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美に接すると何故、どう脳が活性化するか?

 何が、その人にとって、その場のその状況における、その内部状態(常に移りゆく心の内面や身体のコンディション)において、「美」を感じさせるか。このことが物理学に代表される自然科学で完全に解明される日がいつか(来来世紀とか)くるのかもしれません。暗黙知をキャプチャーする深層学習が人間の美を感得した痕跡データをコピーし、再現できるところはあります。しかし、理論的解明に先立って、当面は群盲象を撫でるかのごとく、経験則の蓄積をある程度体系化することになるでしょう。心理学などで、様々な手がかりから部分的な反応、相関関係を探る努力が続くように思えます。その1つにこんな記事がありました:

”デフォルトモードネットワークは、主に休息中や安静状態など、人が「何もしていないと思っている時」に脳内で活発化する、脳領域の大規模な神経活動を指します。人々の自己感覚を調節する上で、デフォルトモードネットワークが大きな役割を果たしているともいわれており、自分自身を省みたり記憶を思い出したり、何かを想像したりする際に活性化することが知られています。”

 心筋などの不随意筋のコントロールの如く、意識では制御できず、また、外部刺激にも制御されないとされてきました。しかし、「美」を感じたときには活性化するというのです! 

”2012年の研究で、Vessel氏は芸術作品が鑑賞した人々の琴線に触れた場合、デフォルトモードネットワークが活性化することを発見しました。芸術作品が個人に対して大きな感動を与えた時、通常の外部刺激では活性化しない脳のシステムが活性化し、「芸術作品を驚くほど個人的なものとして感じることができる」と、Vessel氏は2013年のフォローアップ研究で説明しています。”

 単なる視覚の刺激によるのではなく、視覚を通じて美を感じたときのみに、デフォルトモードネットワークが活性化することまではわかってきたようです。

 ”研究チームは今後、デフォルトモードネットワークの活性化が音楽や詩といった、ほかの外部刺激によっても活性化するのかどうかについても研究を行いたいと考えています。”

 視覚を通じて感じる美ひとつとってみても、自然の風景、具象絵画、抽象絵画、毛筆、硬筆で綺麗な字と汚い字、フォントデザイン、顔、スタイル、その他の造形、衣装、建物、部屋、それらの一部、動き、規則的パターン、フラクタル(再帰的構造)のようなもの、細密さ、逆に荒削りの美しさなどなど、無数のバリエーションがありそうです。聴覚にも、美しい音色、美しい和音、美しい旋律、美しい(規則的に軽快な)リズム、音楽以外に耳に心地よいさざ波、川音、風音、虫の声、スピーチ、残響など、多彩な美の源があります。詩、短歌俳句他、なんらかの韻を踏んだ言語。プログラム言語のソースコードや、仕様書、プログラム言語自体、ハードウェアの設計やその完成した姿(歴史に残るスーパーコンCray-1など)、さらに抽象化された、数式(方程式)や、自然などの対象がシンプルな方程式で表現できることにも人間は美を感じることができます。

 これらに共通する何かが解明され、身の回りを美しいもの、表現で取り巻いてくれるように生成型のAIが機能してくれたら素晴らしい未来生活となるようにわくわくします。コピーでなく、本当にオリジナルの美を感じ、それを追求して作りあげることのできる「強いAI」の実現はまだ遙か先のことですが、完全に人間と同一の仕組みは、電気化学的な仕組みや生殖関連の仕組みまで完全に再現できなければ不可能と思われるので、人間オリジナルの美の創造(その前提として美を感じること)は、人類が存続する限り続くことでしょう。素晴らしいことです。

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メタデータ(株)の野村です。人工知能研究40年、WordNet活用研究への貢献から、言語学の深みを活かした自然言語処理応用で知識処理、文書分析、対話、要約を高度化へと研究開発を展開。産業、社会、行政、教育(特に芸術、人文科学)の様々な問題について、なぜ?と自問自答し続けています。
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