青くて、

ちょっと好きだと思っている人と一緒に映画を見た。異性と映画館で映画を見るのは初めてだった。

今回は映画の話をしたいけど、レビューとして注目されるのは苦手だから、あくまでこの日の記録としてここに書き連ねたいと思う。

彼とは夜ご飯以外で会うのも初めてだった。いつも適当に日にちを合わせて、適当な夜ご飯を一緒に食べるだけだった。でも今日は目的がある。今日の目的は恵比寿のおっきいモンブランが乗ったパンケーキ。「食欲の秋、モンブランの秋」っていう意見の大合致でこの日は決まった。

彼と会うのは5回目。頼んだパンケーキは想像の何倍も美味しくて、想像よりちょっとだけ大きすぎた。お腹がいっぱいになってもまだ有り余るほど時間があった私たちはガーデンプレイスで2時間くらい話をすることにした。

夏が終わった風が心地よくて、満たされたお腹が幸せで「眠くなっちゃうね」なんて言いながら牛・豚・鶏この先一生どれか1つしか食べれないなら何がいいかについて戦った。

話が尽きても時間が余ってた私たちは映画を観ることにした。今流行りのイケメン俳優をゴリゴリに推した映画。

ストーリーは序盤に期待させた割にオチは平凡というか、途中から想像できた流れで期待に応えるほどでもなかった。すれ違いってあるよね〜くらいの感想に尽きてしまうようなものと言ってもいいかもしれない。

ただ「普通の」大学生活を送れていない私は話の中で非難されてる彼らのことさえ羨ましく思っていた。マスクも付けず、人が行き交うキャンパスで有り余るチラシをもらって、適当なサークルでチヤホヤされてBBQをして、酒に酔ってフラフラするそんな下らない大学生も私は羨ましかった。


そんな映画のワンシーンに刺さるセリフがあった。4人が宅飲みをしていたシーンで帰ろうとするリサとアサミの対話だ。

リサがアサミに向かって言う。

「先輩、無理してないですか」

アサミが返す。

「無理してないよ。お酒飲んでフラフラしてる私も、全部私。たぶん私、私の中に私が100個くらいあるんだと思う。でも全部私。」

アサミは飲みで酔いつぶれて寝たフリをするのが上手い。サークルに頻繁に参加していなくてもテンに可愛がられるような愛嬌がある。BBQの場面では適当に周りと付き合いながら、リサを守るような気配りができ、2人がいなくなったことに気付くような鋭さも持っている。彼女が本当に無理をしていないかどうかはわからない。でもそんなアサミの確かな自己肯定力を前にして、目を背けて逃げ出したリサの気持ちがよくわかる。

そのあとカエデと2人で歩いているシーンでリサが言う。

「私、固いんです。本当の私はこうとか、決めないと自分でいられない気がして。」

自分を何者かに当てはめて、その者が認められる場所でしか生きられない。裏を返せば、「私」が認められる場所にしか居ることが出来ない。私もリサと同じような人間だからここのシーンが痛いほどに理解出来た。

アサミのようにどんな自分でも自分だと言い張れる気持ちがあれば、自分の居場所について悩むことなんてない。そういう人間はどこに行っても居場所として与えてもらえるから。


ここまでの話、あなたにできなかったな。

映画の感想まで語り合えるような関係にはなれないんだろうな。楽しければ今はそれでいいけど。

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