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わたしの本棚―愛あふれる本たち―

今週もすてきな本との出会いがありました。

今週出会った本は、「愛」を感じる本たちでした。
この記事を読んでくださった方にも、その本に込められた愛が少しでも伝わったらいいなと思いながら、今日の記事を書きます。


今週読んだ本

◆大宮エリー『思いを伝えるということ』文藝春秋、2012年

大宮エリーさんの展覧会を見に行ったことがある。
のびのびとしたドローイングの線が印象的だった。

彼女は、画家なのだと思っていたけれど、この本を読んで、作家、脚本家でもあり、映画監督もしているのだと知った。そして、本書では詩と物語を綴っている。
超多才だ。

この詩と物語もすごい。
何がすごいって、もう最初からぐいぐい心を掴んで離さないのだ。すっと心に響く言葉たち。

人に伝えるというほど
怖いことはないように思います
大人になればなるほど
臆病になって
面倒になって
(中略)
確かに
伝わらなくてもその人は
困らないかもしれない
でも
もし伝わったら
その人、喜ぶかもしれない
その人、嬉しいかもしれない
ちょっとその日が動き出すかもしれない(pp.4-5)

私は、noteを書いていて、ふと何のために書いているんだっけと思うことがある。こんなに時間かけて書いても誰も読んでくれないんじゃないかとか、誰の心にも届かないんじゃないかとか思ったりする。

でも、この詩を読んで、それでも伝えることに意味があるんだと思えた。

絵を描くのも、同じ。私は簡単そうに見える絵でも何時間もかけて描いている。ときには、何日もかけて描くことだってあった。全然思うように描けないから投げ出したこともある。

でも、ありがとうって伝えたいから、がんばって描いた。
伝えたら、喜んでもらえるかなって思ったから。

いや、それだけじゃない。
伝えたら、ちょっと好きになってもらえるかもしれないと思ったからだ。

善意だけで描いているわけではない。
私は、とっても欲深い人間なのだ。

だから、誰かに喜んでもらえたときはもちろんうれしい。
でも、誰かに私の絵や文章を好きだと言ってもらえたとき、
私は飛び上がるくらいうれしい。

いつも思いを伝えてくださる方々、
本当にありがとう。

私も、これからも思いを伝えつづけるよ。



◆原田マハ、高橋瑞木『現代アートをたのしむ 人生を豊かに変える5つの扉』祥伝社、2020年

原田マハさんの小説『ジヴェルニーの食卓』を初めて読んだ日、絵を題材にこんなに素敵な物語を書ける人がいることに、衝撃を受けた。
もう何年も前のことだけど、そのときの衝撃はよく覚えている。

原田マハさんは、キュレーターとしても華々しい経歴を持っていて、そのうえこんなにも感動する物語を書けるなんて、と驚愕した。
雲の上の存在というのは、こういうことを言うんだなと思った。
原田マハさんは、そのとき以来ずっと私の憧れの人だ。

この本は、原田マハさんの本だから手に取ったというのもあるけれど、このまえゲルハルト・リヒターの映画を観たばかりで、現代アートをもっと知りたいと思って手に取った。(この本を読んで、映画にでてきた先生がヨーゼフ・ボイスだったとわかった。)

本書は、原田マハさんとご知り合いの学芸員の高橋さんの二人が現代アートについて語る対談集だ。
現代アートがどこから始まるのかといった基本的なことを論じつつ、具体的な作例を提示してその面白さを語る。
作品を間近で見てきた人たちだからこそ語れる面白さだと思う。

でも、読み終わって、こんなふうに現代アートを求めて世界各国を歩ける人はどれくらいいるだろうと思ってしまう。
私は、ヴェネツィアに留学していたときには、毎日のように現代アートに触れる機会があった。東京近郊に住んでいる方は、見ようと思えばいつだって現代アートに触れられるだろう。

でも、私の住んでいる地域では、現代アートの展覧会はほとんど開催されない。
人が入らないから。

この本を読んで、現代アートに触れる旅に出たくなった。


◆雅樹『かつお~前編~』2020年


先週のこの連載で、来週からは電子書籍で読んだものも掲載することを伝えたけれど、まさかその週にフォローしているnoterさんが本を出版するとは思っていなかった。

私の記事に雅樹さんがコメントしてくださってから、実はまだあまり雅樹さんと交流できていない。なので、雅樹さんの記事に、「レビューを載せてほしい」と書いてあったけれど、にわかファンの私がレビューするのはおこがましいかなと遠慮していた。

でも、この本を一緒につくったましろさんとは、もう少し前から交流があって、ましろさんさんから、ぜひレビューも書いてほしいと言われたのでレビューも書くことにした(ましろさんの大ファンなので)。

書いてから数日間レビューは掲載されなくて、はじめてレビューにも審査があるのだと知った。

このまま掲載されないのかなと思っていたら、昨日アマゾンから通知が来てレビューが掲載されていた。

でも、正直な感想を書いたので、もしかしたら受け取り方によっては、雅樹さんを傷つけてしまわないかなと心配になっている。

炎天下のなか置き去りにされたかつお君を思うと、あまりにもかわいそうで、なんだか賞賛しているような、批判しているようなレビューになってしまったのだ。
でも、雅樹さんを批判するつもりは全くない。
かつお君が雅樹さんに出会えて、本当によかったなと思う。
その日食べるものもないのに、うさぎを飼おうとするなんて普通じゃないけど、雅樹さんが普通じゃなくてよかった。

…なんだかまたディスっているような文章になってきた。

本当にすごすぎて、言葉にしようとしているのにうまく言葉にならないのだ。
いつもだったら、私はもう少しまともな文章を書けるのだけれど。
(雅樹さんが嫌だったらすぐにレビューもこの記事の該当箇所もすぐに消すので、遠慮なくおっしゃってください。)


雅樹さんの本文に寄り添うような、ましろさんの物語も私は大好き。
絵本のようなやさしさと、胸がぎゅっとなる切なさが同居している物語だ。
この本の表紙以上に素敵な絵を描くことは私にはできないけれど、絵を描いてみたくなるようなお話だった。

衝撃的なお話だけど、レビューにも書いたとおり、たくさんの方に届いてほしい物語なので、ぜひ読んでほしい。



あとがき

いつもは表紙の写真を載せているのですが、記事を書く前に、うっかり本を図書館へ返してしまったので、今日はアマゾンのリンクを貼りました。

今週はTOEICや、歯科矯正手術前の検査があって、ばたばたしていたので、本の数は少ないです。

けれど、美術への愛、思いを伝えたい人への愛、そしてうさぎへの愛の詰まった本を読めて、たくさんの愛を受け取ることができました。

この記事を読んだあなたにも、この愛がほんの少しでも伝わりますように。