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純愛ディソナンスの主人公に全く共感できない件

純愛ディソナンス、学園恋愛ドラマと思合わせておいて実は不倫ドロドロ系ドラマだったという、学園ドラマ大好きな娘の期待を大きく裏切ったドラマである。

主人公の冴は、ほんの一時期音楽の教師として赴任した正樹と恋に落ちるが、愛菜美の画策で引き離されてしまい、物語はいきなり5年後に展開。
そこで冴と正樹が偶然の再会をするも、正樹は既に愛菜美と結婚して既婚者になっていた。
それでも2人は惹かれ合い…というのが大筋のストーリーだ。

結婚してからというもの、すっかり既婚者の立場でドラマを見るようになってしまった私。
大抵の不倫系ドラマは妻(もしくは夫)が悪役的立場になるが、私はどうしても悪役の心情に共感してしまう。

恋愛ディソナンスも例外ではなかった。
主人公の冴に全く共感できない。
というか、反発しかない。

  • 毒親は気の毒だが、結局いつでも逃げ出せる状況だったらしい(高校卒業後にあっさり似て出している)

  • いつも他力本願。母親から逃げるのも自分に恋する男にとことん甘えている

  • 小説家になりたい夢がありながら、高校卒業後も何も成し遂げずフリーターをしているだけ

  • 大した能力があるわけでもないのに、やたらと強気

  • 結局小説家の夢も自分から行動を起こさず、慎太郎がこっそり応募していいところまで行って自信を持つというどこまでも他力本願

  • 正樹が既婚者だと知っても図々しくアプローチを止めない

  • 正樹が結婚しているのに心のどこかで「私のことが好き」という思い込みがある(だから図々しくアプローチできる)

  • 正樹を好きなのにその妻である愛菜美の力を借りようとしている矛盾

  • 愛菜美の画策により自分と正樹が結ばれなかったと思い込み(これがなくても結ばれたかどうかなんて誰もわからん)、現在妻である愛菜美に宣戦布告する

  • 正樹との恋がうまくいかないと思った直後に慎太郎を受け入れる都合の良さ

  • 精神的不倫をしているのに、愛菜美が精神的ダメージを受けて書けなくなっても全く良心が痛まない図太すぎる神経

  • 正樹と両思いになったとたんに、さんざん助けてくれた慎太郎をあっさり振る冷酷さ

  • 慎太郎に頼って同居生活をしていたのに、男ができた途端同性を夢見て自立したつもりで2人で住む部屋を探す勘違いなところ

  • 自分がやってきたことを棚に上げて慎太郎の行為に激怒する自分勝手さ

おおっと、ほぼ悪口だ。
しかし、物語を通して彼女の魅力が全く伝わってこない。
「毒親に縛られた可哀想な美少女」というのは、確かに男心をくすぐる存在だが、5年後の冴は人間的魅力が薄い自分勝手で世間知らずな女というイメージだ。
顔だけは可愛いが。

一方、悪役である愛菜美は「一途な思い故に敵を排除する」という一貫性がある。
冴と正樹のハグ写真をばらまいたのも、正樹を自分のものにしたいという目的があってこそ。
その後彼女は小説家として成功するが、目的のために頑張る努力家なのだろう。
愛菜美も毒親に育てられており「愛し方、愛され方がわからない」というハンデを負っている。
歪んだ愛情は痛々しくも悲しいし、写真をばらまいたのは確かに酷い行為だが、それでも「夫の不倫を当然受け入れるべき立場」とはまったく思えない。
周囲に牙をむきつつ自分を傷つけていく愛菜美を見るのは痛々しく辛い。

慎太郎が正樹の就職したピアノ教室に落書きをしたのも、心情的にはものすごく共感できる。
もちろん軽犯罪に相当するが、5年間冴を支え続けてやっと恋が実ったタイミングで正樹に奪われれば、そりゃ相手の人生破壊したくもなるだろう。

愛菜美の父や兄は嫌な奴で共感する部分は一切ないが、それでも大事な愛娘をボロボロにした男を徹底的にやっつけたいと思う心情は理解できる。

理解できないのは、散々周囲を掻き乱した挙句に相思相愛になって「めでたしめでたし(#^^#)」と思っている冴と正樹だ。
おまえら…どんだけ周囲を傷つけてると思ってるんだよ…。
なんで笑い合ってこれからの幸せを想像できる?
「申し訳ない」と思わなくてもいいけど、「復讐されるかも」くらいは考えろよ。
そういう発想がないのは、自分たちが周囲に付けた傷の大きさを自覚してない証拠だぞ…。

と、主人公に文句タラタラの私。

「主人公に共感できないなら、ドラマ観なきゃいーじゃん」と言うなかれ。
主人公に共感するのと同じ位「主人公に共感できない」というのは、ドラマを見続ける理由になるのだ。
「この胸糞悪い主人公たちがどんな道を歩むのか」を見届けたい衝動に駆られるのである←性格悪いのは重々承知さ。

冴と正樹の早急さにも腹が立つ。
周囲への思いやりがあるなら、もっと時間をかけてゆっくり事を進めるべきだ。
相思相愛を自覚したら全てが嫌になって投げ出した2人に、なぜ共感できるだろうか。
彼らに矛先を向けるその他登場人物に「そうだ!その通りだ!」とテレビの前で応援してしまう。

ドラマを通しての私の勝手な感想だが、冴は逆境に弱いタイプ。
冴は「支えてもらう側」のテイカー気質だと思う。
1人で立ち上がる体力も精神力もなく、「先生を支える」とか言いつつ支えられなければやっていけないだろう。
なぜならば「支える」は非常に多様な意味を含むからだ。
自分と2人でいるために好きな相手を逆境に追い込み、その中で「支える」と障害のある恋愛に浸る冴、周囲の気持ちに全く気付かずその矛先が正樹に向いても「なんでそうなるの?」と激怒する冴では、正樹を支えるどころか窮地に追い込むだけ。
窮地に追い込んで「私がいるから」と絆を深めようとするなら、冴は結局愛菜美と同じではないか。

ちなみに、冴は母親を毛嫌いしているが「恋に盲目になって周囲の気持ちを考えずに暴走する」という点で、この母娘は非常によく似ている。
母親の発言は全て的を得ている。
腐っても母親だなぁと感心するほどに、娘をよく理解しているのだ(村長は全くしていないが)。

物語は終盤だが、私は結局2人は結ばれずに終わるか、もしくは愛菜美や慎太郎の本物の愛によって「正樹(冴)のために2人の恋を守ってやろう」という形で結ばれるのではないかと予測している。
ここまできたら、「なんじゃそりゃ~!」とひっくり返るようなラストにしてほしい。


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