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#詩

【詩】あたらしくつくる

【詩】あたらしくつくる

ずっと音がしている
みみのおくで
クマバチがとんで。
刺さないから
って良いわけじゃないよね
隠してる針。
見えないからって凶器にならない
わけじゃない
蛹の中で黙々と針を構築中

(Scrap and Build)

わたしの肉体が
溶けるまでのあいだ
暇つぶしして
て。
喫茶店のすりガラスに描かれた
波みたいな模様が
グネグネしはじめて
ながれて
ながれおちて
海かと思ったら滝だったみたい

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【詩】2000.夏

【詩】2000.夏

見つけられない心地がしている
世界中探しても

遠くで寄せては引き続けている
波のことを考えている
その一室
木々のざわめきの中に
誰かの声をきく
誰かの? わたしの?
穏やかすぎる午後
冬のにおい
不意に
夏の海の気配

ビニールのボール/素足で歩けない砂浜/鋭い岩で切った腕/日焼け止めの匂い/疲れきって眠る車内/更衣室の暗さ/細い道を下って。
べたつく夏
永遠に届かないわたしの8月
の、影

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【詩】わたしはまだ知らない

【詩】わたしはまだ知らない

薬局で食器洗い洗剤をえらぶ
半透明のみどりやピンクの粘り気のある液体の中に
彼女を視る。
見た、気がした。
午後8時すぎ
タバコの煙が煙突からの白煙に変わった瞬間を
わたしは知らない
それ、で。
幻視する
あの人が手掴みで撒かれた土から

これからくるながい午睡
生きているという非常事態に時折ぶつかる
ぶつかってしまう。ぶつかれる?
その祝福が重い。
「くが?」
パンを差し出した手から緑が溢れる

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