パラレルワールド 48(最終話)
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何処からか、いつの間にかやってきたフェスティバルは、「未来」を形のない、掴みどころのない「ぐちゃぐちゃなもの」にして、そして去っていった。
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未来がどんなものになるのか、もうこれで完全に分からなくなってしまった。
ここから先の全ての「選択」と「決断」、「行動」で、未来はどんな風にも形を変えていくのだ。
右の足からその一歩を踏み出すのか、それとも左の足からその一歩を踏み出すのか?
たったそれだけのことで未来は大きく変わっていくのだ。
だから・・だからこそ「今」を懸命に生きて、「今」を心から愛するのだ。
「今」を縛り付けるだけの「未来」はフェスティバルが何処かへ連れ去ってしまった。
未来はいつも過去から繋がる「今」を生き抜いた先にある。
「あの時ああしておけば」と創り出してきたいくつものパラレルワールドにすがるのではなくて、自らの手で切り拓いていくしかないのだ。
僕らはそちらの方を選んだのだ。
「どちらか」しか選べないことは承知の上で。
風が優しく僕の隣を通り抜けていった。
ふと視線をあげた。
そして僕は目を疑った。
彼女がいた。
トーキョーから遠く離れたこの異国の地に、リヴァプールに。
どうしてあなたがここにいるのだろうか?
どうしてあなたがここで僕に微笑みかけてくれるのだろうか?
どんなに考えてもわからなかった。
僕は何か言葉を発しようとしたけれど、どうしてもそれは出てこなかった。
ただただ涙が溢れて止まらなかった。
この感情をそのまま表現できる言葉を、僕は知らなかった。
ただひとつ確かなことは・・
あなたが隣にいる「未来」を、僕はどれだけ願ったろうか。
未来がどうなるかは分からない。
ずっと傍にいて、隣にいられる保証はない。
「別れ」というものが、何の前触れもなくやって来て、君を連れ去ってしまうことだってあるかもしれない。
確かなことは「永遠」など無いということ、ただそれだけだった。
でもだからこそ、どこかで「再び出会う未来」だってあるはずなのだ。
無限に広がる夜の星空のように、無限に広がるパラレルワールドのどれかひとつに、再びあなたと巡り合う「未来」がある。
僕らが選んだ「未来」には、何の確証もないし、その形さえ見えない。
でも、だからこそ未来は「希望に満ちた世界」に成り得るのだ。
最高だろ?
無条件に、未来は希望に満ちているらしいぜ?
だからとりあえず僕は歩き続けることにするよ。
大丈夫、僕らは何処へだって行けるのだから。
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「記録の存在しない街、トーキョー」に送り込まれた一人の男。仕事のなかった彼は、この街で「記録」をつけはじめる。そして彼によって記された「記…
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