パラレルワールド 44

                 ☆

 ギリギリ4位。
 それでも勝ちは勝ちだ。
 タイシノムラは・・トキオそしてタケルはリヴァプールで開かれる決勝大会までコマを進めた。

 多少不格好ではあるがタイシノムラは、トキオは、タケルは勝った。

 よくやった。
 よくやったぞ!!

 彼らの・・とりわけタイシノムラにとって憧れの地「リヴァプール」への切符を手に入れたわけだ。

 あらかじめ決められた未来・・。
 田舎町からはるばるトーキョーへやって来て、旧友と再会し、一人コンテストに挑戦し、予選敗退ではあったもののかけがえの無い経験を持ってまた田舎町へ帰っていく・・。

 僕はタイシノムラに用意された未来というのはそういうものだと思っていたし、誰もがそう思っただろう。

 でも彼は・・いや彼らは打ち破った。
 「あらかじめ決められた未来」を。

 これでもう、ここから先に彼らを待つ未来がどんなものでになるのか、全く分からなくなってしまった。

 でもタイシノムラは、彼らはそれを「自由」と呼ぶに違いない。

 4位である彼らに形ある勲章はなかったが、振り上げた拳を僕はしかと記録した。

 レコード・マンとして。

 ふと視線を上げるとタイシノムラが目の前にいた。

 「リヴァプールへのチケットはスタッフの分も用意されるそうです。この旅を記録してください。一緒に行きましょうレコード・マンとして、リヴァプールへ。」

 あ、あと・・

 「フェスティバルへね。」

 タイシノムラは悪戯な笑みを浮かべて冗談ぽくそう言った。 


 何故タイシノムラが3度に渡る時間圧縮を繰り返してまでこのコンテストで勝ち抜こうとしたのか?
 言葉にならない第六感のようなものが電流のように僕の身体を揺さぶった。

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「それでもなお、未来を信じる人たちへ」 (1000円という値段をつけてはいますが全て無料で読むこともできます。もし購入してくれたらその売り上げは現在制作中のMV制作費用に充てさせていただきます。)

「記録の存在しない街、トーキョー」に送り込まれた一人の男。仕事のなかった彼は、この街で「記録」をつけはじめる。そして彼によって記された「記…

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