もっと明るい話をしろ

 もっと明るい話をしろ、と言われてしまったので明るい話をします。

 FPSプレイヤーなら一度は耳にしたことがあるBenQ。ゲーミングモニターやマウスの印象が強い企業ですが、ベンキュージャパン公式サイトを開くと電子黒板、デスクライトなど聞き慣れない電化製品がずらりと並んでいる。特にプロジェクターは多種多様。教育向け・ゲーミング・モバイル・ゴルフシュミレーターとプロジェクターマニア垂涎のラインナップになっている。

 プロジェクターといえば。学校の視聴覚室とか、体育館で出し物をするときに颯爽と現れる四角い箱。遠目からだとお土産コーナーで売られているお洒落クッキーが入った箱にしかみえないそれ。電源を入れると、部屋にいる人たち全員が、がん首揃えて何もなかった壁を注視する。薄ぐらな部屋で、画面に投射される光の長方形に照らされた顔がぼんやり光っている。最前席から伸びる光線に、宙に舞った埃が揺らめいて影に吸い込まれていく。

 およそ日常的なデバイスではないような気もするが、近頃はそうでもない。減少する映画館人口に拍車をかけたコロナ禍。ホームステイで爆発的に増えた電子書籍人口と同じく、映画を観る層は増加している(と思う。

 だって好きな格好でどこまででも足を伸ばしても良い。その上、おかわり自由の軽食と飲み物がついてくる。確かにポップコーンやホットフードは魅力的だけど、たまにはポテトチップスを食べたい。劇場で小さな氷が入ったガラガラ音のするカップは論外だ。

 ぼくらの生活はどんどん豊かになっていく。足取り軽やかになったデバイスが日常に滑りこんで種を撒き、ぼくらはそれに水をやってどんどん住処をアミューズメント化していく。モニターが壁面を覆い、平たい電子板がテーブルの一角に積み上がりビルを作る。喋る洗濯機と掃除機と炊飯器が孤独を紛らわせてくれる。20年か、40年後には、ぼくらは自宅から一歩も出ることなくUSJに行くことができる。外部デバイスは、肉体を縛りつけたまま心を満たしていく。たぶん、もっと先の時代では体なんてものはなくなる。大事なのは心でしょ。そうかもしれない。新しい時代は刻々と近づいてくる。


寿命が伸びます