「タイで一番かっこいい、かわいい」ユニフォームを作ろうという話

製造業では会社でユニフォームというか作業着を支給するケースが多いです。暑いタイでは製造業に限らずポロシャツをユニフォームにしている会社が多数派で当社もそうだったのですが、入社当初から営業職や日本人はユニフォームを着ずビジネススタイルで良いという不文律があり、僕自身はほとんど着ることはなくあまり深く考えていませんでした。その一方、自分自身ファッションは好きですし大きなコストを掛けずに個性を出せるものなのでいつか変えてみたいくらいには思っていました。
僕にGoogle Data Studioを教えてくれたITスタートアップの先輩経営者さんがかなり服の好みやファッションへの熱意が合う人で、この人のオフィスに通ってITツールを学んでいる間にお互いポケットマネーでオリジナルキャップを作ったりTシャツを作ったりと色々遊んでいました。その挙句にそれなら自社のユニフォームを新しく作ってみようと一念発起、刷新プロジェクトを立ち上げました。コンセプトはこちらです。

「タイで一番かっこいい、かわいい。デートにも着ていけるユニフォーム」

ハイ、大風呂敷を広げました。正直そんなものが簡単にできるとは考えてはいませんでしたが、どうせやるならそれくらいのものを目指そうじゃないかという姿勢を示した形でした。

旧ユニフォームはこちら。普通のロゴ入りポロシャツ

 手始めに複数の業者をあたってみると、日系もタイローカルも「ユニフォームメーカー」という括りでは既存の「会社の作業着」という形状や生地の中での提案がほとんどで、ファッション性を持った独自デザインというのは制限がありました。その一方でファッションの側から探してみると今度は価格が合わなくなってきたりユニフォームとしての機能性を担保するノウハウがないなどと別の問題があることがわかり、業者選定はかなり難航しました。
 
しかしありがたいことに総務人事のメンバーはこの大風呂敷なコンセプトをしっかり理解して本気で色々な会社に当たってくれました。ある業者さんとの打ち合わせ中に「ウチが欲しいのはタイで一番のユニフォームなんだからね!これじゃダメ!」と熱弁してくれていた時は本当に嬉しかったです。

業者選定開始から半年程経った頃、やっと僕たちの大げさな話を真剣に聞いてくれ、かつリーズナブルな提案をしてくれるローカルユニフォーム業者のオーナーさんと出会うことができ、この会社と話を進めることに。

具体的なデザインをどうするか、例えば「ユニフォーム」とかでググると前述のような「ザ・作業服」が多く出てきますが、こういうでは「タイで一番」とは言えないのです。
英語で探したりタイ語で探したりインスタやピンタレストなど各種SNSを駆使して色々な服のデザインを見比べる中、「こんな感じが良い」と皆が一番納得したのはいわゆる「アメカジのワークシャツ」の形。この線で行くことに決定しました。

ネットを漁りまくって集めた「こんな感じ」候補の一部

当社の作業ではユニフォームに静電気防止とか耐熱といった特別な機能は必要ないため比較的意匠性に特化してデザイン作りを進められましたが、それでも外見だけ気にして着づらいとか作業がしづらいとなってしまうのは避けたかったので、総務人事チームに社内で広く意見を集めてもらったり試着会を行ったりして少しずつ細部を詰めていきました。

個人的にはデニムがかっこいいとかパチッと留めるスナップボタンが良いとか主張したのですが、業者さんもさすがユニフォーム屋ということで、「デニムは色落ちするので毎日洗うものには向かない」とか「スナップボタンは耐久性が落ちるので普通のボタンのほうがいい」とか色々アドバイスを頂きました。

度重なる意見交換の末、生地はリーバイスのシャツに使われているというヒッコリー柄(ストライプ)を採用し、既存の会社ロゴは入れずにデザイン性を高めたロゴを新しく作って主張し過ぎない場所に配置したほか、ボタンやタブにさりげなく社名を入れるなど工夫し、最終的に出来上がった形状は男性はシュッとしたストレート、女性用の形状は少し丸みを帯びたものになりました。ただ男性用が欲しいという女性も結構おり、好みに応じて支給しています(逆のケースはまだ聞いてません)。

新ユニフォーム

コストについては当然ながらこれまでのポロシャツより高くなってしまいました。ただし今まではポロシャツだけでなく黒のコットンパンツ、また学校の上履きに毛が生えたような靴を支給しており、今回それらを廃止して支給品をシャツだけにしたことでトータルのコスト増をほぼゼロにできました。これまで支給していたものを止めるとなると不満意見も出てくるのですが、定期の福利厚生会議の場で各現場の代表者にも理解してもらい事なきを得ました。そもそも支給品の靴を履いている人は少なかったこと、パンツの支給を止める代わりに私物のコットンパンツやジーンズ(ただし職場に相応しくないデザインは不可)を着てきていいという代替案を出したことが効いたようです。以前からパーティの日などに私物のジーンズを喜んで着てくる人が多かったので、この点は不満に思われることは少なかったようです。
 
デザインは2021年中に完成して量産の発注を掛けていたのですが、最初はしっかりやってくれていたユニフォーム業者の対応が徐々に悪くなってきました。「ミャンマー情勢の悪化で同国からの出稼ぎ作業者が集まらず仕事にならない」などと言われ続けた挙句、最近になってようやく納品があり社員に行き渡りました。予算的に1年に2着の支給のため、今年はまず2着だけ支給して「この曜日は新ユニフォーム、この曜日は旧ユニフォーム」と分けています。来年追加の2着が支給されれば毎日新ユニフォームになります。
 
集大成として今後のPR素材に使うためにプロの撮影クルーを呼んで撮影会をしました。僕もせっかくなのでポートレートを。

社内でモデルを募って各現場の写真や集合写真を

コンセプト通りに「タイで一番かっこいい、かわいい」ものになったかと言われるとそこまでの自信はありませんが、少なくとも自分では「休日にもそのまま着ていける」ようになったと思っていますし、実際にユニフォームとジーンズで仕事上がりに食事に行ったりしています。ただ特に女性のほうはまだまだ改善していける気がするので、現状に満足せずちょっとずつマイナーチェンジもしながらより良いものにしたいです。

が、しかし。問題が。

今回やってくれたユニフォーム業者さん、レスポンスが悪いのが徐々に深刻度を増してしまい、今はいくら連絡を入れても繋がらない状態になってしまいました(タイのローカル中小零細企業ではちょいちょいこういうこともあります)。
彼らの努力もあってせっかく作ったのに次回発注分は別の会社に依頼しないといけない見込みです。これまでの経験からまったく同じ生地を扱っている業者はほぼいないので、次ロットは大幅変更を余儀なくされるかもしれず、今回のユニフォームがひとときの幻と消える可能性もゼロではありません。。
とまだまだ気は抜けませんが、気を取り直してより良い生地、業者さんに出会えるよう、そして本当にタイで一番と胸を張って言えるようなものを作れるよう諦めずやっていきたいと思います。

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