スモーキング・ディストピア

2020年4月1日となった。
改正健康増進法が全面施行され、ザックリ言ってしまえば「お前ら、タバコを吸うな」ということだ。

よく「もういっそタバコの販売を禁止しろよ」という声も聞こえるが、そうなったらなったで、タバコの販売が非合法な組織によって行われ反社会的組織にお金が流れるだけだ。

僕は長いことタバコを吸い、喫煙マナー向上の仕事に就いていた。
20代後半から30代前半にかけて。
どうやってスモーカーとノンスモーカーを共存できる社会や仕組みを作るか、そのために何が必要か、どんなコミュニケーションが求められるのか。
ずーっと、ずーっと考えてきた。

結果、今日僕は負けた。
もはや共存など不可能になってしまった。
「思いやりを持った喫煙」という言葉は矛盾となった。
思いやるならタバコを吸うな。
タバコを吸う人間は悪だ、という世界になってしまったからだ。
僕を含め、スモーカーは今日から「悪人」と呼ばれる種族となった。
本当に、本当に悔しい。

13年前の俺よ、よく頑張った。
粘り強く仕事を一所懸命にやってきた。
けど、報われなかったよ…

ユートピアとディストピアが共存する社会になった。
僕はどちらを選ぶか。
タバコを吸い、考える。
地獄から見る世界も面白そうだ。