見出し画像

夏がもっと楽しくなる"豆花"



もうすっかり夏ですな。

今年、暑すぎるよ〜

なんて、毎年毎年同じことを言ってる気がする。
実際、言っている。

でも本当にそう。
こんなに暑かっただろうか、夏って。
もう7月も後半なので、世の子供達は夏休み真っ只中。でも7月の始めから既に、危険なくらい暑かったわけで。

日本の四季の大部分が夏と冬に侵食されつつある。あと数十年もしたら、春とか秋とかって数日しか存在しなくなってしまうのではないかと、ちょっと不安になる。冗談じゃなく、実際に起こり得るし。

暑い暑いと小言を言いつつも、
正直なところ、私はけっこう夏が好きだ。

たぶん人より少し暑さに強いので、周りが蒸し暑さの中、へばっているときも私は割と心地よいとさえ感じていたりする。
(度を越した暑さは苦手だけども)

汗をかくのも実は嫌いではない。
ベシャベシャのダクダクに汗をかくと、体の中の悪いものが全部出ていった感覚になって、これがデトックスということなのだろう、気持ち良くて不思議と元気になっている。

それともう一つ、私の中で夏というのは
なんだか賑やかで幸福な印象が強いのだ。

花火大会やお祭りがあちらこちらで開催されていたり、お盆休みには県外へ出て行ってしまった友人たちが帰省して来ていたり、バーベキューなんかして友人と集まったりと、至る所にワイワイと活気ある雰囲気に溢れている。

思い返せば、私が楽しかったと感じる思い出たちは、いつだって騒々しい夏の光景なのだ。

だから自然と、暖かな空気に触れるたび、自分が幸福であったことを思い出させてくれるようで、私は嬉しくなる。
それと同時に、それらの時間は過ぎ去ってしまったものなのだと知り、少し切なくもなったりする。この切なさも、今となっては心地良いのだ。


そんな感じで、暖かい季節には心が躍る私だが。残念ながら私の周囲の人たちは、夏が苦手な人が多い。みなさん一様に、暑さにやられている。

流石の私も、36度を超えた日にはグッタリさせられた。食欲が落ちてしまう日だってある。


そんなうだる暑さの、とある休日のこと。
毎度の如く特に予定もない私だったが、せっかくなので外出がしたいという気持ちがあった私は、お気に入りのお店「水色レコード」へと足を運んでいた。

店の名前もどこか涼しげで美しいそのお店は、ドーナツを主に販売しているお菓子屋さん。
レコードというのもドーナツが由来。

この日もドーナツと、大好きな店主のお姉さんを目当てにその店を訪れていた。

私が行ったのは夕方15時半頃だったので、来客も少し落ち着いていて、ドーナツを選びながらいつもの如く店主さんと談笑していた。

そんな中、ふとカウンターのメニューに視線を落とすと少し気になるものをみつけた。

"豆花(トウファ)"
という名前の食べ物だった。

そういえばお店のInstagramでも、最近よく載せていたなと思い出す。
写真は見ていたけれど、まだ目の前で見たことなければ食べたこともないそのメニューが、私は気になって仕方なかった。

当初はその予定ではなかったが、思い切ってその「豆花」を注文してみることにした。

豆花はイートイン限定のメニューだったので、私はカウンターに腰掛けてやってくるのを待った。

正直、味の想像が全くついていなかった。

水色レコードの"豆花"
食器も可愛すぎる。
下にある銀のプレートも
アジアな雰囲気を感じられて素敵。


運ばれてきた可愛らしい和風なお皿の上には
白くてプルプルとした杏仁豆腐のようなものと、白くてふわふわした何かと、桃、マンゴー、タピオカ、お手製のカボチャ白玉などが白濁した液に浸っている。

初めてみる、食べ物だった。

聞くところによると、これは中国(台湾)のスイーツらしい。
あんみつに近いビジュアルだが、やはり日本のものとは少し違う、独特でエキゾチックな雰囲気。

全体的に淡く白い中に、マンゴーとカボチャ白玉のオレンジカラーが添えられているのが、なんだか可愛らしい。

一口食べてすぐ、これまで味わったことのないその美味しさに私はいたく感動した。

白くてプルンとしたものが、豆花と呼ばれるものらしい。豆乳を原材料として作られているそれは程よく甘く、つるりつるりと口の中に運んでしまう。

季節のフルーツたちも、甘く爽やかでジューシー。カボチャ白玉とタピオカのモチモチとした食感も良いアクセントになっている。
浸されているシロップ?は、くどい甘さはなくて、ずっと食べ続けてしまえる、飽きない美味しさ。

夏のじっとりとした気候の中、体の中を甘く潤してくれるような、今の季節にピッタリのスイーツだった。

感動のあまり
「このこと、noteに書きますね!」
とわざわざ宣言して帰った。

最近、雑貨や食べ物でも至る所に、台湾ブームが来ているなと顕著に感じる。

台湾に限らず、インドカレーやベトナム料理、タイ料理…etc.
アジア圏の料理を口にする機会が多くなった。
日本も同じアジア圏であるはずなのに、やはり和食とはまるで違う。
それらの異国情緒に溢れる香りや味わいは、本来親しみはないはずなのに、不思議と我々日本人の舌を魅了してくれる。

こういう暖かい(暑い)気候の土地・国の料理というのは、なんだかこう、元気になれる気がする。エネルギーを得た!という感覚になる、のは私だけだろうか。


後日、水色レコードさんがSpotifyで不定期で配信している「水色ラジオ」を聞いていた。
タイトルが「夏を乗り越える豆花誕生」だったのだ。

水色ラジオの面白いのが、毎回忙しい合間を縫って収録しているので、運転中だったり、仕込みの最中だったりと、環境音がおもいきり入ったままの音声で、

水色レコードの店主・ミヤさんという人はとても自立した女性で、芯が強くて、独特な雰囲気と存在感を纏っていている人なのだけれど、ラジオで見せるせかせかと慌しい様子は、どこか親しみやすさを感じさせてくれて、私たちと同じ"1人の悩める人間"なのだと感じさせてくれるところに、なんだか勇気をもらえる。


そんなミヤさんも上記にも書いた
夏がちょっと苦手な人のお一人。

苦手な季節を楽しみながら乗り越えられるように、そんな気持ちから生まれたのが今回のメニューなのだ。

ラジオの中では、メニュー開発の中で試行錯誤したエピソードや、テイクアウトにもしたいけれど、美味しさをキープするためには難しい…
という悩みなどが語られていた。

私たちは、飲食店などで食事をしていると、なんの気なしに、その食べ物を口にして
「おいしーーっ」
と安易に喜んでいるが、こんなに美味しいものが出来上がるにはそれ相応の努力とエネルギーを費やしたが故なのだと気付かなければならない。

日々の業務や生活の合間を見つけて
自分の時間を削って削って
生み出されたものを、私たちは口にしている。

それは料理だって、原材料だって、
私たちの身の回りにある全てのものに言えることだ。

全てのものに、感謝

なんて言うと、なんだか薄っぺらく思われるかもしれないが、私たちが見えないところで色んな人が心身を擦り減らしてくれていることで、我々がこうして潤いを得ることができるのだ。

この気持ちを改めて胸にしながら
また豆花、食べたい。そう思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?