死ぬまで正体を明かせない
観るものが特になくて『インファナル・アフェア』を流していた。だけどNetflixは日本語訳がなくて飯を食べながら観れない。飯をかきこむタイミングで重要っぽい台詞を見逃してこれは駄目だと視聴中断、しばし考えた末にリメイク版の『ディパーテッド』を観ることにする。
なにかと苛ついて血気盛んなディカプリオとなにかと情けないナヨっとした雰囲気のマット・デイモン。そして変な髪型をしたジャック・ニコルソン。THE悪役の笑顔を振りまき物語をあっちへこっちへと引っ張っていく。自らの欲望にド素直な爺さんを相手に上手く立ち回ろうとするマット・デイモンがなんともいたたまれない。それに比べて鎖に繋がれながらもバウバウと低く吠えるレオナルドディカプリオの精良さときたら。現状最悪なのは紛れもなくギャングたちに囲まれているディカプリオです。作中では嫌味ったらしいほどにその対比は映し出されます。彼女との甘ったるい生活(夜の生活は塩っぱい)を送るデイモンと血と火薬とガソリンの刺激臭が漂うディカプリオ。視聴者が肩入れするのは間違いなくレオナルド・ディカプリオ演じるビリー・コスティガンでしょう。上司との激しい衝突と摩耗していく精神、すべてを投げ出したっていいはずなのに彼はそれが使命であるかのようにギャングの道を突き進んでいきます。ギャングスターに憧れた、とはならず。最後までギャングというものを嫌悪していました。マット・デイモンの存在は作中に発生するヘイトを全身に受ける損な立ち回りだった。そんな彼にも同情すべきポイントはあるのだが(彼女との低温な性生活、幼少期にギャングに目をつけられる)、そのどれもがディカプリオが受ける仕打ちに比べると霞に霞む。他人の幸福と不幸を比べることはできないが、どうやっても比べるように映画が作られている上にディカプリオのほうが悲惨だ。
「男は、死ぬまで正体を明かせない」スコセッシくんは間違いなくてサディストのムービーマンだよ……。
寿命が伸びます