パラレルワールド 42
☆
「何ということだ・・」
3人がステージに上がり、いざここからというところだった。
タイシノムラのエレクトリック・ギターから、そしてトキオのエレクトリック・べースから、音が出ない。
本人たちも全く原因がわからず、コンテストのスタッフが慌てて駆け寄り原因の究明に躍起になる。
ドラムのタケルはなんとか間を埋めようと必死のアドリブ・ソロを披露していたがそれも長くは続かなかった。
僕は持っていたハイネケンの瓶を割れんばかりに握り締めた。
「3度繰り返してまで手に入れようとした未来が、こんなトラブルにひねり潰されてしまうのか!!」
激しい憤りが僕を包んだ。
ふと隣を見れば白髪のブルースマンも悲しそうな眼をでステージを見つめていた。
☆
タイシノムラは少し残念そうな顔をしていたが、無理矢理に笑顔を作って審査員でもある観客を前にしてこう言った。
「申し訳ないな。でもこれも運命だ。運命の流れに身を任せて、故郷の歌を歌うことにするよ。とは言ってもこの歌にメロディーはない。ただ言葉だけがある歌なんだけど、僕の故郷の歌でtankaっていう表現方法なんだ。ぜひ聴いてくれ。」
そう言ってタイシノムラはステージの真ん中にaguraで座り込んだ。
まるで伝説の騎士とされるbushi(?)のように。
そして彼はメロディーのない歌を歌い始めた。
「ショーがはじまる」
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「それでもなお、未来を信じる人たちへ」
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「記録の存在しない街、トーキョー」に送り込まれた一人の男。仕事のなかった彼は、この街で「記録」をつけはじめる。そして彼によって記された「記…
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