遥か道東に想いを馳せて

日本の「極地」としておおよそ想像されるのは、「北」の北海道と「南」の沖縄県のふたつが多いはずです。
ともに観光地としても人気の両者ですが、ぼくが「どちらに行きたいか」と問われれば、それは迷うことなく「北海道」と答えます。まあ沖縄県は修学旅行で2度行ったことがあると言うのも理由なんですが、北海道はぼくにとって未踏の地であるとともに「水曜どうでしょう」の聖地と言う点で魅力が大きいわけです。
今回はその中でも、「道東」に絞ってお話を展開します。例によって(面倒なので)画像はなしです、すみません。必要があれば適宜別タブでGoogle マップなどを開いていただければ。


「試される大地」のさらにその果て、そしてその向こうの世界へ。

都道府県のひとつとしては他の追随を許さないほど面積の広い北海道をいくつかの地域に区分けする時、ベターなのは「道北・道東・道央・道南」の4つだと思います。
このうち、古くから和人地としての歴史を持ち、近年では北海道新幹線の開通で新たな北海道の玄関口となりつつある道南と、道都札幌市や空の玄関口・新千歳空港を抱え、行政や文化などの中心地となっている道央は観光客も多いだろうし、ポイントで見ればぼくも行きたいところは所々あります。冒頭で書いた「水曜どうでしょう」のファンとしては本丸の北海道テレビや聖地のひとつである平岸高台公園は外せませんし、道南であれば函館市の五稜郭などはベタですが歴史好きとしては外せません。また大相撲ファンとしても北海道は大きな意味を持っていて、北海道はこれまで歴代最多8人の横綱を輩出した土地。記念館もいくらかあると思いますが、その中でも松前郡福島町にある道の駅 横綱の里ふくしまは「横綱千代の山千代の富士記念館」が併設されており、行って見たい場所のひとつです。野球ファンであれば、2023年に開業し当然NPB本拠地球場では一番新しいエスコンフィールドHOKKAIDOも外せませんね。

で。
道北と道東に関しては、あくまで西日本在住の人間による偏見をお許しいただければ、「極地の最果て」のイメージ。人口が希薄で自然環境が厳しく、見出しタイトルにも書きましたがまさに「試される大地」の印象があります。もちろん旭川市や帯広市のような一定の人口を抱える中核都市もありますが、基本的には街が独立して点在し、あとは雄大な自然が占めているはずです。「そこがいいんだよ!」と思う方もいらっしゃると思いますが、少なくとも住むことを考えるとある程度の不便は覚悟しなければいけないのかなと。

あともうひとつ挙げるなら、道北と道東は「文化としても最果ての地」の感も強いんです。この点は(日本にとって)南ないし西の果てである沖縄県と比較するとぼくの考えも理解していただけると思いますが、沖縄県(南西諸島)はその先に台湾や中国大陸がありますよね。特に中国大陸は歴史が古く、恐らくは古代からずっと人口集中地帯で文化も栄えて来た歴史があるので、「どん詰まり」感は個人的に皆無です。もちろん沖縄県にはその地政学的条件によって培われた独自の文化があり、それが多くの人を惹きつける魅力の源泉になっていますが。
それに比べて北海道はその先にあるのが、道北は樺太からユーラシア大陸のシベリアへ、道東は千島列島からカムチャツカ半島。陸塊は続いていますが、ここに「昔から栄えた文化があった」かと言われると…………。先住民族であるアイヌの文化レベルは素朴そのものでしたでしょうし(それがいいとか悪いとかの話ではない)、特に千島列島は推して知るべし。第二次世界大戦で敗戦するまでは南樺太と全千島は日本領で相応に投資もしたと思いますが、鉱物資源に恵まれ現在でも多くの街が維持されている樺太はまあいいでしょう。日本政府も領有権を放棄しているし。ただ千島列島はGoogle マップの衛星写真を見ると、「今そこに街はあるのか…………?」と言うレベルで何もない。一応国後島は2004年時点で6622人、択捉島は2006年時点で2005人の人口を抱えているようですが、面積を考えると自然環境を差し引いても寂しいものです。

南樺太や北方四島の領土問題についてはこの記事のメインテーマではないし、ましてそこから歴史認識問題とかに発展させる気はない(例によって考え自体はあるけど)ので、そこは悪しからず。ただ、北海道本島最東端である根室市が都市としての果てだとして、そこから東に別の都市を求めて陸を伝うと千島列島・カムチャッカ半島にそれはなく、アリューシャン列島やベーリング海峡を越えてアメリカ合衆国はアラスカ州アンカレッジまで行ってしまわないといけないレベル(のイメージ)。最果ての地と言うか荒涼とした地と言うか、なんとなく「人の手が入りきっていない土地」にロマンを感じる人間なのでそう思ったりもするわけです。

道東「そのもの」に目を向けた時、ぼくが注目するポイント。

これまで何の断りもなく「道北」「道東」と言ってきましたが、改めて調べるとこれら2つの指す範囲に絶対的なものはないらしいです。
先に道北を片付けておくと、常に道北と定義されるのは宗谷総合振興局・留萌振興局と上川総合振興局の北部(塩狩峠以北)だけらしく、特に観光業界ではそうすることが多いらしいです。ただしこの3地域は全国でも飛び抜けた人口希薄地帯で、アンバランスさを解消する意図を持って旭川市を含む上川総合振興局南部を入れたり、他にはさらにオホーツク総合振興局や空知総合振興局の一部を含む場合もあるらしいです。この辺りはWikipediaでも見てもらえれば…………。
そして道東は、基本的にオホーツク総合振興局・十勝総合振興局・釧路総合振興局・根室振興局の4つを指します。オホーツク総合振興局のうち紋別市と紋別郡(滝上町・興部町・西興部村・雄武町)のいわゆる「西紋」地区は道北の括りに入ることもあるらしいですが、今回はオホーツク総合振興局の全域を道東として扱います。

ここでミソなのは、札幌市が絶大な影響力を持つ道央、それぞれ函館市と旭川市と言う中核都市を持つ道南と道北と対比して、道東はもう少し区域が分かれると言うこと。北海道を6つに区分けする「地域生活経済圏」では面積の広大さもあり、道北・道央・道南がひとつなのに対して道東は「オホーツク圏」、「十勝圏」、「釧路・根室圏」の3つに分かれています。テレビ局(ここではNHKを基準とする)は7地域に分割されますが、ここでは道央が札幌放送局と室蘭放送局に分かれるほかはおおよそ同じで、道東は帯広放送局・北見放送局・釧路放送局の3つに分かれます。

この地域区分も「道東」と言う一地域の特色として面白いと思いますが、ぼくが本当に言いたいのはそこではなくて、またですが「極地」の話。

現在の日本において、実効支配地域にあり一般人が訪問可能な最東端地点は、この道東は根室市にある納沙布岬です。全ての日本領で最東端は東京都の南鳥島ですが、南鳥島は一般人立ち入り禁止で観光目的での訪問は出来ません。
で、これもあくまで個人的なイメージですが。
北海道には同じ「実効支配地域にあり一般人が訪問可能な最北端地点」として道北稚内市の宗谷岬がありますよね。実効支配地域に限れば宗谷岬のさらに北に弁天島があり、実効支配が及んでいない箇所としては北方四島択捉島のカモイワッカ岬があるんですが。
この宗谷岬と納沙布岬、知名度と訪れる人数で言えば宗谷岬のほうが多いんじゃなかろうか。正確な観光客数を知ることは出来ませんでしたが、なんとなくそんなイメージがあります(覆す資料があれば教えて頂けると幸いです)。

そう思うに至った理由に関しては簡単で、テレビメディアやYouTube・ニコニコ動画の旅動画において、宗谷岬に行く人・企画は多いけど納沙布岬に行く人・企画を見たことがあまりないから。まさか「納沙布岬が現地で北方四島返還要求の展示物が多いのを避けている」とは思いませんが、Google マップで乱暴に札幌市からかかる時間を調べると宗谷岬のほうが1時間ちょっと所要時間が短いのはあります。それも影響しているのでしょうか。
観光地化も宗谷岬のほうがされている印象だし、それに対する価値観も人それぞれなんですが、ちょっといろいろ考えることはありますよね。インフラ・アクセス(特に鉄道)もしんどいもんなぁ…………。

道東でのプロ野球開催、問題はあるけどその地のファンのために。

このnoteは基本的に野球の話をしているので、最後はプロ野球の話。
釧路市民球場(ウインドヒルひがし北海道スタジアム)は、日本最東端のプロ野球一軍公式戦開催球場ではないでしょうか。今年は新本拠地1年目のために道内巡業をしていない北海道日本ハムファイターズも、2017年以降は5回主催試合を開催しています。

で、この釧路市民球場。後述する理由でご存知の方も多いでしょうが、照明設備がありません
2019年8月28日の埼玉西武ライオンズ戦では濃霧注意報が発令された影響もあって8回途中コールドゲーム、2022年8月23日のオリックス・バファローズ戦も天候悪化の影響で7回終了コールドゲーム。短期間に2回、日没コールドを経験しました。
下記、北海道日本ハム公式のスコアのリンク。上が2019年、下が2022年です。

特に2022年は、対戦相手のオリックスがリーグ優勝に向けて正念場だった時期で、日没コールドでスコアレスドローのまま打ち切られたことに対する怒りや疑問の声が多数上がっていたことを記憶しています。
オリックスのことを慮るとして「最終的にリーグ優勝したからいいじゃん」とは思わないが、「試合を9回までやれたとして勝てたとは限らないよね?」とは思う(本当にそう思い込んでいるのだとしたらおめでたい話。ifはいくらでも都合よく作れるが、実際に残された結果は変わらない。もちろんやっていれば勝つifもあるが、負けたかも知れない世界線を考えられないのならそれは想像力が不足している)。
まあそこに部外者が突っ込むのも相当野暮な話だし、過去を蒸し返してもしょうがないのでここで終わりにします。ただ、「野球は9イニング制なのだから9イニングやってしかるべし。出来ないのならやるな」と言うような意見に対しては「待て」と。

確かに8月下旬の開催に関しては、ちょっと釧路市の気候的に分が悪い部分もあるんですよ。
日没に関して8月下旬は最も遅い時期ではなく、何なら平均降水量も多い月らしい。照明設備がないのなら時間を13時ではなく前倒しすることも考えてよかっただろうし(2022年で言えば前日は移動日だからそこまで影響もないはず)、「万全を期していた」わけではないと思うんです。
ただその欠陥をもって「釧路でやるな」は、「その人の狭い見識に由来するエゴでしかない」

いやね、釧路市だって日本の都市だし、従来の地上波・BS・CS放送でテレビ中継が、インターネットが普及した現在においては特にその媒体で野球中継を見られます。他にもインターネットを介して娯楽には以前より恵まれているだろうし、「娯楽の少ない土地にプロ野球がうんたらかんたら」なんて言うつもりはないんですよ。
ただ、釧路市やその周辺に住む野球ファンにとって、近場で見られるプロ野球がどれだけ貴重なものかを考えたことがあるのか
釧路市からエスコンフィールドHOKKAIDOまでは車で4時間かかりますから、毎日は通えない。そんな環境下で開催されるプロ野球は、平日デイゲームであっても有給休暇を取って観戦に訪れるにふさわしい「お祭り」であるはずなんです。8月下旬だと北海道では学校の夏休みは終わっているかも知れませんが、そうでなければ子供も観戦できますよね。
それを、恐らくは行こうと思えば無理なく行ける地域に住んでいる野球ファンの思慮に欠けたエゴで「釧路でやるな」なんて、ぼくは傲慢にしか思えない
このご時世プロ野球は絶対的な娯楽でもなくなりましたが、野球ファン自体は少なからずまだいると思います。運営体制に問題があったとしても「100%を目指せないならやるべきではない」と言う論調は、現地での野球振興という点を考えても、プロ野球公式戦開催による地域経済への影響を考えても、「傲慢」だと言う印象をやっぱり覚えますね。
照明設備に関しては釧路市民球場が釧路市の所有であり、設備投資に財政面と市民世論のどこまでが協力できるかに因るので強くは言えません。ですが、前述したような「今出来る方策」を練ることは大事。釧路市の野球ファンも「しっかり9イニング完遂した試合」が見たいでしょうから、ぼくとしてはそこを期待することになります。

ちなみにプロ野球とは関係ない話ですが、ぼくが暇つぶしでやることのひとつに「Google マップの衛星写真で野球場を見る」があります。それの影響で「(試合開催の有無を問わず)野球場を津々浦々周るのもいいかもなぁ」と思っていて、当然道東、釧路市に訪れることがあれば候補になるでしょう。
まあぼくは、北海道には行けたとして相当先になるでしょうから、その時に上述したことが解決していればいいなとは、思ったり思わなかったり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?