ロフト

朝起きて、トイレに行く。母はまだ起きてこない。父はもう仕事に行った。僕は6時にセットしていた目覚まし時計を止めて、起き上がる。梯子を使って、ロフトからリビングに降りる。ロフトにすれば、家にかかる何かしらの税金が安くなると父だか母だかが話していて、僕は、親がこの家を建てるとき、自分の部屋はロフトでもいいと言った。ドアがないこと、部屋が閉じられないことが、これほどストレスになるとは想像していなかった。

リビングに降りると、ダイニングテーブルの上に雑誌が置いてあった。グラビアアイドルが表紙に載っている週刊誌が、裏表紙を上にして置き去りになっていた。父が置いていったんだろう。父の性。性。気持ちが悪い。恐ろしい。

僕は、その雑誌をひとしきりめくったあと、自分の通学カバンの中にねじりこんだ。学校に行く途中、駅にある悪書投函のポストに入れてしまおう。中2の冬、こっそり買ったグラビアアイドルの写真集が母にばれて、捨ててこいと怒られた時、僕はそうやってその写真集を処理した。今度は、父のために、いやこれも母のためか。また僕は、母のために家族の性を捨てに行った。いつもより不自然なくらい早く家を出て(学校で自習すると言ったような気がする)、駅のポストに雑誌を捨て、僕は遠回りして、学校に向かった。僕は、どうしてこんな余計なことをするんだと、父に恨み節を吐きながら、駅の階段を上って下りた。