私という存在の全てが恋だった

恋じゃなかったけれど、ただの友達で片付けるにはあまりにも恋だったから、私はいつまでも、あなたのことを忘れられないでいる。

街中であなたと似た人を見かけるたびに、胸のあたりがすうっと冷える。冷たい風が突然吹き込んできたみたいに、とても心細いつめたさで私は、怖い、と思う。
私は怖いのだ、あなたを、あなたの記憶を、あなたへの愛を私が忘れていくことが、どんどん過去になっていくことが、もうほとんどが過去になってしまっていることが。
あなたと関係を続けることで何かを引き留められる気がしている。そんな関係で引き延ばされる愛など、すべて置いていけば良いとも思う。多分もう、愛なんかないような気すらしてしまう。

愛じゃなくてごめんね。私はあなたが好きでした。恋だったらよかった。だったらもっとすぐに忘れられた。でもそうじゃなくて、私はあなたをひたすらに愛していた。あなたのすべてが愛おしかった。会ったら嬉しくて、話せたらもっと嬉しくて、一緒に学校に行けるのはもっともっと嬉しかった。
あなただけが生きる意味だった瞬間がたくさんあったよ。あなたが笑いかけてくれたから救われた感情がたくさんたくさんあったよ。
あなたのことを話すたび、どうしても冷静ではいられなくて、今だって泣きそうで、やっぱり私は、どうしようもなくあなたを忘れられない。

私という存在の全てが恋だった

男とか女とか関係なく愛し合いたかったし、きっと私たちが手を繋いでいた瞬間があったよ、2人とも見逃してしまった、とてもとても美しい瞬間がきっときっとあったはずだよ。
私たちも知らない私たちの思い出の余談みたいな、色褪せた青春で私たち息をしていた。どうしようもなく愛だった。だからもう、愛じゃなくなってしまった。それでも愛と信じたかった、あなたを大切にできない私を、私を大切にできないあなたを信じたくなかった。

好きだったよ、あなたと私2人きりでいたいと願った夜もあったし、その感情がどうしようもなく美しいことに、今までずっと救われ続けている。

かっこよくなんか生きなくていいよ、って言ってくれてる気がした。私もあなたも若くてダサくて不器用で傷だらけで、だから美しかった。

愛だったよ。言葉を重ねるごとに、あなたへの気持ちを言葉にすることなんてできないということだけが分かって、もどかしいけれど少し安心する。

どうか、ずっと私だけの感情でいてね。私だけが知っているあなたをまだ私の中にしまっておきたいの。あなたと過ごした時間をできるだけそのまま抱えて歩いていきたいの。

誰にも否定させないよ、あなたへの愛が、たぶん私の抱えられる何より美しい感情だった。

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