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夫の急死、それは地獄へのほんの序章に過ぎなかった。想像を絶する『不倫の真実』との闘いが始まった。Vol.9

 夫が数年前に脳溢血で急死しました。
 そして、夫に関する驚くような出来事が次々と明らかになりました。
 その事について、これから少しずつ投稿していこうと思います。

 これからお話しする事は全て、私の身に実際に起きた事です。
 私が自分に都合の良いように解釈していることや、記憶違いや勘違いもあるかも知れませんが、全て私の中での真実です。

 同じような経験をして苦しんでいる方に読んでいただいて、少しでも与えられる物や、何かの慰めになればと思っています。
 それ以外の方にも、「愛」や「結婚」、あるいは「不倫」というものが、どういうものなのかを考える機会にしていただけたら幸いです。


ちなみに、全体のお話を書いた書籍をAmazonで販売しております。
 全体を先に知りたいと思ってくださった方は、ぜひご覧ください。


第2章 さらなる発覚 3.メール攻撃


 その後も私の怒りは治らず、夜中の3時頃に再びS子にメールを送った。

「くやしくて、くやしくて、全く眠れない! あなたから夫との話を聞いた時は、あまりのことに事実を受け止める事が出来ず、『私が15年間連れ添った夫はそんな人じゃない! 息子の父親はそんな人じゃない! 冷静になれ!』と自分に言い聞かせていました。でも、時が経つにつれて、色々な事を思い出したり想像したりして、憎悪が膨らんでいって、今では、はっきりと夫とあなたに憎悪を感じます。」

「夫の遺骨が家にあるのも嫌です。早くお墓を建てて納骨したいです。納骨されたら、あなたは毎日のように夫にお参りしたらいいんじゃないですか? そんなに慕っていたのなら、どうぞ遺骨は差し上げます。本当に夫を好きで尊敬していたんですか? 平気で家族を裏切っていたような人を」

「毎年の小学校の運動会の時は、私と夫が運んできたイスやベンチに座ってきて、一緒に運動会を見て、夫の両親とも平気で話をしていましたよね? 普通はとてもそんな事、出来ないんじゃないですか? 夫の両親がこの事を知ったらどう思いますかね? そのうち耐えきれなくなって夫の両親には話すかも知れません。事が事だけに他言はしないと思いますが」

「母親である私が憎悪の固まりになっているのがとても辛いです。息子に何か影響が出るのではないかと思うと辛いです。S子先生、どうしたら良いですか?」

 翌日の夕方になってから、ようやく返事が返ってきた。

「N子さん、本当にごめんなさい。謝って許されることではないと分かっています。N子さんとお母様やお姉様のことも苦しめてしまっていること、本当に申し訳なく苦しいです。自分のしてしまったことの罪の大きさ、事の重大さに苛まれています。人としてどうしようもなく愚かなことをしてしまっていました」

「家族に後ろめたさを感じ、ひどい母親だと自責しながらも、ご主人との関係をやめなかった自分が本当に馬鹿でした。N子さんから恨まれて当然です。恨んでも恨んでもはらしきれないほどのお気持ちであること、そんな気持ちにさせていることがまたどうしようもなく辛いです」

「自分がそれだけのことをしたのだから、この先も隠し続けて、嘘をつき続けていくことの苦しさ、明るみになることへの恐怖、N子さんはじめN子さんのご家族を苦しめていることへの罪の意識に苛まれて生きる辛さ、どんなに苦しくても耐えて生きていかなければなりません」

 私はすぐに返事をした。

「どんなに苦しくても耐えて生きていかなければなりません? 当たり前でしょ⁉︎ 自分も苦しいのだからわかって欲しいとか、勘違いしてませんか⁉︎ あなたは周りがどんなに苦しむのかも考えずに、夫との関係を2年以上も続けて、平気で私に笑いかけていたんですよ」

「もし周りに知られて、『同じクラスの〇〇くんのお父さんと〇〇くんのお母さんが付き合っていたんだって』と噂されたら、子供達がどんなに傷つくか! あなたの息子が、母親が自分のことを考えずに性欲に溺れていたと知ったら、どんなに傷つくか! そう思ってあなた達2人が思い止まることが無かったことが、本当に信じられません」

 その後、S子からの返事は無かった。というより、なかなか既読にならなかった。
 このころになると、既読になるのに2日位かかるようになった。私からのメールを見るのが怖いのだろう。

 その頃、私も母も姉も仕事が手に付かず、夫とS子の話ばかりしていた。そして、やはり夫の両親にこの事を知らせた方が良いのではないかと話していた。

 義父によるS子の家のリフォームは終わっていたが、S子の夫は新たに増築した倉庫に趣味の水槽などを運ぶ為に、義父からトラックを借りたりして、その頃、義父に頻繁に会っていた。

 もし、S子の夫が義父に「N子さん達、うちのS子を疑うなんて。そんな事あり得ないのにどうかしてますよね?」などと話したら、義父は「そんな事、俺は聞いていない! 一体どういう事なんだ!」と激怒して何を言い出すか分からないし、大ごとになるかも知れないのだ。

 だから、先に事実を話して、「S子の夫が何か言ってくるかも知れないが、孫の為に、どうか適当に話を受け流して欲しい」と言った方が良いだろう、という話になっていた。

 私はまたある事を思い出した。それは、夫とS子が深い関係になる数ヶ月前の秋のことだった。

 S子の実家の幼稚園はこの辺りでは最も古く、様々な伝統行事がある。
その中の一つに毎年の秋に行われる、『虫干し』という行事があった。

 大昔からの慣例で、毎年、その幼稚園の園児は地元の春のお祭りの行列に、特別な衣装を身につけて参加することになっていた。
 その行列に参加することや、その衣装を持っていることはその幼稚園の自慢の一つであった。

 女の子は赤い着物の上に白い袈裟のような丈の長い着物をはおり、金色の冠をつけ、榊の葉の束を手に持つ。
 そして、男の子は着物を着て、下に黒いレギンスを履き、その上に光沢のある紫や緑の着物をさらにはおり、腰には刀をさし、肩に編み傘をかける。
 それぞれに専用の足袋や草履もある。
 大昔にお母さん達が手作りをして、代々受け継がれている大切なものだそうだ。

 毎年秋になると、それらの衣装を箱から出し、園の体育館に吊るされたロープにかけ、風を通して、湿り気やカビや虫の害を防ぐ。それが『虫干し』だ。
 衣装は大小様々あり、おそらく100枚以上はあるだろう。
 PTAの母親達が総出でその衣装を干し、それが体育館で棚引く様子は壮観だった。

 母親達の中で一番の年長者で、PTA会長をしていた私は、前もって日にちを園と相談し、母親達に声をかけ、当日は先頭きってそれを行っていた。

 すると、干してある着物たちの間からS子がひょっこりと顔を出し、私に話しかけてきた。

「N子さん、ちょっと良いですか? あの、実は私、今年の園の作品展のワークショップで何をしたら良いか行き詰まっているんですけど、N子さんのご主人に相談させてもらっていいですか? ご主人は青年会議所のイベントとかでワークショップを度々やられているので、色々とアイデアをお持ちじゃないかと思って……」

 S子はその一年ほど前から、夫が器用で色々な事ができると知ると、幼稚園の傷んだ遊具や階段の手すりなどの修理を頼んだり、ヒーローショーの音声などをやっていると知ると、幼稚園の豆まきの音楽の編集を頼んだりして、とにかく何でもかんでも夫を頼るようになっていた。
 息子がお世話になっている幼稚園のお役に立っているのであればと、私はそれをむしろ誇りに思っていた。

 そしてS子は、次の日曜日に子供達を連れて我が家に来て、子供達を遊ばせている間に夫にワークショップの相談をしても構わないかと言った。
 飲食店で働いている私が日曜日に仕事を休むことはできなかったので、私はその場に居られないと思ったが、今までの付き合いがあったし彼女が3人の子供達を連れてくるので、特に気にしなかった。
 それに、私の息子は彼女の息子が大好きだったので、さぞかし喜ぶだろうと思ったし、彼女も本当に困って夫に相談したいのだと思ったのだ。

「私は仕事で居ないけど、よかったら遠慮なくどうぞ」と言った。それが大きな間違いだった。

 その日、S子と子供達は午前十時頃にワークショップの相談に来ることになっていた。
 私は彼女達の顔を見てから仕事に行こうと思っていたが、10時半頃まで待っても現れなかったので、会わずに仕事に出かけた。

 そして、夕方、家に帰ると夫に話しかけた。

「今日、S子先生達は来た?」

「来たよ。それでね、たったさっき帰ったばかりなんだよ」

 夫は苦笑いをして言った。

「えっ! そうなの⁉︎」

 私は驚いた。というのは、S子は私に午前中のうちに帰ると言っていたからだ。

 夫によると、あのあと待っていたが、S子達はなかなか現れず、結局11時半頃になってやっと現れたのだという。

「どうしたんですか?」

「実は、出掛けようとしていたら、夫に飼っている魚の餌にするダンゴムシを採るのを手伝うように言われて、子供達と手伝ってから来たので、なかなか来られませんでした」

 そして、S子が自分の夫に対する愚痴を話し始めたので、しばらく聞いていたそうだ。

 そして、それからしばらくすると、S子が言ったという。

「子供達がお腹が空いたみたいなのですが、どうしましょう?」

 夫が冷蔵庫を開けると焼きそばの材料があったので、焼きそばを作ってあげて、皆で食べたそうだ。

 その後、やっとワークショップの話になり、話がひと通り終わったが、S子は帰る様子がなかったという。
 そして、またS子の夫に対する愚痴や相談事を聞かされていたが、S子の一番下の娘がパンツにウンチをもらした。そこで、夫は今度こそ帰るだろうと思ったそうだ。
 ところが、S子がこう言ったという。

「娘がウンチをもらしたんですが、どうしましょう? 〇〇くん(息子)のパンツを借りても良いですか?」      

 そして、彼女は息子のパンツを自分の娘に履かせ、そのままずっといて、私が帰ってくる直前まで家にいたと言う。

 それを聞いた時、さすがにS子はちょっと図々しいなと思った。
だが、S子は元々天然タイプで、そういう事を悪気無くするところが彼女らしいとも思った。
 私は本当におめでたい人間だった。

 S子は私が不在の家に、実に5時間以上も家に夫と居たのだ。
 これをきっかけに、夫とS子の間に特別な空気が流れ始めたのではないだろうか。

 それを思い出したら、また無性に腹が立ち、S子にメールをした。

「毎朝、暗いうちに目が覚めて、夫がいないことと、あなたと夫が私を裏切って、私の前で笑い合ってたことを思って苦しいです。何度目が覚めても、この悪夢は絶対に消えて無くなることはないのだと実感して涙が出ます。毎日苦しくて、苦しくて、どうしたらいいですか?」

「夫が息子を可愛いと思わなかったはずはない! 私のことをどうなってもいいと思っていたはずはない!」

「最初から夫に気があったと認めて下さい。最初から下心があって、幼稚園の作品展のワークショップのことを相談したのだと認めて下さい。その気があって、私の居ない時に我が家を訪れ、5時間以上も居て、思わせぶりな態度を取っていたと認めて下さい!」

「あの時も、午前中に帰ると言ってましたよね? それがご主人にダンゴムシを取るのを手伝えと言われて、来るのが11時半頃になったと夫に言ったんですよね? 最初からご主人に、私の家に行く約束があると言っていれば、そんな事を無理強いされることはなかったはずじゃないですか? それを言っていなかったという事は、最初から下心があったという事じゃないですか⁉︎」

「あなたは、私のことを考えて何度も別れようとしたけど、夫が別れてくれなかったと言いましたよね? でも、どんなに夫が会いたいと言って連絡して来ても、あなたに会えるはずはないんです。ご主人が夜に出かけて、子供達が3人とも寝たタイミングで、あなたから誘わなければ、物理的に会えないのではないですか? あなたが夫に「旦那がなかなか出かけない」とか、「子供達がなかなか寝ない」と言えば、それで終わる関係だったのではないですか? 夫はあなたからそう言われれば諦めるしかありませんよね?」

「母と姉と話をしましたが、やはり夫の両親には知らせた方が良いと言う事になりました。あなたは『本当に素敵なおじいちゃまですね』と、夫に好かれるためか、私や夫の前でいつも義父を持ち上げていましたよね。でも、義父は怒ると何を言い出すか分からない人です。あなたのご主人がいつ義父に、あなたが疑われた事を話すか分かりません。もしそうなったら、義父は激怒してどうなるか分かりませんよ」

 S子から返事が来た。

「子供達の顔を見ていると、何でこんなことをしたのだろうと悔やんでも悔やみきれません。何よりN子さんを傷つけ苦しめていることが一番の罪です。本当に本当に申し訳ありません」

「作品展のワークショップの相談に行った時は、ご主人に対してそんな気持ちはありませんでした。純粋に技法を教えてもらおうと伺いました。何時頃、伺ったかも覚えていません。私がご主人の作品をいつも賞賛していたので、私がご主人に気があるのではないかと思わせてしまったのだと思います。」

「ご主人のお父さんことですが、激しい性格については分かっています。良い方だとは思いますが、家のリフォームで数ヶ月間、間近で色々な方に毎日のように怒鳴ったり、理不尽なことを言っている場面を見てきました。夫はご主人のお父さんには何も言わない気がします。ご主人のお父さんが今回のことを聞いて、どういう反応をされるのか想像がつきません」

 私はまた返事をした。

「あなたは、自分が気のあるそぶりをしたとは絶対に認めないつもりなんですね。夫があなたに『好きだから会って欲しい』と言うだけでも大変な事ですよね? よほど確信がないと言えませんよね? もし夫の勘違いだったら、その後気まずくなるし、『N子さんのご主人にしつこく言い寄られて困ってる』とか周りに言いふらされたら大変ですよね?」

「それに、夫がいつどうやって会えるか分からない人を、不倫相手として選ぶと思いますか? 私だって、あなたがどうやって家を出ていたのかが一番の疑問でしたよ。あなたがご主人の目を盗んで、子供達を置き去りにして、夜中に抜け出して不倫に走るタイプだとは、夫も知らなかったはずですよ。あなたの事を、お寺の娘で幼稚園の副園長を務めるまともな人間だと思っていたはずですからね」

「夫にどんなに誘われても、『2人だけで会うのは物理的に不可能ですよ』と言えば、夫は諦めたんじゃありませんか? あなたが『私が夫の居ない深夜に家を抜け出します』と言わなければ、どうやって2人きりになれるのか、夫は想像すら出来なかったはずです」

「この前は尊敬以上の感情があったと言いながら、今度は作品を賞賛していたのを勘違いされたと言うんですか? 状況を考えても、あなたから『夜中なら、2人きりになれる』と誘ったと考える方が、辻褄が合いますよ。『私はそんな気持ちは全くなかったけど、しつこく誘われてるうちに、私も好きかもと思い始めてしまった』などと、嘘をつくのはやめて下さい! 自分は純粋で、夫だけを悪者にしようとしているとしか思えなくて腹が立ちます!」

「もしこの事がバレたら、あなたのご主人が義父を脅迫してくるかも知れないという恐れがありました。もしそうなったら、ご主人にこのような事をよくお話しして、夫が一方的な思い込みであなたをたぶらかしたのではないはずだと、納得してもらうつもりです!」

 S子から返事が来た。 

「私の言葉が足りませんでした。最初は作品を賞賛していましたが、徐々に尊敬以上の感情が出てきたことを、ご主人が感じていたのだと思います。たぶん、私の気持ちに気づいて、確信したのだと思います」

「会いたいと言われたら、夫がいない日で子どもを寝かせ終わる時間を伝えて、その時間に来てもらっていました。最初に誘ったのはご主人ですが、私にもそういう気持ちがあったことは確かなので、誘いに乗って流された私も悪いのです。ご主人だけが悪い訳ではありません」

「N子さんのことを思うと申し訳なくて、やめなければ、やめなければと思いながら、ご主人を慕って頼りにしてしまっていました。ご主人は何でも出来る方だったので、仕事も色々お願いしていました。私の愚痴も聞いてくれました。終わりにする勇気が持てなかった自分が弱かったのです」

「A子さんのことは本当に知らなかったので、知ったときは驚いて、私との関係もやはり遊びだったのだと確信しました。気づかず慕っていた自分は本当に愚かでした」

——  『誘いに乗って流された私も悪いのです。ご主人だけが悪い訳ではありません』だって⁉︎ ふざけるな! 

 それにしてもS子という女は、人の夫によくも遠慮なく、なんでもかんでも頼りきっていたものだ。夫にしてみれば、何かにつけ自分に相談して頼ってくるS子が気になってくるのは当然だ。
 もし、夫の方から誘っていたとしても、深い関係になってはマズいとS子が距離を置くこともできたはずだ。S子は息子が通っていた幼稚園の副園長であり、教育者ではないのか。

 S子が誘われても無視し続ければ、夫だって諦めたはずだ。幼稚園の送り迎えはほとんど私がしていたのだから、顔を合わせる事もそれほど無かったはずなのに、それでも夫が誘い続けていたとしたら、可能性があるかのようにS子が何かと夫に相談の連絡を入れ、思わせぶりな態度をとり続けていたからに違いない。

『会いたいと言われたら、夫がいない日で子どもを寝かせ終わる時間を伝えて、その時間に来てもらっていました』とS子はメールで言ったが、S子は何時頃に3人の子供達が完全に眠ってしまうか、予め分かっていたとでも言うのだろうか。そのうち1人でもなかなか寝付かない場合はどうしたのだろう。それに、夫が会いたいと告げてから、会えるのに何日かかるか分からないのに、夫の性欲はそんなに我慢強いのだろうか。

『何度も誘われて流されてしまった』とか、『何度も別れたいとご主人に言いましたが、止められました』と無理やり関係を迫られていたような事を言ったくせに、今度は、「ご主人を慕って、頼りにしてしまっていました」とか、「A子の事を知らずに、慕っていた自分が本当に愚かだった」と言ってきたりして、都合の良いように話を変えている事に強い憤りを感じた。

 私はまたメールを返した。 

「夫の両親にはやはり話します。夫が前に言ってましたが、あなたのご主人は驚くほど口が軽く、パパ飲み会の席では、まずあなたの父親である住職の悪口に始まり、『ジジイが早く死んでくれないかな』と言い、それから、『しょうもない幼稚園なんて早く辞めてほしいんだけどね。S子は家事をろくにやらない』と言っていたそうです。その幼稚園を選んで子供を通わせている親達に対して」

「ご主人は今回のことも、他のお寺の若い人達に『うちのS子がK男さんと深い関係にあったと疑われているんだよ。いくらなんでもあり得ないのに、N子さん達は頭がおかしいんじゃないのかな』と言って、皆で笑い者にしている可能性は十分にあります。小さな町ですからね。そんな事から回り回って義父の耳に入り、大騒ぎになる可能性があります。だから、義父には事前によく話しておく必要があります」

 S子から返事が来た。

「夫が口が軽いのは事実です。だから、『今回、私が疑われたことは、絶対誰にも言わないように』と言ってあります。『私も噂をたてられると困るから、やめてくれ』と言ってあるので、誰にも言っていないはずです」

「こうなったら、今からお父様にお電話をしてお伺いし、正直に全てをお話します。他からお父様のお耳に入って激怒され、新盆直前に檀家をやめるとおっしゃったり、うちに抗議に来られるかもしれないので、そうなったら子供達を守りきることができなくなります。そういう状況になるのは、自分の犯した罪の大きさを考えたら当然のことですが。でも、子供達に罪はないので、何としても子供達のことを守らねばなりません」

 私はまたすぐにメールをした。

「待ってください! 勝手なことをされるのは困ります! あなたは自分の都合のいいように話をして、夫の両親が丸め込まれるかも知れません。今までも義父を持ち上げて、手玉に取ってきたように。こちらはこちらで、これからお墓のことや檀家の事をどうしたら良いか親族で話し合わなければならないので、義父に勝手に連絡しないで下さい」

 またすぐにS子から返事が来た。

「お願いできる立場でないことは分かっていますが、どうか子供達への被害がないようにしたいです。自分勝手なことを言って本当に申し訳ありませんが、お父様には、夫には絶対に知られないようにしたいということを分かっていただきたいです。夫はキレると何をするかわからないので、私は殺されるかもしれません。でも、子供達を傷つけられることは何としても阻止したいのです。どうかお願いします」

——  何を言ってるんだ! その可能性が出てくると分かっててやってたんだろ! ふざけるな!

 私はS子への怒りで頭がどうにかなりそうだった。

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主な登場人物

(年齢等は2019年6月時点)


N子(主人公であり、著者) 
 47歳の主婦。結婚15年目。
 実家が営む日本料理店でパートタイマーとして働く。
 背が高く、ツンとすましているように見られがちだが、おしゃべりでおっちょこちょい。
 20年近くパニック障害を患っているが、理解ある夫と可愛い息子に囲まれ、念願の一軒家にも住み、悪くない人生を送っていると思っている。

K男
 N子の夫。N子より三歳年下の44歳。
 父親が経営する塗装業の会社に勤務。離婚歴があり、前妻との間に娘がいる。
 背が低く、ぽっちゃり型。細いタレ目でいつもメガネをかけている。
 街づくりに積極的に参加し、器用で知恵や行動力もあり、人に頼られると張り切る性格。 

A子
 N子のママ友。 五年前に夫を心不全で亡くす。
 中肉中背。美人ではないが、女子力が高く、色気があるタイプ。
 夫を亡くして他の保育園に移った後も、N子を含むママ友達と交流が続く。
 2年前に50キロほど離れた自分の地元に引っ越す。

S子
 N子のママ友であるとともに、N子の息子が通った幼稚園の副園長。
 小柄で細身だが、丸顔で、笑うと両頬に出るえくぼが可愛い。
 N子とは、小学校でも息子同士が同じクラスで、関係が深く、仲が良い。

S子の夫
 婿養子。寺の副住職。背が高く体重もあり、体格が良い。
 K男に家のリフォームを頼むなど、N子やK男と家族ぐるみで仲が良い。



登場人物相関図

(年齢等は2019年6月時点)

相関図(note)


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