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「クソゼミナール公式アラーム」(2033年南ア万博クソゼミ解放ライブ事件・生音源)

ザ・ゴールデンボールズ
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  [ 山梨県の地方紙『中北・峡南ふるさとだより』(2036年6月増刊号)の《金玉一門特集》より抜粋 ]


苗代茱萸。ナワシログミ、と読む。

ナワシログミに関しては〝別名タワラグミ、トキワグミ。 盆栽としてはカングミの名で呼ばれることが多い。〟とWikipediaに綴られている。そもそも、茱萸(ぐみ)を食べたことがあるだろうか。──乱暴に言ってしまえば、桃と李(すもも)の関係が、桜桃(さくらんぼ)と茱萸(ぐみ)に近い。これまたWikipediaは、〝渋みと酸味、かすかな甘味〟と茱萸(ぐみ)の果実を評している。

「2033年南ア万博クソゼミ解放ライブ事件」。大衆は「南アクソ事件」と略すことが多い。一方、地方自治体や公共交通機関の公式な書類には「2033年山梨県南アルプス市万博クソゼミナール解放ライブ事件」と記されている。

2033年5月21日、クソゼミナール・鳥居ぴぴきが、26日、同・バーバリアン渋谷が逮捕された。

金玉オフィスがゴールデンウィーク中に発売した大人気商品〝ファンタ 世界のおいしいフレーバー 苗代茱萸味〟(500mlペットボトル)に対し、
「これは苗代茱萸の味ではない。」
「ふたがあいとるやんけ!」
「これはファンタオレンジとなっちゃんりんごを〝7:3の割合で混ぜた〟だけでは? 美味いけど。」
「蓋の封が開いています。」
「賞味期限が書いてないのですが……。」
「これ、そもそもファンタの発売権利は金玉一門にあるんですか!?」
といった声が寄せられ、聞きつけた静岡県警が出動。しかし、〝金玉一門は金玉落としの谷で宴会を開いているぞ!〟という誤情報に則り駆けつけた1032名の静岡県警は、蛻(もぬけ)の殻の金玉落としの谷に慟哭の限りを尽くした。

しかし、5月17日に山梨県南巨摩郡身延町の或るロープウェイにて、ちんぽこでかし・ちいさしの両名の指紋が発見され、捜査は山梨県警が引き継ぐ形となった。

そしていろいろあってクソゼミナールの二人が逮捕されたわけだが、2033年といえば南ア万博の年。



2022年6月吉日。



南ア万博(山梨県南アルプス市万博)初日にあたるこの日、午前四時半から36万人を超える人々が、会場である椿城本丸跡へと続く門の前へと詰めかけた。会場内には所狭しと各国のパビリオンが乱立し、開始前だというのにカモノハシやグズリ、ミミズク等の絶叫が時折聴こえてきた。



午前5時。



突如、十余名の半裸の人影が、門前に姿を現した。渠等(かれら)はアコーディオンやベースアンプ等を手際よくセットし始めた。
そんな中、渠等(かれら)の中から二人の老人が前へ進み出た。









「「クソゼミナールを、取り戻す!!!!!!!!!!」」









その叫びに、36万人は沸き狂った。世界の殆どが、クソゼミナール逮捕の報を知っていた。ここ南ア万博の門前から凡(およ)そ13km離れた甲府刑務所の地下13層に、二人が縛(ばく)されておることを、蒼氓(そうぼう)の悉皆(しっかい)が、存ずるところであった。失踪中の金玉一門の、その韜晦(とうかい)を、識(し)るところのものであった。

山梨県警は、すぐそこまで迫っていた。地上の県警と大衆は、すでにすったもんだのおしくらまんじゅう状態であった。援軍を要請された県警の航空部隊は山梨県韮崎市を既に大凧に乗って発っており、闖入者たる渠等(かれら)にとっては非常に危険な状態であった。



そんな状態の中、そのゲリラ音楽団体は〝ザ・ゴールデンボールズ〟と名乗り、13km離れた地下の獄(ひとや)の同胞(はらから)二人に届けるべく、歴史に残る演奏を始めた──。





これが、「2033年南ア万博クソゼミ解放ライブ事件」である。




 ※ …… 畢竟(ひっきょう)、御存じの通り、クソゼミナールの二人は解放された。騒動の最中でドラムを叩いていた肛門しまう氏が、そもそもファンタオレンジとなっちゃんりんごをファミリーレストランで混ぜて遊んでいたことが分かり、捕縛され、全責任を負うこととなった。大人にはいろいろあるのだ。幸い、肛門しまう氏は、肛門をしまっていたので、懲役は半月で済んだ。



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