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古のツクラーによる「RPGツクールMZ」所感。今すぐ買った方がいい?それとも待つべき?

「RPGツクールMZ」が発売され3週間ほどが経ちました。シリーズ最新作ということで、発売前は期待と不安が入り混じっていた本作ですが、フタを開ければ大きなトラブルもなくホッとしています。

僕も発売前から予約していましたが、触ってみる限り、シリーズでも良作の部類ではないかと感じました。今作の売りのひとつである制作の快適性も実感しており、普段は旧作「RPGツクールXP」を使っているためか、最新作の恩恵をガッツリ受けている次第です。

ということで、旧作ツクラーから見た「RPGツクールMZ」の個人的所感をつらつら書いていくので、興味がある方はお付き合いくださいませ。

今回のnoteの内容は、執筆し始めたVer 1.0.1のものを対象にしています。(現在Ver 1.4.0)

MVより使いやすさが向上した強化版

本作の特徴を表すなら、基本的にMZは「RPGツクールMV」をより使いやすくした機能強化版です。

MVより登場したブラウザ・スマホでのゲームプレイ、プラグインによるスクリプト管理、フロントビューとサイドビュー戦闘の選択などは、今作でも健在。素材規格もMVと同じなため、互換性は高めです。

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さらにオリジナル要素として、FFのATB風のタイムプログレス戦闘や外部ツールによるエフェクト作成などが追加され、オートセーブなんて今風な機能も標準搭載。

その他、移動ルートのプレビュー機能、スマホUIの最適化、イベントコマンドの強化・拡張など、制作者とプレイヤー双方が快適に楽しむために、さまざまな部分が事細かに改善されています。

ATB風バトルと言えば、ツクール4、ツクール2003(※)だったので、ついに真っ当に動くものが出たかと、古のツクラーとしては感慨深い限りです…。

※家庭機向けのツクール4はバグの宝庫として有名。しかもセーブデータを間違えて上書きしやすく、筆者は何度か地獄を見た。一方2003は、Steam版にてバグやバーが遅すぎて不評だった部分などが大幅に改善されており、異国にて謎の超進化を遂げている。

使ってて良かった部分

現在短編RPGを制作しており、マップ制作へと移行していますが、特に4層式のレイヤーはかなり良いです。オートでもそこそこ上手く配置してくれるのですが、重ね合わせなどに納得いかなければ、手動で細かな調整が可能です。

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こちらマップ制作例です。層ごとに分けてみると、こんな感じに。

レイヤー1(地面、建物の壁面など)

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レイヤー2(草・生け垣など)

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レイヤー3(屋根、窓、木、小物など)

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レイヤー4(森の影部分など)

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レイヤーが採用されていたXPでは、素材同士の重ね合わせで幅広い表現が可能でしたが、以降のPCシリーズではその機能がオミットされていました。4層だとかなりの余裕があり、分類分けしながら配置できるので、整理しながらマップを組み立てられるメリットがあります。

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イベントに関してはまだあまり触れていませんが、特に可能性を感じたのが[指定位置の情報取得]で「キャラクター指定」の追加。例えばプレイヤーのいるリージョンを並行処理で読み込ませることにより、画面端に到達した時の移動を一括で設定したり、特定エリアのときだけ追いかけてくるモンスターを配置する……なんてこともできます。

もちろん、プレイヤー以外のイベントにもリージョン位置や地形タグなどを適用できます。これまでもプラグインなどで活用できたようですし、多用すると重くなりそうですが、イベントエディター内でこれができるようになったのはかなり大きいかと。

それと、今作のBGMは地味に良作が多いです。制作BGMにも最適で、創作意欲が湧いてくるかも(?)

使ってて気になった部分

本作のエフェクトはエフェクト制作ツールEffekseerという、外部ツールが採用されています。綺麗な3Dパーティクルエフェクトは魅力的なものの、いままでのようにツクール内で制作が完結せず、シリーズのノウハウが継承されないという賛否両論な側面があります。

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また、デフォルトのアニメーションの一部は、フェードアウトに微妙なウェイト時間を感じるものも。対策として、エフェクトの表示速度を早くしたり、MVのエフェクトを移植できるローンチプラグイン「AnimationMv.js」を使って解決するのも手です。

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プラグインに関しては、制作者の方々が移植中であり、まだ出揃ってはいません。なかには、引き継ぎが厳しいと報告されているプラグインもあるそうです。とは言え、短期間のうちにどんどん追加プラグインが投稿されていく様子はなかなか見応えがあります。

バグ・グラフィックの設定ミスらしきものはありますが、今のところ修正でどうにかなるレベルなので、普通に買って大丈夫。

なお、BGMこそ良質ですが、デフォルトの効果音の中には音が大きすぎたり高音過ぎたりなものも混じっているので注意。別番号の効果音に差し替えるだけでも印象がかなり変わります。

※2021年12月9日追記
RPGツクールMZ ver.1.4.0にて、賛否両論点としてあげたアニメーション機能が大幅に刷新され、従来の機能と併用してツクールMVと同様エディタ内で編集ができるようになりました。合わせて、プラグインなしでもツクールMVのアニメを利用できるように。テストしてみたところ、今の所問題なく動いています。めちゃくちゃ便利になりました。すごい。プラグインも数がだいぶ揃ってきたようですね。

誰にオススメ?まだ買わなくてもいい人は?

まず本作を買うのを特にオススメしたい方は、ツクールに触ったことのない初心者です。

MZは旧作と比べてもとっつきやすく、プラグインなしでもゲームを作るための機能やプリセットが十分用意されています。公式サイトにも制作ガイドが充実しており、ゲームづくり初心者が基礎を学ぶのに必要なことが揃っています。本格的なプログラミングやグラフィック・ゲームデザインに移行する前に、遊びながら作るために触ってみるのもアリです。

また、筆者のようにMV以前のツクラーにもオススメ。古いツクールユーザーなら、最新ツクールの使い勝手の良さを感じ取りやすいかと思います。

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逆に本作をオススメしない方はハッキリしていて、現在MVでプラグインを多用したプロジェクトを作っている方は、急いで買わなくても大丈夫そうです。

互換性のあるツールでなぜ即購入を勧めないのかというと、MVからMZは快適性にこそ手を加えられているものの、プラグインに関しては現状MVの方が圧倒的に多いため。引き継ぎ機能が充実しているとしても、採用しているプラグインが対応していない可能性を考えると、特に長期制作中&プラグインを多用しているものはMVで作ってしまうのがローリスクでしょう。

逆を言えば、制作が一息ついたタイミングならば、これまで用意したデータベースや素材を移す良い機会なのではないかと思います。

余談:RPGツクールシリーズの今後

現状MVから多くの要素が引き継がれたMZですが、VXからの2等身キャラやMV以降の1マス48×48の規格など、現在の2Dインディーゲー文化からは大きくかけ離れた独自文化を築いています。悪く言えば、癖がかなり強いです。

Steamレビューを見る限り保守的・汎用性に欠けたシリーズに対し批判も一定数あるようで、ユーザー内でも評価に差があるように感じます(海外レビューを翻訳ツールで読む限りはですが)。MZはシリーズでも高い売上を叩き出したMVの継承がコンセプトにあったのだと思いますが、もはや海外を含めたユーザーの意見は小さな存在ではありません。

そういった観点からも、今後ツクールがどういった方向に向かうのか、非常に興味があります。MVからの素材規格は、ホラーゲームブームで大きく注目された2000~XP期のツクールの普遍的な見た目から遠ざかっており、個人的にもそこに回帰したものも見てみたいと思っています。気が早い話ではありますが。

(僕が未だXPでゲームを作り続けているのは、ベースとなるグラフィック素材がオーソドックスなのが理由のひとつです)

一方で、素材やプラグインが足りないなら追加してみる、作ってみる、できないなら妥協するといった、これまでのシリーズ同様に制作を学ぶ余白が残されており、快適性など、これまでなおざりだった部分を改善してくれたため、僕個人は現状のツクールMZを推しています。

個人的にとても嬉しかったのは、「魔王物語物語」「ムラサキ」など往年の名作フリゲの作者であるカタテマのTetsu氏が、MZで制作した新作を発売数日で投稿してくれたこと。懐かしい作風で、昔のフリゲってこんな感じだったことを思い起こさせてくれました。

今後もMZに関する投稿をしていこうと思うので、興味がありましたらフォローのほどよろしくお願い致します。

それでは。


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