「悲哀の月」　第12話

　クルーズ船以降、日本でのコロナ危機は一気に高まった。飛沫や接触により感染すると聞くと、人々はマスクと消毒液に群がった。朝からドラッグストアには長蛇の列が出来、整理券まで配布されたほどだ。それでも買えない人は多く、ネットでは目を疑うほどの高額で出品され、ついには転売を禁じる法が定められた。今では、街を行く人々の顔にはマスクが当たり前となっている。
　また、店や施設に入る時は消毒が必須となり、入り口には消毒液が置かれるようになった。その消毒液でさえ盗まれることが続発した。
　それでも、感染の波が収まることはない。
　日を追うごとに増えていく。
　政府としてもこの異様な事態についに動いた。学校に対して臨時休校要請を出し、全ての学校は一斉に休校となった。更に、大人数が集まるイベントに対しては開催自粛を要請した。これを受け、多くのライブやイベントは中止となり、プロスポーツも開催延期が相次いだ。
　他にも、密な空間が感染リスクが高いと結果が出ると、満員電車を避ける動きも出るようになった。時差通勤を推奨する会社やリモート勤務に切り替える会社が急増した。
　日本は、未知のウィルスにより生活スタイルを大きく変化するようになっていた。