AM3:00

3年前、まだ不安でいっぱいだった
あの日のことを思い出す。

あの時は、自分が本当にしたいことも分からないままで、ただ流されるようにしてこの場所に辿り着いた。
それから季節はあっという間に巡り、あの日から3回目の春が来ようとしている。

私は今日、3年間勤めた会社を退職する。

あれだけ嫌だった午前3時に鳴り響く目覚まし時計も、今日は10分も先に目が覚めてしまったので、
最後の役目を果たせなかったせいでなんだか寂しそうに見えた気がした。


この選択に後悔はない。
もちろん不安はあるけれど、それよりも前向きな気持ちの方が何倍も大きかった。

それは私の背中を押してくれる存在がいるからだ。



誰よりも尊敬するあの人は、一歩先を歩いているようで、いつも後ろからそっと見守ってくれるような穏やかな人だった。

初めて会った日に、その背中を見てかっこいいと思ったあの人は、無愛想に見えて、実は誰よりも涙脆くて仲間思いの人だった。

泣きそうなくらい大好きだったあの人は、
不器用だけれど困った時にはいつも助けてくれるような、温かくて優しい人だった。

生きる意味が分からなくなって俯いていたとき、後ろから声をかけて、下を向かないのと優しく微笑んでくれたあの人の表情と言葉を、私は今でも鮮明に覚えている。
振り返ると、いつもそこには優しい笑顔があった。

明日からはもう、振り返ってもその笑顔が無いのだと思うと、どうしたって目が滲んでしまう。
今でも、つい足元を見る癖は治っていないけれど、
そんな時にふと、あの優しい笑顔と、大丈夫という言葉を思い出す。
そしてまた、前を向いて歩こうと思えるのだ。




たくさんの人に支えられながら今日まで必死に生きてきた。完璧には程遠い、暗闇の中をもがきながら少しづつ進むような、写真にも残らない、そんなどこにでもあるような平凡な日々だった。
しかし振り返ると、その平凡な毎日が
他の何にも代えがたい、宝物のような3年間だったのだ。

大好きだったあの人の最後の笑顔を見た時
ここまで諦めずに進んできて良かったと、
心の底から思えた。


今日、何ひとつ後悔のないように
最後まで仕事を務めて来ようと思う。

あの日の猫背の背中の私に言ってあげたい。


大丈夫、すべて上手くいくよ、と。

君のいない 明日からの日々を私はきっと