見出し画像

野に、咲く。15

野に、咲く。第十五話

「ゴリラ屋事件」

雨の季節が終わり、一気に季節が変わる頃に夏休みバンザイ!

夏休みの思い出といえば、海だ、キャンプだ、遊園地に行っただの

楽しい思い出ばかりだろう。 僕の夏休みの思い出は、痛く、暑い記憶が蘇る。

僕は小学2年の冬に誤って建物を燃やしてしまう事件を起こしてしまった。

建設中の建物の中で焚き火をしその火が資材に移り引火、全焼した。

幸い怪我人などはいなかったが、たくさんの人に迷惑をかけてしまった騒動となり、

2年生の冬休み、春休み、そして3年生の夏休み前半を毎日保護司の家で過さなければ

ならなかった。 優しい保護司の林さん(仮名)は「8月になったらみんなと同じように

夏休みを過ごせるように頼んでやるけん」と約束してくれた。

8月になり普通の生徒と同じように夏休みを過ごせるようになった僕は

ラジオ体操、宿題を真面目にし、校区外に出ず、とにかく問題を起こすことなく、

1週間が過ぎた時だった‥


午前中に同級生の木戸と遭遇、乗っている自転車のカゴに赤い箱が見えた。

(木)「爆竹持ってるよ!」(僕)「バラバラにしてならそう」

近くの公園で持っていたライターを使って一発ずつ爆竹を鳴らして遊んでいた。

この頃の僕の所持品は、ライター、小刀、粘着テープ、この3つは経験から

必要最低限とし所持していた。

バラにした爆竹は導火線に点火すると一秒くらいで爆破するので手早く放さないと

危ないわけで、しかしそのスリルがたまらなく面白かった。

パン! パァァン!!っと慣れてきた時、ギリギリまで持っていた方が勝ちという

意味不明の根性試しが始まる。 僕は人差し指と親指で単発の爆竹を持ち

そのまま持っていたら「勝ちだ!」と思い、点火した。

パン!と音がしたと同時に指先に痺れと熱を感じた後、激痛が遅れてやってくる。

爪が吹っ飛び、血が出てきた。  


公園の側に商店があり、駄菓子など売っていて小学生の溜まり場のような、お店

「ゴリラ屋」がある。お店のおばちゃんがゴリラに似てたから通称ゴリラ屋と

呼ばれていた。  流血した指先を見て「ゴリラ屋のおばちゃんに助けてもらおう」と

木戸が言ってくれた。 「あらぁ、カットバンばさ、貼ってやるけん」と

人差し指と親指に絆創膏を貼ってくれた。僕は嬉しくて「おばちゃんありがとう」と

言うとおばちゃんは「200円!!」っと手を差し出した。



蝉の鳴き声がいつもよりうるさく聞こえた夏‥

ゴリラ屋のおばちゃんとの戦いが始まる。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?