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夫の急死、それは地獄へのほんの序章に過ぎなかった。想像を絶する『不倫の真実』との闘いが始まった。Vol.5

 夫が数年前に脳溢血で急死しました。
 そして、夫に関する驚くような出来事が次々と明らかになりました。
 その事について、これから少しずつ投稿していこうと思います。

 これからお話しする事は全て、私の身に実際に起きた事です。
 私が自分に都合の良いように解釈していることや、記憶違いや勘違いもあるかも知れませんが、全て私の中での真実です。

 同じような経験をして苦しんでいる方に読んでいただいて、少しでも与えられる物や、何かの慰めになればと思っています。
 それ以外の方にも、「愛」や「結婚」、あるいは「不倫」というものが、どういうものなのかを考える機会にしていただけたら幸いです。



 ちなみに、全体のお話を書いた書籍をAmazonで販売しております。
 全体を先に知りたいと思ってくださった方は、ぜひご覧ください。



第2章 発覚 2.ディズニーリゾート


 私は数時間後にベッドから起き上がったが、それからどんどん怒りが湧いてきて、その日の夜も眠れなかった。

 時計を見ると午前3時だった。A子はあの様子では、全て話した事で罪悪感も無くなり、スッキリして、すやすやと子供達と一緒に寝ているのだろうと思った。
 そう思うと、あまりの怒りに我慢出来なくなって、彼女にラインメールをした。

「A子さん、あれからもずっと苦しくて苦しくて、眠れません。この四年間、あの時も、あの時も、夫とあなたに騙されていたのかと思うと苦しくて苦しくて仕方がないです。それなのに、あなたはもう過去の終わった出来事のようにあっけらかんとしているように見えました」

「最後には、『私に出来る事があれば何でもするから』とか、『二人で旦那さんの分まで長生きしようね』とか、『最後にハグしていい?』とか言って、笑顔でバイバイして帰りましたよね。私は途中から呆気にとられていました。あなたは私に話すことで、私に対する罪悪感から逃れられたのでしょうが、私はこれから何年先も地獄です」

「今、あなたがお付き合いしている人がもし不倫ならもうやめてください。もう人を苦しめるのはやめてください。あなたの子供達のことを考えてください。子供達は親が思う以上に色々な事を感じ取っているはずです」

「あなたの亡くなった旦那さんとの思い出は素晴らしいものでしたか? 私にはもう、そんなものはありません。それとも、私からそれを奪う事がお望みでしたか? そうだとしたら、成功しましたね」

「夫との結婚生活はそれほど長くなかったけど、私にたくさんの幸せをくれた事を胸に抱いて、これから前向きに生きていこうと、気持ちを切り替え始めていたところでしたが、それも奪われました。この苦しみがいつまで続くのか、終わる時が来るのか、それまで精神がもつのか、息子に何かしらの影響がでないのか、見当もつきません」

 私は思いつくままにメールを送り続けた。

 しばらくして、彼女から返事が来た。

「主人と死別して、今でも悲しみは消えません。学校や保育園の行事があるたび、どうしてここに主人がいないのか、いつも涙がでます。この姿を見せてあげられることはないのかと。私も苦しいです。あなたに話す事で罪悪感から逃れたなんて思ってない!」

——  はぁ⁉︎ 何言ってんの⁉︎ 自分の事⁉︎ 真剣に謝る気は無いの⁉︎

「でも、少なくともあなたには、旦那さんとの素敵な思い出があるでしょう⁉︎ 私は完全に奪われましたよ!」

「あなたにだって素敵な思い出があるじゃないですか! ◯◯◯◯さん」

——  何を言ってるのか、この女は! フルネームで私の名前を言って、『あなたはK男の正妻でしょ』とでも言いたいのだろうか。その思い出も何もかもをめちゃくちゃにしたくせに!

「もう今までの思い出を、前と同じ気持ちで思い出す事はできません。あなたは亡くなったご主人に浮気をされた事がありましたか? 私の気持ちが分かりますか? あなたがどんなに学校の行事などで辛い思いをしても、旦那さんとの良い思い出がありますよね?」

「二人の歴史、子供と言う最高の宝物。それは偽りない素晴らしいものです!」

——  ふざけるな! お前に言われたくない!

「本当に今まではそう思っていました。でも騙されている期間があまりにも長すぎて、あなたと夫のことを見ていた期間があまりも長すぎて、思い起こすと心当たりが多すぎて、とても受け入れる事が出来ません。あなたはそれほど長い期間、ご主人と親しい友人に騙されていた事がありますか?」

「学校の行事などで苦しいとか、ふざけないでください! だから何をしても許されるのですか⁉︎ あなたは自分のことばかりですね!」

「私の事は許さなくても、旦那さんの事は許してあげて下さい。あなたの旦那さんはあなたが思っている通りの素晴らしい方です」と返信が来た。

——  お前なんかにそんな事言われたくない! 何が許してあげてくれなんだ! 何が素晴らしい方なんだ! ふざけるな!

 怒りが爆発した。私は震える手で精一杯のメールをした。

「あなたは、ご主人が亡くなってから1年もしないうちに私の夫を誘惑し、ご主人との思い出が詰まっているはずの家に、子供達が居るにもかかわらず、私の夫を引き入れて関係を持った! ご主人を裏切り、子供達も裏切り、私を裏切り、幼稚園の仲間達も欺いていた!」

「そのあなたが、学校や幼稚園の行事で悲しいとか、子供達の姿を見せてあげられないとか、そんな事を言うとは、とても理解出来ません! あなたの不倫まみれの今の姿を、ご主人が見てどう思いますかね? あなたに『旦那さんのことは許してあげてくれ』とか、『素晴らしい人だった』とか、言われたくありません! 今は夫に対して何の感情も持てません!」

 そのあとA子から返事は返って来なかった。

 私はその後、何日も苦しみ続けた。毎日眠れず、食欲も無かった。
 度々パニック発作にも襲われた。それまで、パニック発作の頓服薬を年に数回飲むことはあったが、その頃には毎朝毎晩飲むようになっていた。 

 私は夫とA子にまつわる様々な事を思い出して苦しんだ。

 4年ほど前、灯りを作って飾った秋のイベントが終わり、我が家で集まって打ち上げをした時だった。
 A子が暑いと行って薄着になったり、髪をかきあげたりしては、夫に積極的に話しかけ、夫もデレデレしていた。A子はけっして美人というわけではないが、セクシーなタイプだった。
 あの頃からすでに、夫へのアプローチは始まっていたのかも知れない。

 その数ヶ月後の、冬のある日曜日、私の仕事中にA子からラインメールが来た。

「事情があって、N子さんが居ない時に申し訳ないですが、子供達とお宅にお邪魔して、遊ばせてもらっています」

 そして、その数時間後にまたメールが来た。

「勝手にお邪魔して申し訳ありませんでしたが、今、帰るところです。ありがとうございました」

 どうしたんだろうと思い、仕事を終えて家に帰ってから、夫に尋ねた。

 夫によれば、夫が息子と近所の本屋に行くと、A子が子供達とそこに居たそうだ。
 A子はその本屋の向かいにあるガソリンスタンドでタイヤ交換をしてもらっていたが、急な雪で混んでいて、かなり時間がかかりそうなので、その本屋で時間を潰していたという。
 彼女の下の子供はその時、2歳くらいで、店内をチョロチョロと走り回っていて、とても困っている様子だったそうだ。
 そこで夫が「良かったら、家で一緒に子供達を遊ばせますか? うちの子も喜ぶから」と声をかけたという。

 私はそれを聞いて簡単に納得してしまった。二人を信用しきっていたし、A子は夫を亡くして、親兄弟も近くに居ないのだから、色々と大変なのだろうと思った。

 だが、その頃二人は既に関係を持っていたのだろう。
 A子が『タイヤ交換をしている間、時間を持て余して困るから、車で迎えに来てもらいたい』と夫に言ったのか、そもそもタイヤ交換の話さえ嘘なのか、今となっては分かりようもない。

 いずれにしろ、二人を信じ切って、A子の心配までしている私を、二人で口裏を合わせてラインメールまで入れて、完全に騙していた。

 A子はディズニーリゾート好きだった。
夫を亡くした後、「子供達と気晴らしに行ったらハマった」と言って、子供達を連れて、年に4、5回は行っていた。
 夫もディズニーリゾートが好きで、二人はその話でよく盛り上がっていたようだった。

 夫が行きたがるので、私達家族も年に1、2回はディズニーリゾートに行っていた。
 だが、私は人混みに入るとパニック発作が出てしまうので、いつも入場せずに、隣のショッピングセンターで時間を潰していた。
 私は夫と息子が楽しんでくれればそれで満足だったし、夫もそれを理解してくれているはずだった。

 ある日、私と母と姉の3人で東京に行く用事ができた。だが、私はパニック障害のせいで、かなり前から電車に乗ることが出来なかった。
 そこで、夫に車を運転してもらって東京に行こうということになった。
 夫がいつもディズニーリゾートに行きたがっているのを母も姉も知っていた。
 だから、夫と息子も一緒に連れて行って、自分達が用事を足している間に、夫達はディズニーリゾートに遊びに行ってもらおうということになったのだ。

 夫に運転してもらう代わりに、往復の交通費、宿泊費、食事代、それにディズニーリゾートの入場料やお小遣いまで母が奢るという話に、夫は大喜びした。

 東京に行く数日前になると、夫が私に言った。

「今日、フェイスブックを見たら、俺達がディズニーに行く日に、偶然A子さんも子供達とディズニーに行くという投稿をしてたんだよ。だから、『俺達もその日にディズニーに行くよ』とメッセージを送ったら、A子さんが『1日目にディズニーシーに行って、2日目にディズニーランドに行く』って。でも、俺らはその1日目にディズニーランドの方に行くから、偶然会うことも無いみたいだけど」と言った。

「へぇー、そうなんだ」と私は特に気にしなかった。

 その当日、予定通り夫の運転する車で東京に着くと、私と母と姉は東京での用事に向かい、夫と息子はディズニーリゾートに向かった。
 そして夕方になり、母と姉は、大学に通っている姉の息子のアパートに泊まらせてもらうことになっていたので、そこで別れた。

 私が宿泊先のホテルで夫と息子の帰りを待っていると、11時過ぎになってやっと帰ってきた。

「ずいぶん遅かったね」

「やっぱり、ディズニーランドでA子さん達に偶然会って、子供達が大喜びしてたし、一緒に回ろうという事になったよ。それでずっと一緒にいて、夕飯も近くの焼肉屋で一緒に食べて遅くなった」

「でも、A子さん、今日はディズニーシーに行ったんじゃなかったの?」

「元々はシーの方に行く予定だったらしいんだけど、ネットで混雑予定を見たら、シーがあまりにも混みそうだったから、急遽、ランドの方に変更したんだって。シーには明日、行くそうだよ」

「そう。子供達が一緒に遊べて良かったんじゃない?」

「うん。それに親の方も一人より二人だと何かと楽だったよ」

 私はなんと間抜けだったのだろう。私自身がなかなか夫達と一緒にディズニーリゾートに入れないから、大勢でわいわいと楽しんで来てくれたことを、むしろ有難いと思っていたのだ。

 そして、夫もA子もなんと小賢しいのだろう。二人は最初から一緒に行動するつもりだったのだ。

 夫はあの日の朝、私と母と姉を車に乗せて東京まで行き、私達を降ろした後、ディズニーリゾートで不倫相手とその子供達と合流して、母からもらったお金で皆で焼肉を食べ、その夜は私とホテルに泊まり、次の日は母と姉とまた合流して、東京で買い物をしたり母に食事などを奢ってもらって、帰ってきたのだ。

 夫はなんという神経の持ち主なのだろう。怖いもの知らずにも程がある。

 たしか、あのあと母が「K男さんに『ディズニーリゾートで使って』と2万円も渡したはずなのに、私達にディズニーのお土産を一つも買ってきてくれなかったよね」と言っていたことを思い出した。

 夫が亡くなる約1ヶ月前の、ゴールデンウィーク中の出来事だった。

 夫はローカルヒーローの企画運営をしており、近くの地場産センターから依頼で、毎年のゴールデンウィークはそこでヒーローショーをしていた。
 私は飲食店での仕事が忙しくて休みが取れないので、夫は毎年、息子を連れてそのヒーローショーを運営しに行っていた。
 ショーが終わると、その地場産センターで焼肉用の肉をたくさん買って帰り、我が家の前で打ち上げと称して、皆でバーベキューをするのが毎年の恒例行事だった。

 そして、そのヒーローショーを、A子が子供達を連れて毎年見に来ていた事は、夫から聞いて知っていた。

 その日、私が仕事を終えて家に帰ると、皆がバーベキューをしている中に、A子とその子供達の姿があった。

「あれ、来てたの?」

「今年もヒーローショーを見に来てたんだけど、子供達が喜んで一緒に遊び始めちゃって。そしたら、ご主人が『これからバーベキューやるから一緒にどう?』って誘ってくれたから、来ちゃった」

 私はそれを聞いて納得し、そのままバーベキューに加わった。
 いつも胸元の開いた服を着ているA子は、途中で寒くなったのか、夫のスウェットパーカーを借りて堂々と羽織っていたが、私はそれを見ても何とも思わなかった。

 その後、バーベキューが終わって皆が帰ったが、A子だけ帰らず、「子供達が楽しそうで、なかなか帰りたがらないね」などと言って、我が家のリビングルームに1時間ほど残っていた。
 何も知らない私は、繁忙期の仕事でかなり疲れてはいたが、A子にお茶を出したりして、話し相手になった。
 夫はバーベキューの後片付けをしながら、その辺をウロウロしていた。

 その時、夫もA子もどのような気持ちでいたのだろうと思った。
 夫の無神経さにも腹が立ったが、A子は私に対して何の遠慮も無く、常に堂々としていた。
 なんと図々しい女なのだろうと思うと、怒りで頭がどうにかなりそうだった。

 A子は夫の通夜にも、そして翌日の告別式にも子供達を連れて現れた。

 親族でもないのに通夜にも告別式にも参列する人はまれで、しかも子連れで来ていたので目立っていたらしく、後で母や姉にも、そして夫の両親にもどういう人なのかと訊かれた。
 その時は、2日も続けて参列してくれて有難いと思ったが、今になってみると、図々しすぎるA子の振る舞いに怒りが込み上げてきた。

 それにしても、夫がA子の家に行っていたのを、誰も見ていなかったのだろうかと思った。
 小さな町だし、A子の家の辺りには私や夫の知り合いが何人も住んでいたのだ。
 私の耳には入っていなかったが、本当は周りの皆が知っていて、私を憐れんだり、笑ったりしていたのではないだろうかと思った。
 そんな風に考えると、絶望的な気持ちになり、そこに住んでいるのも嫌で、すぐにでも引っ越したい気分だった。 

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主な登場人物

(年齢等は2019年6月時点)


・N子(主人公であり、著者) 
 47歳の主婦。結婚15年目。
 実家が営む日本料理店でパートタイマーとして働く。
 背が高く、ツンとすましているように見られがちだが、おしゃべりでおっちょこちょい。
 20年近くパニック障害を患っているが、理解ある夫と可愛い息子に囲まれ、念願の一軒家にも住み、悪くない人生を送っていると思っている。

・K男
 N子の夫。N子より三歳年下の44歳。
 父親が経営する塗装業の会社に勤務。離婚歴があり、前妻との間に娘がいる。
 背が低く、ぽっちゃり型。細いタレ目でいつもメガネをかけている。
 街づくりに積極的に参加し、器用で知恵や行動力もあり、人に頼られると張り切る性格。 

・A子
 N子のママ友。 五年前に夫を心不全で亡くす。
 中肉中背。美人ではないが、女子力が高く、色気があるタイプ。
 夫を亡くして他の保育園に移った後も、N子を含むママ友達と交流が続く。
 2年前に50キロほど離れた自分の地元に引っ越す。

・S子
 N子のママ友であるとともに、N子の息子が通った幼稚園の副園長。
 小柄で細身だが、丸顔で、笑うと両頬に出るえくぼが可愛い。
 N子とは、小学校でも息子同士が同じクラスで、関係が深く、仲が良い。

・S子の夫
 婿養子。寺の副住職。背が高く体重もあり、体格が良い。
 K男に家のリフォームを頼むなど、N子やK男と家族ぐるみで仲が良い。



登場人物相関図

(年齢等は2019年6月時点)

相関図(note)


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