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日々、いとおしさが積もっていく

夫と付き合いはじめて間もない頃、私は夫にこう言った。

「私、すごく飽きっぽいです。熱しやすくもないので、つねに冷めています。」

私の性格をわかってもらおうとした言葉だが、今思い返すと、なんとも可愛げのない台詞だ。

そのときは、そっか、と相づちを打っていた夫だが、このときの台詞をのちのち夫は何度も引用することになる。


「ももは飽きっぽいはずなのに。全然ぼくに飽きないね?」とか。

「あれれ?つねに冷めているのは誰だっけ」などと、にやにやしながら言ってくるのだ。


あの頃の私に、これからこの人を10年間も愛しつづけることになるよ、毎日「好き」のきもちがつもっていくんだよ、冷めるどころかいつもぽかぽかだよと言ったら、鼻で笑われそうだが、実際そうなのだから仕方がない。


20歳の頃に付き合いはじめ、今年私は30歳になったから、夫とはかれこれ10年の付き合いになる。

10年一緒にいても、冷めるどころか、毎日いとおしさがつもっていくとはどういうことなのか。

私自身も不思議でたまらない。

今日は、そんな愛さずにはいられない夫のお話をしよう。
もうすぐバレンタインだし。バレンタインにかこつけての惚気話だ。

まあ、バレンタインに関係なく年中しているわけだけど。



おはよう、ただいま

私は仕事、夫・ぺこりんは休みの日。

夕方家に帰ると、夕ごはんをつくってくれていたぺこりんに「おはよう」と言われた。

「まちがえちゃった。おかえり」とぺこりんは言い直す。

ぺこりんをよく見ると、なんだかぽやぽやしているし、寝癖がついている。
私が帰る直前まで寝ていたにちがいない。

「いままでお昼寝していたんでしょ」と私が言うと、
コクン、とぺこりんは頷く。

「おはよう。ただいま」と私は言いながら、ぽやぽやのぺこりんとハグをする。


いじわるしないで

私はついぺこりんに「かわいい」と言ってしまう。これは不可抗力だと思う。

だが、ぺこりんはかわいいと言われるのがあまり好きではないため、私がかわいいと言うのを嫌がる。

特にぺこりんがすやすや眠っていると、私はかわいいかわいい、と心の中で思っているのだが、ついつい声にも出してしまっているらしい。

気づかぬうちに「かわいい、かわいい」と連呼してしまっていたある朝、寝起きのぺこりんに「もも、いじわるしないで」と言われる。

いじわるをしているつもりはなかったから、ごめんねとすぐに謝る。

ただ、その一方で「いじわるしないで」とお願いしてくるぺこりんがかわいい、と思ってしまう自分もいた。


リアルジャムおじさん

前にもnoteに書いたが、ぺこりんはいちごジャムをつくるのにハマっている。ぺこりんの通勤途中で、ジャム用のいちごを一箱300円で売ってくれるお店があるのだ。安上がりな趣味である。

ぺこりんがつくったいちごジャムをヨーグルトに入れて食べていると、ぺこりんが急に、
「ぺこりんって、リアルジャムおじさんじゃん!」と言う。どこか誇らしげなようすで。

人がヨーグルトを食べているときに面白いことを言わないでほしい。ヨーグルトを吹き出しそうになるのを必死にこらえる。

そういえば、カレーパンマンは口からピューとカレーを出したりするけれど、ジャムおじさんにはそういう得意技はないね。


ほっぺたん

出かけた先で歩いているとき、うおー寒い寒い、と私があまりの寒さに震えていると、隣でぺこりんが頬に手を当てながら「ぺこりんのほっぺたん、あたたかいよ」と言ったあとで「ほっぺたん、ってなんだ。ほっぺたね」と訂正する。

ほっぺたん…
言いまちがいまでかわいいとは。
と驚愕している自分と、うおーとか言っていたことが恥ずかしくなる自分と、外を歩いているときにほっぺが温かいアピールをされてもムニムニほっぺを触るわけにもいかないんだが、どうしろと?と思う自分がいて、私の脳内はわちゃわちゃしていた。

うとうと

私がリビングで勉強していると、ぺこりんもリビングで勉強しはじめた。

でも、途中で眠くなってきちゃったのか、うとうとしはじめるぺこりん。コクコクしながら、おっとっとと起き上がることを繰り返す。

「お布団で寝たら」と言うと、「ももが頑張ってるから、ぺこりんも」と言って頑張ろうとするが、眠気には勝てないようで、またうとうとしてしまう。

そんなぺこりんを、私はスマホで撮影しはじめる。おかげでさっぱり勉強が進まない。

「集中できないので、お願いだから、お布団で寝てください」と言うと、ぺこりんは大人しくお布団に戻っていった。


もぐもぐ

カンパーニュのおいしいパン屋さんを教えてもらって、チーズパンと、いちじくと胡桃のカンパーニュを買った。

買ったその日には食べきれない量だったため、次の日ぺこりんはいちじくと胡桃のカンパーニュをお弁当の代わりに職場にもっていった。

夕食のとき、お昼のパンはおいしかった?と聞くと
「おいしかったけど、かたいから、ずっともぐもぐしていたら顎が疲れた」とぺこりんは話す。「りすさんになった気分だった」という。

りすさんになったぺこりんは、なんだかとても想像しやすかった。


夢で会えたら

昨日の朝、目が覚めたぺこりんは「夢にももが出てきた」と私に報告する。

「ももと一緒に暮らす前は、夢でもももに会えるとうれしかったな」とぺこりんはつづける。

「いまは、なんかフツーにいつもももが夢でも一緒にいる。それに、起きると隣にももがいるの」と言ってにこにこしている。

私も結婚前は夢でぺこりんに会えると、夜電話するときに今日夢で会えたよと報告していたっけ。
夢で会えたら、それだけでうれしかった。

今は毎日会える。
夢みたいなことが現実になって、それが普通のことになっている。

いつかの夢が日常になったことがうれしい。

でも、夢で会えるだけでうれしくなっていたときのことも覚えていたいなと思う。




今日は、この企画に参加します。

日々たまっていくもの、ということで。


いつだったか、ぺこりんに「私、ぺこりんのことが好きすぎるかもしれない」と打ち明けたら、「いいよ」という返事が返ってきました。

「全部受けとめるから、いいよ」と。

少し予想外の返事だったものの、私はその返事に安心したのでした。
 
日々たまっていく愛おしさは、こうしてぺこりんのもとで吸収され、ぺこりんはますます愛らしくなっていきます。


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