【キャラ立ちぬ】さなコン3の歩き方
「攻略、『さなコン3』!」なんて記事を書いておきながら、一次選考すら残れなかったらどうしようと思ってましたが、どうにかひと安心です。ぼちぼち二次審査の発表、盆休み明けには最終発表かな?
さて、私の本来の目標は、小説ではなくマンガのさなコン攻略です。方向性はこれで解りましたので、いま温めているプロットをどう煮詰めていくか、これから本腰を入れて取り組んでいきます。そんな中、ふと書店で目にした「タイムマシンに乗れないぼくたち」のタイトルにさなコン攻略の匂いを感じ、ひとつ読んでみることに。
さなコンの歴代受賞者は、まだ3回ですが、女性の作家が占めています。第1回は坂崎かおる氏、第2回はaya氏。「攻略、『さなコン3』!」でも触れましたが、さなコンは女性向けのストーリーが好まれる傾向にあります。それはさなコン創始者が女性であり、このコンテストが女性の作家を発掘する目的で始められたものだからではないか、と私は考えています。だからこそ「ジャンルが合わない」と感じ、挑戦意欲が大きく削がれることにもなりました。
でも、誰かがこう言ってたんです。
「コンテスト作品は、書きたいものを書くのではなく、書けるものを書く」のだと。なにやら禅問答の様ですが、つまりは好き勝手書いても読み手は見ない。「読み手に見せる」ことに全振りしたものが選考に残るのだ、と。私はこう考えました。「ターゲットを決めて内容を絞り込む」ことではないかと。その点においてさなコンのターゲットは明快でした。
で、いよいよ本戦に向けて女性作家の作品を研究しようかと。「タイムマシンに・・・」なんていかにもさなコンに出てきそうなタイトルじゃないですか。
読んだ。
刺さった!
いや、刺し貫かれた!!
もう抜けない…w
「タイムマシンに乗れないぼくたち」。表題を含む7編の短編集。正直いいますと、表題の短編にはあまりピンときませんでしたが、最初の「コードネームは保留」、とても良かったです。読み進むにつれ、どんどん作品世界に惹きこまれ、このシーンを漫画にしてみたい!と思うほどでした。情景が頭の中にありありと映し出されていって…小説を読んでそう感じたのは、初めての事でした。
イチオシは「深く息を吸って、」。おそらくは、作者ご自身の経験を基にした私小説。九州の片田舎に住む、ちょっと冴えない少女が初めて出会った「推し」の物語。少しぼかして書かれていますが、彼女の観た映画は「スタンド・バイ・ミー」で、彼女が心奪われた少年とはリバー・フェニックス!
この邂逅が、いかに少女を衝き動かし人生に輝きを見出したのか!
わかる、すごくわかる!!
だって自分もそうだったから。
私の場合はガンダムでしたがw
「タイムマシンに・・・」を読み終えて、これまで私の創作に足りなかったものが見つかった気がしました。それは「キャラ立ち」です。
寺地はるな氏の短編は、どれを見てもキャラの個性が際立っています。最終編の「対岸の叔父」のマレオさん、あのブッ飛んだ思考と行動、大好きです。そういえば伊坂幸太郎作品でも、ブッ飛びキャラ「陣内さん」が登場する「チルドレン」と「サブマリン」の二作、何度も読み返してしまいます。
ストーリーを、読者を引っ張るのは細かく練られた設定ではなく、キャラクターだと気づいたのです。マンガなどは画を見せていれば流れで読者はついてくるものですが、小説はそうはいきません。最後まで読者を引っ張るために、如何にキャラ付けが必要であるか、そこに気が付きました。
さなコン3の投稿作品をいくつか拝見しましたが、登場人物の心理描写は女性の方が圧倒的に巧い。第2回さなコンを制覇した「化けタヌキは眠らない」など、ユニークなキャラをこれでもか、と登場させて読み手を飽きさせません。今回の私のエントリー作品など6,369文字しか使っていないのですから、もう少し丁寧に描写すればよかったなと、ちょい反省してます。
初めて小説を書いたあとで、慣れたマンガの欠点に気が付くとは、何とも皮肉が気がしました。
「一行読めば一行に驚き、一回読めば一回に驚きぬ。」
樋口一葉「たけくらべ」を読んだ正岡子規の書評は、大絶賛というべきものでした。当時の世相を思えば「職業婦人」は非難の対象であり、声を上げて「是」を唱えるのは勇気の要る行動ではなかったのか。
きっと正岡子規も刺し貫かれちゃったんだろうな、と思うのです(笑
追記)
WEB別冊文藝春秋で、「コードネームは保留」が全文公開されていました。気になった方はぜひ、ご一読を!
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