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夫の急死、それは地獄へのほんの序章に過ぎなかった。想像を絶する『不倫の真実』との闘いが始まった。Vol.8

 夫が数年前に脳溢血で急死しました。
 そして、夫に関する驚くような出来事が次々と明らかになりました。
 その事について、これから少しずつ投稿していこうと思います。

 これからお話しする事は全て、私の身に実際に起きた事です。
 私が自分に都合の良いように解釈していることや、記憶違いや勘違いもあるかも知れませんが、全て私の中での真実です。

 同じような経験をして苦しんでいる方に読んでいただいて、少しでも与えられる物や、何かの慰めになればと思っています。
 それ以外の方にも、「愛」や「結婚」、あるいは「不倫」というものが、どういうものなのかを考える機会にしていただけたら幸いです。



 ちなみに、全体のお話を書いた書籍をAmazonで販売しております。
 全体を先に知りたいと思ってくださった方は、ぜひご覧ください。




第2章 さらなる発覚 2.ご主人のことが好きでした


 私は夫とS子が関係を持っていた事を、世間にはもちろん、夫の両親にも、S子の夫や親にも話すつもりはなかった。

 まず、S子の夫がこの事を知ったら何をするか分からない。
 S子の夫は県外の出身で、実家がやはり寺の長男だった。本当は寺の跡継ぎのはずだったのだが、実家を捨て、地元も捨て、たった一人で田舎に来て、S子の寺に婿養子に入ったのだ。
 もし、彼がこの事を知ったら、S子や子供達を殴り、そして、S子の両親にも手を出す可能性があった。

 それから、S子達の家は義父と夫がリフォームをしたばかりだった。私が彼だったらその家に住みたくもない。
 S子の夫が家の中をめちゃくちゃに壊して暴れたり、義父に数百万円のリフォーム代を返せと言ってくる可能性もあった。

 そして、彼は最終的には不倫の事を周りの人々にぶちまけて、自分の地元に帰ることになるだろう。私ならそうする。そうなればS子の子供達はどうなるのか。

 さらには、騒ぎが大きくなって世間の人々が知ったら、私達は好奇の目に晒され、噂話が息子の耳にも入るかも知れない。そうなれば息子も私の周りの人達もどんな目に遭い、どんなに傷つくことか。 

 S子の両親にも話せないと思った。
 私の実家の店は老舗の料亭だ。法事などでよく利用されることから、昔から地元の寺との関係がとても深く、切っても切れない関係だった。
 しかもS子の家の寺は地元では位の高いお寺だった。もしその寺との関係が悪くなってしまったら、この先どうなってしまうのか見当もつかなかった。

 そして、夫の両親に対しても、S子の実家の寺の檀家になってしまったので、話してしまえば、これからどうなってしまうか分からないと思った。

「悔しいけど、この事はS子を含めた四人で墓場まで持っていくしかない」と、母と姉と話していた。

 それから数日後、S子から謝りに行きたいというメールが入った。
姉が白状させた時、私に直接、謝るようにと言われたらしい。

「夫がプレゼントした服を全部と、あなたにあげた夫の絵本と漫画本を全部返してください」と私は返した。

 S子は夫の死後、息子を彼女の家に遊びに来るように誘っては、遊んだ後に我が家に送って来て、家に上がり込んだ。
 そして、夫の仏壇に線香をあげたり、「以前、ご主人から素敵な絵本を借りたことがあったけど、その本はどこにあるのかしら」と言ってきた。そこで、私はS子に夫が購入していた絵本を何冊か譲ったりしていた。
 夫は絵本好きの彼女と話を合わせるために、例の『絵本ナビ』というサイトに毎月会員費を支払っていたのだろう。

 彼女は漫画本も大好きだった。特に、あの有名な『ガラスの仮面』という漫画本で夫と話が盛り上がっていたらしく、夫が持っているその漫画本を欲しがったので、全巻を彼女に譲っていた。

「どうぞ、どうぞ」と彼女を家に上げ、絵本や漫画本を彼女に譲ったりして、私はなんとお人好しで、そして、とんでもなくマヌケだったのだろう。

 S子はたくさんの絵本と漫画本を入れた紙袋を重たそうに抱えて、我が家にやって来た。

「あっ! すみません」玄関先で紙袋が切れた。

「別にいいです」そう言いながら、私はその袋を受け取った。

 夫がプレゼントした服はすでに全部ゴミに出したそうだ。疑われた時点で証拠隠滅をしたのだろう。

 部屋に案内すると、すぐにS子は言った。

「N子さん、申し訳ありません! N子さんのご主人のことが好きでした。申し訳ありません!」

 ——  はぁ⁉︎ 好きでした⁉︎ 純粋ぶってるのか!

 いきなり激しい憤りを感じた。

 私は早速、S子に疑問を投げかけた。
まずは、夫とS子がいつ、どこで、どうやって会っていたのかということだ。

 彼女は平日の昼間は幼稚園の副園長として忙しく働き、夜と週末は3人の子供の母親として忙しく過ごしているはずだった。
 以前、S子は私に『トイレに入っている時だけが一人になれる時間なんです』と言っていたほどだ。
 父親なら、母親に子供達を任せて夜に出かけることは簡単だろうが、母親はなかなかそういう訳にはいかないはずだ。
 いったい、そんな時間がいつあるのか不思議だった。それに、どこで会うというのか。A子の時とはわけが違うのだ。

 S子によれば、まず、S子の夫が夜に出掛けて、子供達が寝た後、夫に連絡を入れる。
 そして、夫に近くの公園の駐車場に車で来てもらい、車の中で30分位会っていたそうだ。

 S子の家から公園の駐車場は目と鼻の先で、歩いて1、2分の距離だった。
 そして、S子の夫は飲みに出かける事も多いが、水槽で魚を育てるのが趣味で、近くにその水槽を置く場所を借りており、そこで魚の餌をやったり様子を見たりするために、毎晩のように外出していたそうだ。

——  子供達を家に置き去りにして、夜中に会っていたとは……

 S子の一番下の娘は、その頃まだ幼稚園にも通っていないほど小さかったはずだ。
それをさせていた夫も最低だ。

 それにしても、よくS子の夫にバレなかったものだと思った。
 彼が借りていた水槽のある場所は、歩いてすぐに家に戻れるようなとても近い所なのだ。
 S子も、そして夫も、なんと怖いもの知らずなのだろう。

 30分で何をしていたのかは訊く気にならなかった。
 S子は「会って話をしていただけです」と言う事も出来たかもしれないが、そうは言わなかったし、大人の男と女なのだから、する事は決まっていた。

 それから、どういうきっかけで深い関係になったのかを訊いた。

 彼女によれば、夫からメールで『あなたの事が気になって仕方がないから、二人だけで会って欲しい』という内容の連絡が来るようになったという。
 S子は全くその気が無かったので、しばらくの間は『気のせいじゃないですか?』などと言ってごまかしていたが、次第に『自分も好きかも』という気持ちになって来たという。

 そして、夫から「もやもやした気持ちをどうにも抑えられないから、1回だけでも良いから二人きりで会って欲しい」と言われ、断りきれずに近くの公園の駐車場で会ったそうだ。
 そこで無理やりキスをされて舞い上がってしまい、次に会う約束をしてしまったという。

 それは、2年以上前の、子供達が幼稚園の年長組の冬だったという。
 それ以来、月に1回くらいの頻度で会っていたそうだ。 

 彼女の話を全て鵜呑みにしたわけではないが、夫の方から誘ったと聞いてショックだった。
 しかも、2年以上も前からだったという事にも衝撃を受けた。

「まさか、二人で一緒になろうとか考えていたわけじゃないよね?」

「ご主人は『バレたら一緒に逃げよう』と言っていましたが、本心では無かったと思います」

——  はぁ⁉︎ そういうこと言うなよ! 口から出まかせを言ってたとしても傷つくだろうが!

『本心では無かったと思います』と言うものの、S子は平気でそういう事を口にした。
 A子の時の方が生々しい話をしなかっただけマシな気がした。

 S子の顔をよく見てみると、なるほど、姉の言う通り、泣きながら話をしているように振る舞ってはいるが、涙が流れていないし、ボソボソと喋っているだけで、声が乱れていなかった。

——  たいした女だ。私を何年も騙し続けて、にこにこと平気な顔をしていられただけのことはある。

「私や周りの人達のことを考えて、別れようとは思わなかったの?」

「私は何度も『別れたい』とご主人に言いましたが、止められて、別れることが出来ませんでした」

——  ふざけるな! 本気で別れたいと思えば、本気で拒否すれば、いつでも別れられるだろうが!

 死人に口無しで、全て夫が悪かった事にするつもりなのだろうと思った。

「ご主人のことはどう思っているの? 裏切って平気なの⁉︎」

「夫は暴力的で、自分の思い通りにならないと気が済まないタイプなんです。婚約中にそれに気が付いて、両親に結婚をやめたいと言いましたが、『お寺の世界ではそういう事は出来ない』と言われて、婚約破棄できませんでした」

 ——  本当なのだろうか。子供を3人も作っておいて…… 自分がした事を正当化したいだけなんじゃないのか。 

 そこまでの話を聞いて胸をえぐられるような気持ちだったが、私にも妻としてのプライドがあった。
 S子にうろたえているところを見られたくなかったし、夫が彼女に本気だったわけでないと言いたくなった。
 そこで私はA子の話をもう一度して、「K男は性欲がとても強いタイプだったから、自分がもっと相手をしていれば違っていたかも知れない」と言った。

「とにかく、この事がご主人や世間に知られたら大変な事になるし、子供達がどんなに傷つくか分からない。だから、自分はこの事をご主人にも、誰にも話すつもりはないから、あなたも誰にも話さないように」

「ありがとうございます。よろしくお願い致します。私に出来ることは何でもします」と彼女は言って帰っていった。

 結局、私が逆上してS子に怒鳴ることは無かったし、この事を誰にも話さないと言った。
 S子にとって好都合だったことだろう。その時点では、彼女は助かったと思ったかもしれない。

 だが、A子の時もそうだったが、本当の怒りというものは後からジワジワと沸いて出てくるのだ。
 それから、私は毎日のようにS子にラインメールで気持ちをぶつけるようになった。
私は狂い始めていたのかも知れない。

「S子先生、やっぱりあなたと夫のことが頭から離れません。あなたが何年も、何も知らない私に笑顔で話しかけてきたことや、夫とあなたが二人きりでイチャイチャしてるところを想像して、頭がおかしくなりそうです」

「あなたは夫に何度も誘われたと言いました。確かに夫の方から声をかけたのかも知れません。でも、お互いの立場を考えたら、夫が何の脈も無い相手をそんなにしつこく誘うわけはありません。あなたの方だって好きだと言うサインを出していたに違いないはずです。私だって、あなたがかなり夫のことを慕っているとは思っていましたよ」

「世間の人々にバレたら、うちの店とお寺様達との付き合いはどうなるのでしょう。私や母や姉は噂のネタになって笑われるでしょうね。そして何よりも、あなたのご主人がどう出るか。『妻を寝取った男の為に、一所懸命、お通夜でお経を読んでいた』と世間の笑い者になり、プライドをズタズタに傷つけられるでしょうね」

「ご主人は、あなたにはもちろん、子供達にも暴力を振るい、『あいつらがリフォームした家になんか住めるか!』と言って家をめちゃくちゃに壊し、義父に『払った金を全部返せ!』と言うかも知れないですよね。だから、なんとかなんとか耐えているのです。でも、どこまで持ち堪えられるのか保証は出来ません。それをご承知おき下さい」

「何度も私のことを考えて別れようとしたけど、夫に止められたって言いましたよね⁉︎ でも、本気でやめようと思ったらやめられたはずです。死人に口無しとばかり、都合の良いことを言わないでください!」

「バレたら自分の子供達がどんな目に合うか、どんな思いをするか考えなかったのですか⁉︎ それでも母親ですか⁉︎ こんなメールを送り続けなければいけないとは、自分が本当に嫌な女みたいで辛いです。なぜこんな思いをしなければいけないんでしょうか?」

 私は返事が来るまで、何度もメールを送り続けた。そして、数時間後にやっと返事が来た。

「N子さん、苦しくさせて本当にごめんなさい。N子さんは何一つ悪くないですし、嫌な女性なんかじゃありません。N子さんをそんな気持ちにさせている私が何より悪いのです。自分のした事を悔やんでも悔やんでも悔やみきれません」

「私がご主人に尊敬以上の気持ちを持っていたことを、ご主人も感じ取っていたのだと思います。感じ取られるように私もしていたのかもしれません。結果的にご主人の誘いに私の理性が勝てず、自分の立場を省みることより、好きという感情に負けてしまったのですから、私も悪いのです」

「やめようと思ったし、ご主人に止められてやめられなかったのも本当ですが、私の心の弱さが原因です。色々なことで助けていただくうちに、いつの間にかご主人の存在に依存してしまっていました。N子さんのご主人なのに、そんな風に思ってしまっていたことが大間違いでした。N子さんのこと、子供達のことを考えたら、キッパリと絶ちきる気持ちを強く持たなければいけなかったのに、それが出来なかった私は最低な人間です」

「ご主人のこれまでのご活躍は、N子さんとの結婚生活という基盤があったからこそです。それは絶対的なことですし、ご主人は『あなたは自分の生活に不満だらけだけど、俺は今の生活に不満はない』と言っていました。だから、私との関係はただの遊びで、本気ではなかったのだと思います。何より大切なのはN子さんとの生活なのだろうと感じていました」

「今は、N子さんを深く傷つけて苦しめてしまっていることへの強い後悔と懺悔の気持ちと、事態が明るみになって、N子さんがおっしゃったような事になる日が来るのではないかと、正直生きた心地がせず、重苦しい気持ちの毎日です。N子さんこそ、私のせいでこんなに辛いのに、こんなこと言ってごめんなさい」

 彼女がそう言っても、本心かどうかは分からないと思った。
 何を言われても下手に出るしかない。私にこの事をバラされたらS子は終わりだ。私を怒らせないようにするしかないはずだ。

 それにしても、彼女は『ご主人に尊敬以上の気持ちがあった』と言っておきながら、『誘いに負けてしまった自分も悪い』と言った。
要は、『誘ったご主人の方が悪いけど、自分も少しは悪かったです』とでも言いたいのだろうかと思って腹が立った。

 S子からのメールは続いた。

「今回のこと、全力で隠しとおす覚悟をしています。絶対に墓場まで持っていく覚悟です。夫には、お店に呼ばれた時のことを『私がK男さんから洋服を受け取ったり、お通夜の時に泣いたりして、誤解を招く行動をとったことを謝って来た。尊敬はしていたけど、それ以上の感情はなかった』と伝えています。でも、妻が疑われて呼び出されたことを未だによく思っておらず、怒りの矛先がお姉さんやN子さんに向けられないように何とか食い止めるようにします。本当にごめんなさい」

 私は驚いた。どこまでS子は自分の夫に話をしたのだろうか。すぐに訊き返した。

「服を受け取ったことを話したんですか? ご主人に何か言われたら、服をプレゼントしたと思ったのは私の勘違いで、服は夫の仕事場の倉庫にあったと言おうとしていました。ご主人に言ったのはスウェットパーカーのことだけですか? からすのパンやさんのエプロンはどうですか? アフタヌーンティーのマフラーやミッフィーのエプロンはどうですか? ご主人に何をどう話したか詳しく教えてください。ご主人に何か言われたら口裏を合わせなくてはいけないので。今は子供達の事を考えるしかないです」

「あなたは墓場まで持って行く覚悟だと言いましたが、服を受け取ったことを話したとなるとそう簡単ではないです。なぜ服を受け取ったことを今まで隠していたのか、そして、なぜ夫があなたに服をプレゼントしたのか、ご主人は考えますよね。私もそうでしたが、疑い始めたら色々な事を思い出し、疑惑が次から次へと膨らんでいきますよ!」

「怒りの矛先を我々に向けているそうですが、そう言ってあなたにカマをかけているのではないですか? ご主人にしてみれば『妻を疑っておいてよく平気だな。謝りにも来ないで』と思うのが普通でしょう。だからもし、私がご主人に何か訊かれたら、『S子先生は否定しましたが、私は今も半信半疑です。今となっては、何があったか知りようもありません』と言うしかありません」

 S子から返事が来た。

「夫にはスウェットパーカーや他のエプロンのことは話していません。『K男さんのパソコンに、からすのパンやさんのエプロンの購入履歴があってそれで呼ばれた』と話しました」

「『それは、私も同じ物を持っているけど、自分で買った。でも、Tシャツをもらってしまったことはある』と言ったら、夫は『そういえばそんなこと言ってたね。子供達にも何かのTシャツくれたもんね』と全く追及しませんでした。ご主人が私や子供達に灯りのイベントのTシャツをくれたことがあり、夫もその事だと思っているようです。だから、他のエプロンや服のことは話していません」

「『Tシャツを受け取ったり、お通夜の時に泣いたり、誤解を招く行動をしたことを謝ってきた。色々できた人だから尊敬していたし、仕事もしてもらって感謝している。でも本当にそれ以上の気持ちは無かった』と話しました」

「もし何か言われたら、N子さんは『夫がエプロンをプレゼントしたと思ったが、それは仕事場の倉庫にあった』と伝えてください。本当に申し訳ありません」

「今のところ夫は、私とご主人のことは疑っていないと感じています。あるのは、N子さんのおっしゃるように、妻が疑われたことへの憤りです。全力で隠しとおします。隠しとおさなければならないと覚悟しています」

 私はなんだかすごく腹が立ってきた。

——  何が『全力で隠しとおします。隠しとおさなければならないと覚悟しています』だ! お前にとっては好都合この上ないだろ。バレたらお前は終わりなんだから! 

「分かりました。それにしても、ご主人は本当に哀れですね。それから、私も……」

「子供達の為に隠しとおさなければならないとはいえ、長い間、あなたと夫に騙されたうえに、さらに今、死に物狂いで耐えなければならないとは、本当に自分が哀れです」

「母も姉も『どうして騙された続けた私達がこんなに苦しい思いをしなきゃいけないのか。K男さんもS子さんも、よくもまあ、長い間とんでもないことをし続けてくれたもんだ。バレたらどれだけ多くの人達が傷つくのか考えた事はなかったのかね。子供達のことが頭をよぎる事はなかったのかね。それに、本当に誰にも気づかれないとでも思っていたのかね』と、頭を抱えています」

 それにしても、夫の無謀さが恐ろしくなり、ふと、グーグルマップで調べてみた。

 我が家からS子の家までは、直線距離で約600メートル、そして、我が家からA子の家までは約550メートルだった。どちらも、歩いても十分もかからない距離だ。
 そして、A子の家とS子の家も直線距離で約550メートルだった。
 地図上で見ると、我が家とA子の家とS子の家が、狭い範囲でほぼ正三角形を成している。

 ——  まるで、魔の三角形だ! 夫はその三角形の中で巧みに夜這いをしていたのだ!

 世間にバレたら、『平成の夜這い事件』と騒がれてもおかしくないと思った。
 絶望的な気分だった。息子の為になんとか正気を保っていたが、息子がいなければどうなっていたか分からない。




主な登場人物

(年齢等は2019年6月時点)


N子(主人公であり、著者) 
 47歳の主婦。結婚15年目。
 実家が営む日本料理店でパートタイマーとして働く。
 背が高く、ツンとすましているように見られがちだが、おしゃべりでおっちょこちょい。
 20年近くパニック障害を患っているが、理解ある夫と可愛い息子に囲まれ、念願の一軒家にも住み、悪くない人生を送っていると思っている。

K男
 N子の夫。N子より三歳年下の44歳。
 父親が経営する塗装業の会社に勤務。離婚歴があり、前妻との間に娘がいる。
 背が低く、ぽっちゃり型。細いタレ目でいつもメガネをかけている。
 街づくりに積極的に参加し、器用で知恵や行動力もあり、人に頼られると張り切る性格。 

A子
 N子のママ友。 五年前に夫を心不全で亡くす。
 中肉中背。美人ではないが、女子力が高く、色気があるタイプ。
 夫を亡くして他の保育園に移った後も、N子を含むママ友達と交流が続く。
 2年前に50キロほど離れた自分の地元に引っ越す。

S子
 N子のママ友であるとともに、N子の息子が通った幼稚園の副園長。
 小柄で細身だが、丸顔で、笑うと両頬に出るえくぼが可愛い。
 N子とは、小学校でも息子同士が同じクラスで、関係が深く、仲が良い。

S子の夫
 婿養子。寺の副住職。背が高く体重もあり、体格が良い。
 K男に家のリフォームを頼むなど、N子やK男と家族ぐるみで仲が良い。



登場人物相関図

(年齢等は2019年6月時点)

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