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ハイウェイ・トゥ・ヘル

これは僕に与えられた二度めのチャンスかもしれない。
声は言う。何かの行いのせいで地獄へ行かずにすむかもしれない。何かをしなかったために、地獄へ行くことになるかもしれない。最後までやらなかったために、行くことになるかもしれない。

チェック・パラニューク,『ララバイ』早川書房, 2005, p.107

私は自他共に認められる偽善者だ。落ち込んでいる人間がいれば励ましの言葉を投げかけて、怒りに震える人には耳を傾ける。落とし物は交番へ届ける。道端でうずくまっている人間がいれば早足で駆けつける。
そうしたほうが良いと思えばすぐにそれをする。私は、いまこの瞬間の心に従っている。ある人たちはこれを支配と言って、さらに偽善者と付け足す。

偽善者だろう。私は生まれたときから終わりまでずっと偽善者だろう。
借り物の言葉で傷口を癒やす言葉を考えている。トイレの壁に書かれた我儘なサインで憂鬱になる。
なにをすれば地獄に行けるのだろう、私はもう地獄へ行けるでしょうか。

寿命が伸びます