パラレルワールド 45
☆
何かが動き始めている。
姿こそ全く見えないが、僕はそれをはっきりと感じていた。
そして途方もない数の何かが同じ場所へと向かっているようだった。
リヴァプールへのフライトを翌日に控え、その興奮のせいか眠れない夜を持て余すようにグリーヴァの隅でハイネケンを飲みながらやかましいハードロック・バンドの演奏に身を委ねていると、客席の中に見覚えのある男を見つけた。
タイシノムラだった。
あえて声はかけないことにした。
彼は食い入るようにステージを見つめていた。
見慣れたはずのその姿は少年のようだったがよく見れば決してそんなに若いというわけでもないようだった
彼もきっと眠れないのだろう。
明日僕を含めたタイシノムラの一行を乗せた飛行機は遠い異国の地にあるリヴァプールへ向けて飛び立つ。
そこにどんな「未来」が待ち受けているのかは、全く持って想像など及ばなかった。
ここから先はきっとドキドキの連続だよ。なあタイシノムラ。
僕らはそっちの方を選んだんだ。
ステージを見つめるタイシノムラよりも、そして僕よりもはるかに年齢を重ねたそのロックバンドの演奏は、閃光のように僕らの胸を貫いていた。
☆
そして夜が明けて、僕たちはリヴァプールへ向けて出発した。
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「それでもなお、未来を信じる人たちへ」
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「記録の存在しない街、トーキョー」に送り込まれた一人の男。仕事のなかった彼は、この街で「記録」をつけはじめる。そして彼によって記された「記…
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