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信じる宗教を変える(『Dark Horse〜「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』を読んで)

Voicyというラジオアプリを愛用していて、毎日の会社への行き帰りやジムでのトレーニングの最中に耳に入れている。初期から聴いているのが、尾石はる(ワーママはる)の『学びの引き出しはるラジオ』である。そして2021年11月17日の放送でおすすめされていたのが、本書、『Dark Horse〜「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』だ。


すごく気にはなっていたが、タイトルがタイトルなだけにそのままになっていた。何度か経験した自己啓発本の読後みたいに、1ヶ月ともたない自意識の増長を引き起こすだけだと決めつけていた。

実際の中身は違った。小手先の生活習慣については全く書かれておらず、複数のリアルな人生そのものが記されていて、どちらかというと「事例集」に近かった。偏見に満ちているが、さすがアメリカ産の本だと思った。

思考法からしっかりめに書かれているので、一読して「はい明日から変わります」みたいな感じではなく、自前の考え方そのものを取り払った上で新しい宗教として取り入れる必要がある。逆にいうと、それがどうしても必要だった人たちが態度から行動変容し、結果として好きなことで成功することができた、という話だ。ダークホースも「好きなことだけで生きる」も好き勝手やってればいいということではないようだ。

こうなると、「結論や方法論だけくれよな」と本末転倒な要望が芽生える愚かな自分にも気付く。

多分、ここに書いてあることを真に理解するには、まだまだ「今のままではダメだ」という切迫感が足りないのだ。

以下、一部引用して、切迫した時にすぐに変われる状態にしておきたい。

「自らの情熱には従ってはいけない!」その理由

西洋社会では、われわれはよく「自らの情熱に従え」と言われる。この指示における「情熱」とは、われわれの奥深くあるエネルギーの源から生まれた、「単一指向の力」だと捉えられる。(中略)
ダークホース的な考え方は、この指示を拒絶する。
ダークホースたちにとって、情熱は多次元的で動的なものであり、なおかつ、常に本人の意思で制御されるべきものである。

『Dark Horse』p103-104

ここでは、情熱とは単一で絶対的なものではなく、複数あり細分化されており、できるだけ多くて小さな、コントロールできるものが良いとしている。

たとえ一つの物事、例えば仕事だとしても、「なんで頑張るのか」の理由が重なった時の方が強い。だからなんとなくわかる。

逆に、この小さな情熱の方向性を意識的に支配しないと、「選択」という自己決定の塊に見える行為ですら「した気」になってしまう。例えば大学選びについてはこのように書かれる。『どの大学が実際にあなたに入学許可を出すかで全てが決まる。あなたは、入学許可を出した大学のリストから一つ指定するだけだ』

与えられた選択肢から選択していることがつまり、「やりたいこと」から遠ざかるということだ。
言っていることの難しさが伝わるかと思う。
なんせ、社会構造自体から見直せ、ということだ。

どうすればいいのか?

制度に都合よく作られている「指定」ではなく、小さな情熱をもとにした「能動的な選択」は「自己理解」が土台となる。

『Dark Horse』

元も子もないような気もする。

時間についても言及されている。

「習得までどれくらい?」この質問に疑問を抱かない人は要注意

標準化されたすべてのシステムは、現代のほぼすべての学校、大学、さらに職員研修プログラムまで、標準化された時間を規定し、その時間を守るように強要する。(中略)このような時間の標準化に利益がもたらされるのは制度だけであり、あなたには何の利益も齎されない。(中略)
こうしたこと全てが、われわれに「上達するのは単に時間の問題だ」と信じ込ませようとしている。(中略)
ダークホース的な発想では、時間は「相対的」なものだ。(中略)自分のペースで独自の選択をすることによって、時間を相対的なものとして考えられるようになると、あなたにとって時間は重要ではなくなる。なぜなら、あなたは一歩ごとに充足感を最大化し、やがて、その充足感が上達のペールを最速化することになるからだ。(中略)
標準的な時間は、われわれの注意を間違ったところに向けさせる。
しかし、対処法が一つある、それが「目的地は忘れろ」という司令だ、旅路の果てを見通すのではなく、目の前にあることに集中せよ、と。

『Dark Horse』p198-203

「いつやるの?」「いつまでに行動するの?」と聞くことがあるし、聞かれることがある。ありふれた会話であるほどに、「目的地への達成は時間の問題だ」という考えが刷り込まれていることがわかる。

「選択させられた仕事」はそれでいいかもしれないが、「好きなことを仕事」にするなら、「時間なんて相対的だから、とにかく目の前に集中して積み重ねろよ」という。

前者の考え方は合理的で、実際にその成功法則は何人も救っているはずだ。
しかし、最後にこの本が突きつける現実は、『成功へのそれぞれの処方箋は、根本的に相入れないものである。両者が歩み寄り、お互いを足して二で割ることはできないのだ』ということ。

これを読んですぐに腹落ちする人は、きっと今までもそういう生き方をしてきた。
わからない人にはわからないし、下手にわかろうとすると上辺だけを救う中途半端なものになるのだろう。相入れないものの要素だけ取ることほど危険なことはない。混ぜるな危険!

結局、お前はどう生きるんだ、と問われているのだ。

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