パラレルワールド 48(最終話)

                        ☆

 何処からか、いつの間にかやってきたフェスティバルは、「未来」を形のない、掴みどころのない「ぐちゃぐちゃなもの」にして、そして去っていった。

               ☆

 未来がどんなものになるのか、もうこれで完全に分からなくなってしまった。

 ここから先の全ての「選択」と「決断」、「行動」で、未来はどんな風にも形を変えていくのだ。
 右の足からその一歩を踏み出すのか、それとも左の足からその一歩を踏み出すのか?
 たったそれだけのことで未来は大きく変わっていくのだ。

 だから・・だからこそ「今」を懸命に生きて、「今」を心から愛するのだ。

 「今」を縛り付けるだけの「未来」はフェスティバルが何処かへ連れ去ってしまった。

 未来はいつも過去から繋がる「今」を生き抜いた先にある。
「あの時ああしておけば」と創り出してきたいくつものパラレルワールドにすがるのではなくて、自らの手で切り拓いていくしかないのだ。

 僕らはそちらの方を選んだのだ。
 「どちらか」しか選べないことは承知の上で。

 風が優しく僕の隣を通り抜けていった。

 ふと視線をあげた。
 そして僕は目を疑った。

 彼女がいた。
 トーキョーから遠く離れたこの異国の地に、リヴァプールに。
 
 どうしてあなたがここにいるのだろうか?
 どうしてあなたがここで僕に微笑みかけてくれるのだろうか?

 
 どんなに考えてもわからなかった。
 僕は何か言葉を発しようとしたけれど、どうしてもそれは出てこなかった。

 ただただ涙が溢れて止まらなかった。
 この感情をそのまま表現できる言葉を、僕は知らなかった。

 ただひとつ確かなことは・・
 あなたが隣にいる「未来」を、僕はどれだけ願ったろうか。

 未来がどうなるかは分からない。
 ずっと傍にいて、隣にいられる保証はない。
 「別れ」というものが、何の前触れもなくやって来て、君を連れ去ってしまうことだってあるかもしれない。
 確かなことは「永遠」など無いということ、ただそれだけだった。

 でもだからこそ、どこかで「再び出会う未来」だってあるはずなのだ。


 無限に広がる夜の星空のように、無限に広がるパラレルワールドのどれかひとつに、再びあなたと巡り合う「未来」がある。

 

 僕らが選んだ「未来」には、何の確証もないし、その形さえ見えない。
 でも、だからこそ未来は「希望に満ちた世界」に成り得るのだ。

 最高だろ?
 無条件に、未来は希望に満ちているらしいぜ?

 だからとりあえず僕は歩き続けることにするよ。
  
 

 大丈夫、僕らは何処へだって行けるのだから。

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「記録の存在しない街、トーキョー」に送り込まれた一人の男。仕事のなかった彼は、この街で「記録」をつけはじめる。そして彼によって記された「記…

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