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コロナ記・その3

【発症4日目】

夜半、頭痛や喉の痛みで寝つけず、ようやく寝付いても眠りが浅くすぐに目覚めてしまう。
ほとんど眠った感もないまま、5時半にあきらめてカーテンを開け、朝の薬を飲むこととする。

ミルク味のパンをすこしかじる。
味覚はまだある。
身を起こすだけで重く、つらい。たったいま水の中からざぶりと生まれた人みたいだ。

ポケモンスリープが睡眠計測をするように言うが、頭が重くてする気になれず、放置。

薬を飲んですぐにまた横になり、念のため熱を測ると36.5℃。熱はもうないんだよな。
ものすごくだるいのと、船酔いのような気持ち悪さ。そして喉がおそろしく痛い。テレビを見たり動画を見ると頭痛がしてくるため、目は使わず、できれば目をつぶっていたい。かと言って眠り続けることもできないし、なにしてたらいいの。

そうだラジオを聴こうと思いつく。radikoをインストールしてたはず。
小学生の頃からニッポン放送っ子だったので、つい習慣でニッポン放送をつけてしまう。
聴き始めてみると、どうやら徳光和夫がしゃべってる。土曜の朝5時から「徳光和夫のとくモリ!歌謡サタデー」という番組をやってるみたいだ。こんな早朝にラジオ聴くなんていつぶりだろう。

徳光和夫っていま幾つくらいなんだろうな……さすがに少しフガフガしてるけど語彙力は健在だな……などと思いつつだるさの中でうとうとと聴き流していたところ、いきなり山川豊がゲストで登場。新曲「人生苦労坂」について語りだした。北島三郎が作詞をしてくれたこと、そして「人生は坂を一つ一つ登っていくようなものだ」「お前も人生色々なことがあっただろう」と熱く語ってくれたこと、「じんせ~ぇいぃ、くろうざか~」の「い」の部分をしっかり区切るようアドバイスを受けたこと……。

……わたしはいまいったい何を聴いているのだろう……山川豊と鳥羽一郎ってどう違うのだっけ……いやどうもなにも違う人だな……、もはや夢かまぼろしかの状態である。
こんな早朝に山川豊の話を聴くなんて普段ならまったくありえない世界線だ……とフラフラする頭で思っていたら、なんと、

「この番組は生放送でお送りしています」

と女性アナウンサーが言い出したのでめちゃめちゃびっくりした。
5時から、これを、生放送で!?
山川豊もこんな早朝にニッポン放送に出てるわけ!?

一気に目が覚める。

てっきり録音なのだろうと思って聴いていたら、まさかの生放送とは。
こんな早朝から働く徳光和夫と山川豊に対するリスペクトが湧きおこる。わたしなんてこんな状態でベッドで寝てるしかできないのに……。
(比較おかしいけど……)

午前中は、こんな感じでラジオを聴いたり、うとうとしたりしながら、おおむね「熱はないけど恐ろしく体がだるくて目をつぶって横になるしかない」状態が続いた。

食欲はまったくなく、何も食べられそうにない。喉が痛いため水分もほんの少しずつしか摂ることができない。
食べたり飲んだりしないと体力が回復しないのでは(治癒のためには体力も必要なのでは)という焦りから、弱気が高まり、ちょっと涙が出てくる。そしてメンタルが弱まると、余計に具合が悪くなってくる。娘にずっとひとりでごはんを食べさせてしまってるいることも申し訳なくてつらい。(一緒に食事しないようにしているためだが、我が子がひとりでぽつんとごはんを食べている姿を見るのは母としては非常につらいものである)

昼すぎ、職場にいる夫に電話して弱音を吐く。
話しているうちに泣いてしまう。
喉が最高潮に痛いと訴えると、「氷を舐めてみては」「はちみつ大根を作ってみようか」と言われる。

そして午後2時頃、最後の大波とも言えるものすごい「しんどさ」が到来。
おかしい、と熱を測ると38.5℃。
まさかの再発熱。
もう熱は下がったと思っていたのに!
絶望感。コロナ本当になんなの。

氷まくらで頭を冷やし、氷を舐め続け、うんうんうなりながらひたすら耐える。

すると1時間ほどして、急に体がカーッと熱くなり、一気に汗がバーッと出てきた。
なんじゃこりゃ。
勝手に汗が大量に出て、そしてその汗が出終わったら、一気に体が楽になった。
なんか、呪いが解けたみたいな感じである。解毒みたいな?あきらかに先程までと体の重さが違う。ウイルスの最後の一撃?抵抗?だったのかな。

ここからようやく体のさまざまなところが楽になり、テレビを見たり、スマホのパズルゲームなどもすることができるようになった。

バナナと、調子に乗ってゴーヤチャンプルーをすこし食べたら、とても美味しく感じた。
でもほんのひと口ふた口でギブ。
まだ、料理的なものを体が受け付けてくれないようだ。柔らかいものやなめらかなものをよこせと訴えられている気がする。

なにがつらいって、娘としゃべったり、くっついたりできないのがつらい。
人と接することがないとオキシトシンが不足していることを感じる……。
ひとり暮らしでコロナ療養をされた方は、さぞ心細く大変だったのではないだろうか。

夜、後半戦のナイターが始まっていることに気づく。
BSでやっていた巨人対横浜をメインに、ヤクルト対阪神も試合経過を追う。ベッドサイドのテーブルにポータブルテレビを置いて、寝ながら見ている形です。
横浜、また負けちゃったね。
後半戦どうなるかまだまだ分からない感じだ。

そういえば7月31日の「サントリードリームマッチ」のエキサイトシートのチケットを取ってあるんだ。とても楽しみにしていたやつ。
その頃にはきっとすっかり回復しているだろう、しているよね。

明日にはもっと良くなりますように、と祈りつつベッドにもぐった。

(つづく……)


追記・喉が最高潮に痛かったとき、これがわりと効きました↓↓↓