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【国際結婚 第1章-3】夫を信じたメッセージ

※第1章では、出会った2020年について書いています。

夫との出会いについては、前回の【国際結婚 第1章-2】に綴っています。


夫とのやり取りは続いた。

知り合った日から、毎日毎日、
起きてから寝るまで、時間が許す限り、LINEをしていた。

「付き合ってください。」
なんて、切り札も決め台詞もない。

とにかく自然で、心地よい時間を過ごしていた。

7日後のメッセージ:過去の関係

やり取りを始めて7日くらい経ったころ、
夫からメールがきた。

メールには、
過去の奥さんのこと、
結婚生活のこと、
離婚に至った経緯、

そして、私の前に付き合っていた彼女のこと、
別れた理由が書いてあった。

元の奥さんのことは「離婚」という経緯があるから、わかる。

だけど、わざわざ元の彼女のことを加えたのは、きっと大切な人だったんだろうなと感じた。

いずれ聞こうと思っていたから、
「話してくれてありがとう。」それだけ返した。

10日後のメッセージ : 正直な気持ち

それから3日ほどした週末、今度はLINEに長いメッセージを送ってくれた。

書いてあったのは、

所有する自宅などの財産、
およその価値、
貯蓄額、

そして、

「僕はそんなに裕福ではない。
だけど、財産として今これだけある。
しっかりと毎日働いてるし、贅沢もしていない。
それに健康もある。
だから、裕福でなくても、
心地いい生活ができているよ。」

なんて正直な人だろう。

裕福ではないと男の人が言うのは、
きっと勇気がいること。

自己主張のない伝言に惹かれた。

だけど同時に、

こんな踏み込んだ話を、
なんで今言うんだろう、とも思った。
目的が分からなかったのだ。

文章の中には、quickという単語が何回も使われていた。
夫が書いてくれたことは理解しているのに、
ここで私は、

この人は関係を急いでいるのかな、
何を急いでいるんだろう、
と思ってしまったのだ。

急いでるのかなと疑ったら、
急に、それはできない、と思い始めた。
心がザワザワした。

その時はコロナ禍。数年は会えない可能性がある。急がれても、それに私は応えられない。

たとえ直接会えなくても、真剣な相手を望んでいたから、ゆっくりと関係を構築していきたいと思っていた。

もし急いでいるなら、彼は私の求める相手ではないかもしれない。彼の求める幸せを私は与えることができないかもしれない。

ここで迷い始めた。私の悪いクセだ。

何度彼のメッセージを読んでも、
私の解釈は「急いでる」だった。

思い悩んだ挙句、私の出した結論は、
ここで終わりにしよう。その方がこの人も次の人を探すことができると。

夫にメールを送った。

「私はゆっくりと関係を作っていきたい。だから、まだこれからの今のうちに、やめた方がいいかもしれない。お互いに、自分の理想に叶う人を探す方がきっといいと思う。」

夫から返信がきた。仕事中だった。

「混乱している。思い違いをしているから説明させてほしい。今日帰宅したらメールを送る。」
とあった。

夫は言ったとおり、帰宅後メールを書いて送ってくれた。

今のうちに関係を辞めると決めた私も、自分の決断に哀しんでいた。こんなに心地いい人はいない。でも、急いでいるから相手はそれに応えられる人がいい、と。

夫が「小説」と呼んだその長いメールをすぐには読めなかった。金曜の夜、その週の勤務を終えてから、ベッドに横たわってメールを開いた。

「僕に説明する機会を与えてくれてありがとう。この小説を読んでくれてありがとう。

ののこの丁寧に書かれたプロフィールと写真は、恐らく多くの人を惹きつけると思った。

だから、たくさんの人からメッセージが来たとき、そのなかから、ののこが相手を選びやすいように、僕の経済状態や生活、過去の結婚について話したんだ。

普段は人には言わないよ。特に資産や貯金のことは話さない。だけどね、お金や過去の結婚は後にひびくことがある。

だから、変えられない過去のこと、生活で大事なことは先に話しておくべきだと思ったんだ。

その方が相手を選ぶ時に”早く”最善の選択ができるし、僕を理解した上で付き合う方が、ののこが決断を”早く”にできるはずだ。僕の経験上ね。だから、quickという単語を使ったんだよ。

ののこには、強く将来の可能性を感じている。
僕に直すべきところがあったら努力する。だから、僕にチャンスをください。

僕を信じてください。」

要約すると、こういった内容だった。

今もはっきりと憶えている。
夫からのメールを3回読み直し、自分の理解が正しいことを確認した後、号泣した。声を出して泣いた。

僕を信じてください。

シンプルだけど、この言葉には夫の真剣さと誠実さが表れていた。そして、その言葉は私に宛てて書いてくれたもの。過去に味わったことのない幸せを感じた。

それから、すぐに夫に返信をした。
夫の小説を理解し、受け入れたことをとても喜んでくれた。

地球の裏側に住む夫と、この日からさらに心をオープンにして話すことができるようになっていた。

相手を想い正直に話す。大切さを実感した。

23日後のメッセージ: 守りたい

それからも毎日夫とのやり取りを楽しんだ。
毎日が楽しくて仕方ない。

連絡するようになって23日後の週末、夫の住む地域は大雪になっていた。

今からシャワーを浴びてくるよ。
今シャワーが終わったよ。
まるで実況中継のように毎日テキストを送ってくる夫から、

「今からしばらく外に行くから連絡取れなくなるよ。僕の家の雪かきをしてから、近所の人の雪かきもしてくるね。」

というテキストと一緒に、キッチンで自撮りした一枚の写真を送ってくれた。

はにかんだような笑顔だった。

この写真を見たとき、

なんて優しい笑顔なんだろう。
この笑顔を守りたい。
この人がずっとこの笑顔でいられるように、サポートしていきたい。

と感じた。

これが、いわゆるピン!ときた、というものだったかはわからない。将来を感じた瞬間だったかもわからない。

わからないけれど、自分の気持ちを知ったのはこの時だったと思う。

この12月は私たちにとってターニングポイントだった。互いが互いに対する想いをしっかりと意識していたと思っている。

まだ会ったことも、電話も、ビデオ通話もしたことのない人に感じた不思議な確信と誓いだった。

よみがえる感覚

夫と出会った翌月は12月。クリスマスが近くなり、大好きな曲を使ったフランスのTVコマーシャルをYouTubeで繰り返し観ていた。

それが、1974年のアメリカのレッドボーンというバンドの曲だ。タイトルは、
Come and Get Your Love

この記事を書くために久しぶりに聴いた。やっぱりいい。あの日の感覚が瞬時によみがえって涙が止まらない。

意識も、心も、身体の感覚も、聴いていた時期そのままに移行できるのは音楽の素晴らしさのひとつかもしれない。

今年の12月もまた、夫との大切な時期を思い出しながら、このフランスのコマーシャルを観まくると思う。

ビデオは1分39秒。よろしければ、ぜひご覧ください。

次回は、2021年を綴ります。
決断の時期でした。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

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