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ドラマ「Destiny」は何が「Destiny」だったのか

我が家の生活サイクル上、主婦業の私は夜のドラマをリアルタイムでは見られないので、配信で後追いする。
シーズン初めに気になるものの初回は一通り見てみるものの、その後継続して最終回までたどり着けるのはせいぜい1~2作。

そんな中で、石原さとみ・亀梨和也主演のドラマ「Destiny」は、いろいろ違和感というか、毎回「う~ん?」を感じつつも最後まで見てしまった。
何故だろう?と自分でも思う。
ストーリーがめちゃくちゃ面白かったとも思わないし、謎解きがものすごく気になったというわけでもなかった。
と考えて思い当たったのが、「そうだ、何が『Destiny=運命』だったのかが知りたかったんだ」ということだった。

そう、このドラマ、なにが「Destiny」だったの?
田中みな実演じるカオリが真樹父親に「この二人が付き合ってもいいんですか?」って迫る時から「なにがダメなの?」と疑問だった。
奏の父親は真樹の父親に「殺されたようなもの」だったから、奏と真樹は結ばれてはいけない二人だった?
いや、それって関係なくない?そりゃ、わだかまりは絶対にないとは言えないかもしれないけど。
真相が解明されるまではまだ、そういう壁があるというのもわからなくはなかった。
だけど最終回で真相がわかってみれば、真樹の父親もまた政治家にいいように使われただけの犠牲者だったわけで、個人的な敵対心や恨みなどはなかった。
それなら、奏と真樹の間にあった壁は、20年前の事件を解明したことで取り払われたことにならないか?と思うのだけど、ラストシーン(厳密にはその一瞬前)で「真樹とは結ばれてはいけない運命だから振り向いてはいけない」というセリフ。
私は「なんで?」「いや、もういいんじゃない?」と思った。

そしたら、奏が振り向いて「まさき!」と音声はなくても叫んだのがわかるラストシーンで、「あー、そういう事ね」と。
「この二人は結ばれる運命だったのだ=Destiny」ということだよね?

このドラマは、このオチ(ラストシーン)から逆算して作ったんだろうな、というのがバレバレだったように思う。
(もしそうじゃなかったら、ドラマ制作者様各位、すみません)
結ばれることこそが運命でした!ということで視聴者に「良かったねぇ~(涙)」と泣かせよう、と。
でもそもそも「立ちはだかる壁」が脆弱だった気がする。
今の時代、好きだけど結ばれちゃいけない理由ってどんどん少なくなってるから、ドラマプロットを考えるうえでもきっと頭を絞ったんだろうな、と思ったりする。
不倫はダメだし実は兄妹だったもダメだし、身分の差なんてないし・・・。
ドラマティックな恋愛ものを作るには難しい時代になってきてるよね、と思う。

ここからはドラマ全体の感想を少し。

まずなによりも、真樹の人物造形がとにかく残念だった。
イケメンでチャラ男。それは亀梨君をカッコよく見せるための設定なんだろう。
でも、卒業後は行方知れず。戻って来ても職業・住所不定。
よく考えずに友達を庇うつもりで放火犯を名乗ってしまう短絡。
病気で将来に絶望していたとしても、そもそも真樹ってどうやって生活しているのか、病院代や薬代はどうしてるのか、そういうリアルが無さ過ぎる。
大学の法科で検事や弁護士を目指して勉強していた学生の中の一人として、もう少し「頭の良さ」を出しておく必要があったんじゃないかと思う。
あの真樹ではどう考えたって、奏のパートナーは貴志がいいでしょ。
容姿は年とともに衰えるし、恋愛感情はいずれなくなるんだよ?とおばさんは思ってしまう。
奏と貴志がやり直すことになって、「真樹とは結ばれないDestinyでした」でもよかったんじゃないかな。
で、何年か後、ラ・ラ・ランドみたいに再会して甘酸っぱい思い出を回想する、とか。

「Destiny」の設定の甘さを含め、毎回感じていた「う~ん?」は残念ながら最後まで解消されないままだったが、それでも最後まで見終わって後味が悪くなかったのは、「学生時代の仲間たちの絆」の描写がとてもリアルで心地良かったのと、奏の上司役の高畑淳子がカッコ良かったから、に尽きる。

学生時代の仲間たち、については、お墓参りのシーンが特に好きだった。
社会に泳ぎ出た仲間が時々港に帰ってくるように、親友のお墓の前に集ってあの頃に戻る。
それはカオリが皆を繋いでいてくれてるってことで、そこにはカオリも確かにいるってこと。
歳を取らない友の前に集って、あの頃に戻ると同時に自分たちだけ歳をとった今を思う。
それぞれ、カオリとの会話も絶対にあって、それは今の自分を見直す時にもなる。
そういう時間って、ただ懐かしい仲間が集まって楽しくご飯食べるとかよりもずっと濃くていい時間だと思う。
そういう時を共有できる仲間っていいな、と思った。

それと、宮澤エマのトモが特にリアルだったのも良かった。
ああいう子っているよねー。
綺麗で頭良くて、みんなと一緒に遊んでいるけど、やるべき勉強は手を抜かない、いざと言う時ちょっと頼もしい。
このトモが、夫の挫折を大らかに受け止めて「今度は私が司法試験受けるよ」っていうシーンも、とても良かった。

つくづく、お芝居というのは脇役が締めるものだなと思う。
役者としての面白さは脇役の方にあったりするんじゃないかなと想像する。
真ん中に立つ醍醐味、喜びというのもあるだろうけど、演じるということについては。

いろいろ好き勝手書いたけど、結論としては見応えのあるドラマだったんだな。
Destinyの設定がもうちょっとリアルにドラマティックだったらもっと良かったなー(まだ言う?(^_^;))

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