そしてスクリーンの中の彼らは、あの頃のハロプロとそれを取り巻くファンたちには、今とはまた違った熱量と面白さがあったことを思い出させてくれた。全身に缶バッジを”装備した”オタク、今よりもっと普通にいたよなぁ。ウッキウキの笑顔で特攻服を着てたお兄さんたちもいた。劇中の、大学でロマモーを大合唱するシーンも、当時の謎の熱狂を思い出してめちゃくちゃに泣いてしまった。あとまさか「理解して!>女の子」が登場するとは思わなくて身じろいだし(当時お金がなくてCDセットは買えなかったけど、その分みんなのタイトルだけは何故かめちゃくちゃ暗記した)、「恋ING」は流れた3回とも、当たり前のようにイントロで号泣してしまった。発売当時は小学5年生で、ろくに好きな人もいなかったけれど
好きな人も出来なくて グルメ気取ってた時期もあった
の歌詞に「なるよね〜」って共感したりしてたなぁ。(嫌すぎる小学生)
この曲は当時からメロディーラインと歌詞が大好きで、TSUTAYAで借りたCDからMDにダビングした音源を聴き込んで、カップリングだけどカラオケでよく歌っていたのを覚えている。しかし、時を経てまたハロプロのコンサートに行ったりライブ動画を見るようになると、わたしだけの名曲だと思っていたこの曲を、さまざまなグループの後輩たちが歌い継いでいてものすごく驚いた。当時、所謂ファンサイトの掲示板には頻繁に書き込みをしていたけれど、不特定多数の情報が流れ込むようなSNSなんてなかったし、教室では番組でのビジュアルやキャラクターがどうのこうのという話が中心で、誰かと曲について語り合うことなんてなかった。だから隠れた名曲は、本当に自分の中での「隠れた」名曲で、大切に大切に聴いて、歌っていた。
そんな曲たちが時を超えて、新しいメンバーが、また新しい命を吹き込む。当時CDコンポでしか聞けなかった曲たちを、今応援している子たちのコンサートで見ることが出来る。こうやって、ひとつの曲、しかも本来だったら埋もれてしまうような昔のカップリング曲やアルバム曲にまで、どんどん大切な思い出が増えていくのが、ハロプロのいいところの一つだなと心から思う。
当時のコンサートは数えるほどしか行ったことなかったけれど、行けば周りのおじさんたちがいつも「見える?」と気を遣ってくれて、嫌な思いをしたことなんて一度もなかった。ただただ一緒に踊って、歌って、名前を呼んで、彼女たちの音楽を全身で楽しんだ。小学生も、おじさんも、同じように熱狂していた。それが本当に、楽しかった。
”辻加護”の加入からヒートアップした小学生たちが、少しずつハロプロから離れ始めたのは、6期メンバーが加入したころだったと思う。わたしもその頃からジャニーズとの兼ヲタを始めてしまったが、それでもまだファンクラブに入っていたし、毎日モーニング娘。の曲を熱唱していた。特に2003年〜2004年の楽曲たちは大好きで、今でも「シャボン玉」を初めて聞いた時の衝撃は忘れられない。カップリングの「涙にはしたくない」もまた、大好きな隠れた名曲だ。(どうしても、初めての海外旅行先だったイギリスの車中でしつこく聞きすぎて、親に怒られた思い出とセットになってしまうけれども)
結果的には、2007年のよっすぃー卒業とともに一旦離れてしまい、わたしの「あの頃」はそこで終わりを告げた。(結局2010年に℃-uteヲタとして舞い戻ったので、プラチナ期をまるまる見届けられていない、残念なハロオタになってしまった)
その記憶を、スクリーンの中の恋愛研究会。とともに辿りながら、ふと考える。わたしは今、「あの頃」ほど、ひとつひとつのコンテンツを大切に出来ているだろうか。端がボロボロになるほど会報を、衣装の順番を覚えるほどに写真集を、擦り切れるまで映像を、大切に見れているだろうか。大手のアイドルになればなるほど、溢れんばかりの供給が与えられる時代。開封するのに手一杯で、目を通していない会報も増えた。「消化」できていない映像や、一度読んだっきり「保存用」になってしまった雑誌も数え切れない。ちゃんと、好きなのに。きっとあの時と同じ気持ちで、好きなはずなのに。
今の私はちゃんと、アイドルに”熱狂”出来ているのだろうか。
ツルギのように、「今が一番楽しい」と、胸を張って笑えるのだろうか。
…と、ここまで書いたところで、突然デスクトップに現れた1本の通知。
【注】これはわたしが今モーレツに愛を注いでいるK-POPアイドル・SEVENTEENの、とある音楽特番に向けた練習風景を10分にまとめた動画である
記事の途中だけど、上がってしまったものは仕方ない(?)とYouTubeを開き、え?!?!となったシーンで止めて、スクショ撮って、Twitterにつぶやいて、巻き戻してもう一度見て、今度は笑ったシーンでスクショ撮って、Twitterにつぶやいて、同じように映像を見ている相互フォロワーのツイートにリプライして、忘れたくない場面を画面録画して、またTwitterにつぶやいて…を繰り返していたら。
なんと、2時間半も経っていました。(※動画は10分です)
えー、と……
あの頃の私へ
元気ですね?わたしも元気です。28才になりましたが、なんと今も元気にアイドルオタクをやっています。18才で結婚して、20才で子供産む!って息巻いてたのにね。あれから、たくさんのアイドルを好きになったよ。デビューしているジャニーズだけじゃなくて、ジャニーズJr.や、ジャニーズ以外の男性アイドル、なんとハロプロ以外の女性アイドルも好きになれたし、海の向こうのすごいアイドルにも出会ったよ。しかも、今はその海の向こう・韓国のアイドルたちを一番熱心に追いかけてるもんだから、誰よりわたし自身が驚いています。
これは後からわかったことなんだけど、実はわたしは飽き性で、あなたがあんなに好きだった嵐も、KAT-TUNも、いつか一番ではなくなってしまいます。それでもやりきったと言えるくらい頑張って応援したから、ひとつも悔いはないです。だから安心して、全力を注いで楽しんでね。だけどここでひとつ残念なお知らせをしておくと、メンバーの卒業や体制変更、そして解散が発表されるたびに世界の終わりのような気持ちになってしまうところは、今もまったく成長していません。変わっていくグループも、この世の終わりを感じてしまうあなたも。どんなに頑張って応援しても、お金を使っても、現場に通っても、悲しいものは悲しい。でも少しでも後悔したくないし、自分がやらなかったことが、彼や彼女が辞める理由につながってほしくないから。今もときどき悲しみや恐怖に耐えながら、全力でアイドルを愛しています。
そんなあなたに伝えたいことが、2つあります。
ひとつ。ハロプロは、今でも太陽みたいに輝いています。そしてわたしは結局ハロプロのメンバーにはなれなかったけれど、今でも一人のファンとして、ハロプロを愛しているよ。中学生だった辻ちゃんは母になり、加護ちゃんも母になり、愛ちゃんも結婚して、同い年で入ったのは結局2人だけで、どんどん年下のメンバーが増えて。そうやってモーニング娘。は途絶えることなく続いているし、今のメンバーも最高だから。きっとあの頃ほどの熱量ではないけれど、自分のペースで、走ったり休んだりしながら、ずっとハロプロの音楽とパフォーマンスを追いつづけています。だからあなたの人生は変わらずずっと、ハロプロとともにあります。今はそれがとても、幸せです。
もうひとつ。アイドルを好きでいることが、どんどん楽しくなります。世の中は便利になって、パソコンや携帯でたくさん映像が見られるようになりました。テレビ番組はだいぶ減っちゃうけど、その分ライブがたくさん開催されるようになるよ。大人になればなるほど自由にライブに行けるようになるし、何よりアイドルのおかげで大切な友達がたくさん出来ました。知り合って15年くらい経つ友達もいれば、10年近い付き合いの中で、毎週のように会ってアイドルの話をする友達もいます。大学でも、アイドルのおかげでかけがえのない仲間が出来たよ。そしてびっくりするかもしれないけど、お仕事でもアイドルに関わっていて、いろんなアイドルに振付をしています。いや、驚かないか。ずっとアイドル関係の仕事をするって、信じてたもんね。でも思ってたのとは少し違う形だから、がっかりしないでね。まだハロプロにしっかり関わるという目標は達成できていないけど、やり甲斐があってものすごく楽しいよ。
この先学校でも、職場でも、初めての場所でも。いつでもどこでも、アイドルがあなたと周りを繋いでくれます。そして、アイドルを通じて人と、世界と繋がれることは、何よりも楽しいです。思い返せばこの20年間ずっと、アイドルを好きでいて、楽しくない瞬間なんてなかった。どんなに実生活で苦しいことがあっても、アイドルを追いかけることは、いつでも自分を幸せにできる方法でした。まぁ、感情移入のしすぎで苦しいこともたくさんあったけど(笑)。
この先の人生、色んな人と出会って、色んなことがあります。
でも20年後のあなたも、大好きなアイドルの映像を熱心に繰り返し繰り返し見ているから。同じようにアイドルが大好きな友達と、毎日笑い合っているから。アイドルに関わる仕事を、続けられているから。
大丈夫、「今」が一番楽しいよ。
進むことも、戻ることも、留まることも、離れることも。
何も悪いことじゃないし、怖いことじゃない。
だから自信を持って、推しと過ごす「今」を楽しんでね。
20年後の、わたしより。
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