非おむろ

非おむろ

最近の記事

短編小説「蹴りたいちんこ」

 三時半のコンビニエンスストア。あ、午前の、ね。客が居ないうちに品出しをしてしまおう。商品陳列。賞味期限が切れた食品を回収もする。  ジュースの先入れ先出しは、棚の裏から。客からしてみたら棚の奥から腕が生えてくるから、ホラーだ。  弁当の類の入れ換えの時間までは、このコンビニエンスストアの場合、まだ時間がある。あたしは、グミやガムの品出しをし乍ら、横目で店長を見ている。  店長は四十歳ぐらいの下縁眼鏡の痩せ気味の男。背は小さいが、痩せているので相対的に背が高く見える、遠近感

    • 小説『よく分からんがラッキー!』

       生きていたところ、全てが解決した。よく分からんが、ラッキー! イェーイ!  ──尚、嘘!  いや、嘘っていうのが……嘘!  ああ、確認したら、嘘の嘘の、そのまた更に嘘やったわ。気が、狂うわ!  気合いだ!                   〈了〉                      非おむろ:小説『よく分からんがラッキー!』                      2024/04/13~2024/07/03   本文:99字

      • 小説「具体的だもの」(原題:「👻⚡🚙⚡👻」/原作:平井召正/和訳:石見透(非おむろ))

          具体的な報 酬をそうやって提示されては、こちらも語らざるを得ないねえ。う~ん……つっても私はそう弁の立つ方では無くてね。おまけに、この良い匂いの影響で、唾液が、もう……喋り難いわ! 朝飯啖(く)ってなくてねえ、こちとら……。──まあ、兎(と)まれ角(こう)まれさっさとお話を終わらせて、報酬を頂きましょうかねェ。ケヒヒヒヒ!  しっかし、久方振りの雨だわこりゃ!  木村ァ……の前に、鮃ェ……の前に、あれか、盗撮王のところから話をしなきゃならんかねェ。まあ、こちらと

        • 気合いだ! そういう状態だ!

        短編小説「蹴りたいちんこ」

          「八番目の曜日は休日か平日か:山の部」 - インストゥルメンタル曲 -

          小説:非おむろ『よく分からんがラッキー!』挿入曲       「八番目の曜日は休日か平日か:山の部」              (インストゥルメンタル)                  作曲:非おむろ

          「八番目の曜日は休日か平日か:山の部」 - インストゥルメンタル曲 -

          「八番目の曜日は休日か平日か:山の部」 - インストゥルメンタル曲 -

          小説「オリジナル小便カーニバル」2024/06/15──非おむろ

           ベルトコンベアに飛び乗ったかと思うと、クロワッサン達をむしゃりむしゃり! 「うわあっ、なっ、なっ……。」  若藤(わかふじ)さんがおろおろと犬から遠ざかる。犬はベルトコンベアを失踪。社員達も騒然となりつつこちらを見ている。 「せっちゃん、こっちへ逃げて来い!」  そう叫んだのは五十根(いそね)君。私と同じ苗字の男の子。若藤さん──〝せっちゃん〟とは若藤 芹葉(わかふじ せりは)さんのことだ──は別に犬に襲われていたわけでもなく、最接近時でも二米(にメートル)程は離れていたが

          小説「オリジナル小便カーニバル」2024/06/15──非おむろ

          姫神「神々の詩」(弾き語り)

          ひめかみ かみがみのうた              (一九九七年)   ※海流バージョン

          姫神「神々の詩」(弾き語り)

          姫神「神々の詩」(弾き語り)

          初恋探偵♡崖畑灘

          ハツコイタンテイハートガケバタケナダ    手元のビリヤニの湯気が私の眼鏡を白く濁らす。五月。春かと思えば、夏に進んだり冬に戻ったりと、忙しい季節だ。  私の後には男子高校生が一人、二つのビリヤニ竹筒弁当を購(あがな)っていた。結構量があるというのに、二つも買うとは豪気なことである。  或る湖を擁する山間部の自治体の、丁度、丘や森が遮蔽物となって湖が見えない公園。午後三時だというのに山脈の都合で、既に日照状態が危ういこの空間で、崖畑 灘(がけばたけ なだ)君は今日も

          初恋探偵♡崖畑灘

          金輪際廃止な!   (小説)

          「ガァ~……キィ~……コォ~……ラァ~……!」  ショウマサがそう唸るのも無理はない。扇風機が唸っている。大きな長方形の座卓の上では、多くの帳面が風に踊っていた。  帳面というのは、ノートのことね!  長野県の、或る市の、或る町の、或る町内会。合併して市や町という地名を冠しているものの、未だに村時代の帰属意識が強く残っている。と、いうより、事実上、物理的に集落ごとに区切られているのだ。陸の孤島が散在しているようなパターンは、何もこの市に限ったことではない。日本全国津々浦々に

          金輪際廃止な!   (小説)

          『鎖鎌探偵 鋼』 第百六十六幕 「筆談と響く湯」

          『鎖鎌探偵 鋼』   第百六十六幕 筆談と響く湯 クサリガマタンテイ ハガネ   ダイヒャクロクジュウロクマク ヒツダントヒビクユ   【登場人物一覧】 ①亜川 鉛児(アカワ エンジ)31歳 男 普段は塩ビ管を扱う工場の製造部で、原材料の梱包材の廃棄や、完成品の梱包、荷役等をしている。この秋は虹色のツナギを着ている。黒髪のモヒカン。 ②惰宮 呑流比(ダミヤ ノンルヒ)51歳 男 十年前から亜川にはいろいろ頼みごとをしていたり。警視正だが、警視庁からも岐阜

          『鎖鎌探偵 鋼』 第百六十六幕 「筆談と響く湯」

          長編小説「うんち及び人生」2024/04/07──非おむろ

           ぶりぶりぶりぶり、おしまい!                     〈了〉     長編小説「うんち及び人生」2024/04/07──非おむろ

          長編小説「うんち及び人生」2024/04/07──非おむろ

          小説「フライ・息子・トゥー・ザ・ムーン」2024/04/04

           私は、ゆっくりと、深呼吸をした。  五年に亘る懲役の間、七七八九〇番と呼ばれていたが、それもこの正午で終焉(おしまい)。私は、岐阜刑務所を後にした。  家族・親族との縁はとっくに切れている。私がバスで戻るのは、加茂郡の安いアパートだ。もし売れっ子のアパートだったら、直ぐ様立ち退きで、本人不在でも家具は売り飛ばすぐらいの勢いだっただろうが、幸い襤褸アパートだったので、五年前の当時の部屋がそのまま残っている──ここでいう、幸い、というのは私にとってのものであって、では大家さん

          小説「フライ・息子・トゥー・ザ・ムーン」2024/04/04

          小説「三種の仁義」2024/03/06

           扨(さて)! 五月の連休が幕を下ろしてから早一週間。夢も希望も無き梅雨入り前。春の終焉。  私は、八頭郡(やずぐん)の或る町へ一週間、フォークリフトの免許を獲得する為の合宿へ行くことにした。現在勤務中の非常勤の学校図書館司書教諭も、今年度で馘首(クビ)なのだ。この高等学校は母校でも無いし、勤務二年目なのだが……已むを得まい。労働をしたことのない人々の中には勘違いをしている輩もいるらしいが、私の人事権が私に有る筈が無いのだ。私はこの国の女王では無いので、当然、そうなのだ。  

          小説「三種の仁義」2024/03/06

          「真似とマネーとAIと金と」(随筆)2024/02/26 非おむろ

          【序】  本稿は小説ではないので、木製の鎖鎌を腰に巻いた名探偵や、貨物列車の上で闘う破戒僧、元水道局員の限界状態のおじさんにネカマのおじさんといった、私のオリジナルキャラクターが所狭しと暴れ回ったりはしない。〝抑(そもそ)も非おむろの小説って、暗くてつまらないし、読む価値が無いのでは?〟という議題も、今回は捨て置く心算(つもり)だ。  まあねェ、百四十文字に収める算段で書き始めたのに、存外長くなってしまった故、noteにしただけで、随筆というか呟きというか戯言というか。少なく

          「真似とマネーとAIと金と」(随筆)2024/02/26 非おむろ

          短編小説「人工の夕陽に向かって」2024/02/25

          「では、インタイムめがけてアジャストの、結果オーライですね。イシューはグッド、アライブです。2860円ですね。ホスピタリティーがプライベートなユーティリティーで、なる早の、」  カタカナ語を多用してくる老け顔の若いタクシーの運転手の発声はまだ続いていたが、2860円をぴったり渡し、ついでに、伸ばしてきた右手の指を五本とも全て、外側へ180°曲げてやった。絶叫して悶絶しているが、カタカナ語を多用する方が悪い。こういう奴が、日本国を劣化させているのだから。  タクシーを出ると満

          短編小説「人工の夕陽に向かって」2024/02/25

          05:52。九頭竜湖駅。

          列車に乗る。 温かい! 生きられる! 運転士と私以外は、誰も居ない。  運転士が、 「え!? 乗客居んの!?」  と絶叫した後、大野小町を一杯呷り、マイクの音声をONにし、アナウンスをする。 「えー、毎度御乗車ありがとうございます。この列車は百輛編成で、あー嘘、一輛ですかね。まあ、〝困ったらググって呉れれば〟。……というか、(酒で喉を潤す音が十秒程入った後、)えー、本日一寸(ちょっと)すみません、無人駅とかもいっぱいありますが、あのー、えへへへへ、一寸(ちょっと)色々あって

          05:52。九頭竜湖駅。